第11話 誘惑
―—ダンジョンゲート前。
「今回でラストにしとくか」
拠点を移して1月ほど。
レベルが100を越えたので、そろそろまた別の場所にと考えていると――
「ちょっといいかしら」
――面識のない女に声を掛けられる。
年のころは20代後半で、露出の多い煽情的な服を身に着けた女だ。
背後には男を4人程引き連れている。
「私はメスティアよ」
メスティアと名乗った女が妖艶に微笑み、その目が怪しく光る。
スキルだな。
おそらく魅惑系の。
どうやらこの女は俺を誘惑するつもりの様だ。
チャームはユニークスキルである。
自身に好意や欲情を盛った相手の感情をかき乱し、相手をコントロールする搦め手の。
……この女がこんな格好をしているのは、スキルを掛けやすくするためって所か。
俺には全く意味はないが。
「スキルは通じないぞ」
「!?」
この手のスキルはバレにくいが、分かる人間に分かる物だ。
メスティアが俺の指摘に顔をこわばらせる。
チャーム系は俺からしたらゴミスキルだ。
相手からの感情ありきで、興味を持たれなかった場合完全に空振りする。
また、魔力差がある程度ないとその効果も極めて薄い。
そのため、魔力が低い前衛かつ――単独行動している俺の事を前衛だと思ったんだろうな――レベルも自身より低くないとほとんど効果がないと言って良いスキルとなっている。
しかも結構簡単に解除されるし。
相手が本気で嫌がる事なんかをさせようとしたら、完璧に決まってても効果は消える程度だ。
唯一褒める点があるとすれば、超が着く程希少な精神系スキルって所ぐらいだな。
「うせろ」
いきなり精神干渉するスキルを使ってきた相手に礼儀など不要。
ぶん殴ってやろうかとも思ったが、周囲に人の目があるので止めておいた。
周囲の奴らはスキルに気づいていないだろうから、俺がいきなり女を殴ったようにしか見えないはず。
そうなると、治安維持隊に通報されかねない。
面倒事に関わってるほど俺も暇じゃないので、今回は見逃してやる。
怒りの形相で睨みつける女を無視して、俺はゲートを潜ってダンジョンへ。
そういや、なんであの女は俺に声を掛けたんだろうな?
単独で落としやすそうだと思われたのか?
まあどうでもいいか。
もう関わる事もないだろうし。
俺は今回を最後に。次のダンジョンへ移動するからな。
とか思ってたら――
「あらあら、偶然ねぇ」
―—ダンジョンの中でメスティアと言う女と出くわしてしまう。
偶然か?
メルゴの時はそうだったが、女の反応を見るにどうもそうじゃない様に思える。
何らかの方法で俺の位置を特定したって所か。
もしそうならこの女の狙いは……
「やる気か?なら相手になってやる。かかってこい」
当然、俺に対する危害だ。
そうでなけりゃ、人目の無いダンジョンで接触して来る理由などないからな。
そして俺は売られた喧嘩は喜んで買うタイプである。
「ふふふ、勘が良いのねぇ」
俺の言葉にメスティアが一瞬驚いたような顔になるが、直ぐにニヤケ面へと変わる。
そして腰につけていた鞭を手に取り、それを両手で強く引っ張る形で構えた。
背後の4人の男達も。
さて、どれ程の腕前か見せて貰うとしようか。
わざわざ追いかけて来てまで喧嘩を吹っ掛けてきたんだ。
がっかりさせてくれるなよ。
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