第12話 ダンサー
「貴方は躾け甲斐がありそうねぇ」
メスティアの周囲を、ボディーガード宜しく男共が囲う。
「出来る奴がいるみたいだな」
4人の男のうち3人は、構えから雑魚だというのがハッキリと分かる。
基礎が全くできてない。
まあレベルの程は分からないが、戦士としての技量は期待できだろう。
ただ一人だけ、明らかに本格的な戦闘訓練を受けたであろうと思われる、隙の無い構えをする奴がいた。
こいつだけは気を付けた方が良さそうだ。
「さあ!私の為に戦いなさい!」
メスティアが舞う。
比喩表現ではなく、文字通り鞭を体に纏わりつかせる様に舞ったのだ。
「ダンサーか」
ダンサー。
舞を舞う事で周囲の味方を強化する、いわゆるバッファーと言うクラスだ。
俺から見た際のこのクラスの評価は……基本ゴミ。
まああくまでも俺の評価なんで、世間一般の物とは違うが。
パーティーで固まる分には有効なクラスではある。
ダンサーは。
強化の効果自体は優秀だからな。
ただ、その範囲が狭いのが欠点だ。
前衛が敵を受けて、後衛が攻撃をするタイプのオーソドックスなパーティーならその力を存分に発揮する事も出来るだろう。
だが俺は、単独で縦横無尽に暴れるタイプで。
あいつらも狭い範囲で固まって戦うような奴らではなかった。
ああ、アイツらってのは、俺を裏切って後ろから刺して来た奴らの事な。
そのため、周囲10メートルほどの範囲にしか効果のないダンサーのバフはほとんど意味がなう。
俺にとっては。
だからゴミな訳だ。
対ダンサー戦でのポイントは、如何にバフを受けている奴らを引きはがすかだ。
バフさえ剥がしてしまえば大幅に能力がダウンする訳だからな。
ダンサーを先に潰すのは?
それは選択肢としては下策だ。
ダンサーは強化されたメンバーが優先的に守る対象だからな。
その守りを抜くのは簡単ではない。
更に付け加えるなら、バフをばら撒いている際中のダンサーは耐久力が跳ね上がるという物もある。
なので、ダンサー入りのパーティーと戦うなら、バフの効果外に引っ張り出すのが正解となる。
ま、もちろん……俺はそんな真似はしないけどな。
「行くぞ!」
固まる5人に向かって俺は突っ込む。
正面突破だ。
「馬鹿ねぇ」
メスティアが笑う。
いつまでその余裕が続くか見せて貰うとするか。
「はぁ!」
「せいやぁ!」
戦士風の二人が、手にした剣を俺に振るう。
技量のないレベル100前後のポンコツでは、いくらバフを受けてもたかが知れている。
なので、ダンサーの強化を受けているとは思えないぐらいその動きには精彩がない。
「遅い!」
俺は手にした剣で奴らの防具の隙間を斬り裂いた。
武器はロッドではなく剣を使っている。
聖騎士時代に使っていて扱いになれているからだ。
「がぁぁ」
「ぐぅぅ」
切り裂いたのは手と足だ。
その気になれば首を斬り落とす事も出来たが、そこまではしない。
相手に殺意があったなら容赦なく殺すつもりだったが、今の所、敵意は感じても明確な殺意は感じていないからな。
こいつらがかつての仲間並みに殺気を隠すのが上手だってんならあれだが――刺されるまで殺気には気づかなかった。
流石にこいつら程度の手合いに、俺の感覚を欺けるだけの技量が備わっているとは思えないからな。
それはないだろうと思われる。
まあもちろん……危険だと判断したら問答無用で殺すが。
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