第13話 援護攻撃
「貴様ぁ!」
三人目が続いて斬りかかって来る。
更に、唯一腕が立つと思しき人物がその背後に隠れ動く。
目の前のこいつを捨て石にして俺に一撃を加える算段なのだろう。
先行した二人を一瞬で無力化した事で、俺への侮りを捨てた様である。
早い判断は悪くない。
楽しめそうだ。
目の前の敵を切り裂く。
そしてその背後から飛び出して来た――ん?
残す前衛は一人。
にも拘わらず、その影は左右から飛び出して来た。
分身系のユニークスキル持ちか。
扱いの難しいスキルだが、逆にしっかり扱えるなら相当強力なスキルだ。
「お前に」
「これが躱せるか」
両サイドから刃が迫る。
明らかに先に制圧した3人とは次元の違う動きだ。
片方の刃を手にした剣で弾き、左からの一撃を体をずらして躱す。
「ちっ」
左耳の辺りに鋭い痛みが走る。
相手の動きが途中で加速し――片方が攻撃を弾かれた時点で強化スキルを使ったのだと思われる――躱し切れずに耳を斬り飛ばされてしまった。
完全に油断だな。
この手のダンジョンで、他人に絡んでくる様な質の低い相手と侮ってこの様では笑えない。
少し気を引き締めんと。
「今のを躱すか。大きな態度を取るだけはある」
男が分身と共に少し下がり、剣を構える。
ぱっと見ではどちらが本体かは見分けがつかない。
「貴方達は下がってなさい」
「は、はい」
メスティアが他の3人に下がる様に命じる。
まあ怪我を負ったというのもあるが、雑魚共じゃいても邪魔にしかならないと判断したんだろう。
「回復魔法だと?」
回復魔法はタイプがいくつかある。
ヒールブーストに使う自己治癒系ではなく、欠損などを回復させる別系統の魔法で切り飛ばされた耳を回復させると、剣を構えていた男が怪訝そうに眉をひそめた。
通常、ヒーラー系しか使えない魔法だからな。
俺を戦闘系だと思っていたのならその反応も頷ける。
「俺はヒーラーだからな」
「なに!?」
「なんですって!?」
素直に教えてやると、男とメスティアが表情を変えた。
通常、ヒーラーは近接戦闘を苦手とするのが常だ。
だから俺が普通に戦えている事に驚いたのだろう。
「ハッタリを」
「信じる信じないは好きにすればいい。どうせ俺が勝つんだからな」
「ほざけ!」
男が分身と共に突っ込んでくる。
左右から、練度の高い見事な連携で仕掛けて来るが俺はそれを軽くいなす。
さっきは急な加速に対応が遅れてしまったが、分かってしまえばどうと言う事はない。
「なぜあたらない!」
現時点でも、相手の方がパワーとスピードは上だ。
しかも形的には2対1。
それでも俺に当たらず、男が声を荒げる。
「俺を圧倒したけりゃ、最低もう2から30個はレベルを上げて来る事だな」
確かにパワーとスピード、そして手数は相手が圧倒的に上だ。
だが、奴と俺では踏み越えて来た場数と、それに積み重ねてきた練度が違う。
この程度の能力差で、俺を追いこめると思ったら間違いだ。
「くっ」
「焦り過ぎだぞ」
焦りからか男の動きが荒くなり、俺はその隙をついて片方の腹を蹴り飛ばす。
こっちが本体だ。
一見しただけでは分身と本体の見分けはつかない。
が、戦っていると見えて来る。
ほんの僅かな動きの差が。
本体より分身の方が、わずかに動きがぎこちないのだ。
「ぬ……」
俺は分身の剣を躱し、その首に向かって刃を振りぬく。
いや、振りぬこうとして背後に飛ぶ。
「その状態で援護を決めて来るのか」
何故なら、メスティアが舞いながら手にした鞭で攻撃してきたからだ。
分身の頭上を越え、俺の肩に向かって。
「踊るだけのかかしかとも思ったが、結構やるみたいだな」
鞭はリーチが長い。
更に、ダンサーにはそのリーチを伸ばすスキルも備わっている。
そのため、半径10メートル範囲への攻撃なら十分可能となっていた。
だが、俺はその可能性を考慮していなかった。
理由は簡単。
難易度がかなり高いためだ。
鞭ってのはコントロールが難しいからな。
下手に長いリーチで振るえば、味方への誤爆になる可能性が高い。
だから余程の技量が無い限り、ダンサーは戦闘に直接参加しないのがセオリーとなっている。
だが、メスティアは鞭を振るって来た。
それも、分身の頭上を越えてピンポイントに俺の肩へと。
これはかなりの腕が無ければできない芸当だ。
「どうやら、もうちょっと気を引き締めた方が良さそうだな」
躱したとはいえ、これも油断と言えば油断だ。
ほんと、我ながら油断ばっかりで嫌になるぜ。
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