いやキャラと違いすぎるでしょ
【第7話:尾行と公園とノリノリダンス】
(ほんとに桐生くんってどんな人なんだろ……わからなさすぎるのよね)
ホームルームも終わり、どうしても気になったわたしは上田くんに聞いてみることにした。
「ねぇ、上田くん。桐生くんって、ほんとは優しいの……?」
ずっと近くにいる上田くんなら教えてくれるだろう――そう思っていたけれど、返ってきたのは予想外の言葉だった。
「じゃあ、あいつの帰り道、尾行でもしてみるか?」
「えっ!?」
「俺が説明するより、自分の目で確かめた方が早いやろ」
そう言うと、上田くんは足早に教室を出ていった桐生くんの後ろを追いかけ始めた。
こうして、二人で桐生くんの後ろをこっそり尾行することになってしまったのだ。
しっかりと距離を取って後ろをつけていたけれど、桐生くんがこちらに気づいている様子はない。
しばらく歩いていると、桐生くんが北川さんとばったり出会った。
物陰から、二人の会話にそっと聞き耳を立てる。
「なぁ、琉弥~」
「あ?」
「ジュース買ってや。喉乾いた」
「アホか、わしそんなに金持ってないわ」
「なに言ってんねん、バイトしてるくせに~」
「ほんまにめんどいわ……。おら、どれがいいんや?」
「イェーイ! ありがとう!」
文句を言いながらも、結局北川さんにジュースを買ってあげている桐生くん。
その様子を見ながら、隣で上田くんがぽつりと呟いた。
「やっぱり沙耶はかわいいな……」
「えっ!?」
驚きのあまり、大きめの声で聞き返してしまう。
「いや、俺さ……沙耶のこと好きなんよな」
「そうだったんだ……!」
「そこでさ、ちょっと頼みがあんねんけど……俺の恋に協力してくれへん?」
「もちろん! 任せて!」
(そんな秘密を聞けちゃうなんて……!)
思わぬ恋愛相談に胸を躍らせていたけれど――ふと前を見ると、桐生くんの姿が消えていた。
「あ……桐生くん、見失っちゃったね」
「そうだな。じゃあ、ちょっと公園にでも寄っていこや」
「うん、いいよ」
そうして近くの公園に入ると、子供たちの賑やかで楽しそうな声が聞こえてきた。
どうやら、地域のお兄さん(?)と遊んでいるみたいだ。
「ほんとに桐生くんも、あの人みたいにもっと関わりやすくなればいいのにね」
わたしがそう呟くと、上田くんが急にふっと笑い始めた。
「いや、よく見てみろや。……あれが琉弥やぞ」
「嘘でしょ!?」
耳を澄ましてみると――
『おい琉弥ー! なんか踊れやー!』
『アホか、高校生はそんな簡単にはしゃぎ回ったりするもんちゃうわ!』
確かに、聞き覚えのありすぎる声が聞こえてくる。
『俺は踊らへんけど、踊ってくれる人はおるわ』
『えー誰だよ! そんなやついるのかー?』
『おいお前ら、隠れてやんとさっさと出てこい』
「「えっ!?」」
『ばれてるに決まってるやろ。お前らに探偵はできひんな』
『そんなんどうでもいいねん! ほら、子供たちからの指令やぞ。さっさとやらんかい!』
不敵に笑う桐生くんに促され、上田くんが「しゃーないな!」とノリノリで子供たちの輪に入って踊り出した。子供たちと一緒にめちゃくちゃ楽しそうだ。
すると、桐生くんがニヤニヤしながらわたしの方を振り向いた。
「おい、一ノ瀬柚葉。なんでお前やらんねん」
「えっ……人に言うなら、まず桐生くんがやってよ!」
「……俺がやったら、やるんやな?」
「いいよ、やってあげる!」
言うわけないと思って返しけれど――桐生くんは「ほな見とけ」と言わんばかりに、本当に踊り始めた。
しかも、なぜかものすごい満面の笑顔で。
(な、なんで本当にやるのよー!? しかもすごい楽しそう!!)
「ほら、お前もちゃんとやれよ!」
「わ、わかったわよ! やってあげるわよ!」
楽しそうに踊る二人と子供たちに引っ張られるように、わたしも輪に入って手を振り回す。
(いや、これはこれでめちゃくちゃ楽しいんだけど……なんでこうなるのよー!!)
公園いっぱいに、私たちの笑い声が響き渡っていた。




