第14話 余力
「はぁ!」
「ふっ!」
メスティアと男の連携は完成度が高かった。
更に、彼我の能力差。
これらが合わさり、俺は防戦一方となる。
いくら経験や技術の差があるとは言っても、それだけでカバーするのには限度がある。
全部技術と経験だけでどうにでもなる様なら、そもそもレベルなんざ上げる必要はない分けだから当たり前だ。
「貰った!」
男の剣が俺の腕を斬り裂く。
防御魔法をかけているので動かせない程のダメージを受けてはいないし、回復も問題なく出来るレベルだ。
とは言え、この調子だといずれ押し切られてしまうのは目に見えている。
やれやれ、しょうがない。
《《もう少し本気を》》出すとしようか。
「グレーターヒール!」
俺は自らに回復魔法をかける。
先程から定期的にかけていたヒールではなく、それよりも更に1段階上のグレーターヒールを。
「回復したとて!」
男が分身と同時に、俺を挟み込む形で切りかかってきた。
言うまでもない事だが、今のグレーターヒールは回復のために行ったわけではない。
より深く潜在能力を引き出すために使ったのだ。
「なっ!?」
「馬鹿な!?」
両サイドから振るわれた剣の刃。
片方は刃を左手で摘まみとめ。
もう片方は、その先端を剣の柄の底で受け止める。
―—俺はこのダンジョンでの狩りをするとき、潜在能力の力を常にセーブして来た。
全力を出してしまえば、レベル上げが単なる蹂躙――作業になってしまうからだ。
だから引き出す能力をセーブし、戦闘訓練を兼ねて狩りをしていた。
より強くなるために。
力をセーブするぐらいなら、より高位のダンジョンで全力で戦った方は良いのでは?
そうだな。
その方がレベル上げも捗るし、可能ならその方が良いに決まっている。
だが物事はそう簡単ではない。
高レベルダンジョンでソロをすれば、嫌でも目立つ頃になるだろう。
そうなれば、俺にちょっかいを掛けてくる奴も現れる。
前世ではそうだったし、現に今も――ここはそれ程レベルの高いダンジョンではないが――メスティアって女の一団に絡まれてる訳だからな。
そしてその場合、俺の命は危機にさらされる事になる。
俺が全力で挑むレベルのダンジョン。
そのダンジョンで狩りを成立させているパーティーとなれば、同等レベルの相手と考えて間違いない。
そんな相手となれば必然、戦いは命がけの物となる。
まあ、命がけの戦い自体は嫌いじゃないんだが……
殺されても仕方がない様な強敵なら兎も角、成長過程のまだまだ未熟な状態で、どこの誰とも分からない宇三無双に殺される。
それはちょっと腹が立つからな。
だから余計なリスクを排すため、敢えて余裕のあるダンジョンでのレベル上げを行っているのだ。
石橋を叩いて渡るって奴である。
前世の俺からは考えられない行動だが、まあ一度殺されてるんだからしょうがない。
そりゃ慎重になろうってもんよ。
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