運命は毒舌イケメンと共に!
「はぁ……やっと1日が終わった……」
夜、自分の部屋でベッドに転がりながら、ひとりぽつりと呟いた。
「ほんとに東京との温度差が違いすぎるよ……」
東京はもっと静かで落ち着いていて、人との距離感も程よかった。
でも……こっちのクラスの方が、みんな気持ちが温かい気がする。
かと言って、あの距離の詰め方には大いに問題があるけれど。
「それにしても……上田くんと北川さんはまだわかるんだけど、桐生くんってどんな人なのかわからなすぎじゃない?」
黙っていればかっこいいと思いきや、急に毒舌で切り捨ててくる。
そうかと思えば学級委員としてまとめ上げ、放課後にはコンプラガチガチの漫才を披露してクラスを爆笑させる。
挙げ句の果てには、公園で子供たちと満面の笑顔で踊っているのだ。
「みんなに慕われてるんだな……って、もうひとりでいろいろやりすぎでしょ! 多重人格にでもなってるんじゃないの!?」
考えても考えても、桐生くんという人間が理解不能だ。
「……もう、考えても訳わかんないし! スマホでも見てもう今日は寝よ」
頭を振って思考を打ち消し、気分転換にスマホを開いた。
すると、タイムラインにたまたま『あなたに運命の人ができる前兆』というネット記事が流れてきた。
(……できる訳ないじゃん)
そう思いつつも、なぜか気になって指が勝手にページを開いてしまう。
そこには、こんな言葉が書かれていた。
『――気づけば、特定の誰かのことばかり考えてはいませんか?
もしそんな人がいるならば、その人はあなたにとって特別な存在になる予感かもしれません』
「……桐生くんのこと……?」
口に出した瞬間、心臓が跳ねた。
「い、いやいやいや! そんな訳ない!! だってあれだよ!? 今日の朝の出会い方、最悪だったじゃん! あの恐怖の桐生くんだよ!?」
一人でベッドの上でジタバタと暴れる。
「もう! これは見るのやめにしよう!」
パッと画面を閉じかけたけれど、なんだか胸がそわそわして落ち着かない。
「……っ、あ! そうだ、今日の占いでも見てみようかな! 占いって1日の始めに見るものだけど……気になっちゃうもんね」
自分に言い訳をしながら、星座占いサイトを開いてみる。
『本日のあなたの恋愛運は絶好調!』
「へぇ……今日いい人と巡り会える日だったんだ……?」
そこまでは良かった。だが、その下に書かれていた詳細な一言に目が釘付けになる。
『本日、運命的な出会いをした人と特別な関係になることでしょう』
「運命的な出会い……って、曲がり角で激突したまさしく『あの』出会いを……!?」
頭に浮かんだのは、今朝、パンを咥えて角を曲がった瞬間にぶつかった、あの桐生くんの顔だった。
「って、そんなわけないんだってばーーっ!!」
思わず枕に顔を押し付けて叫ぶ。
「もう! なんでどれを見ても桐生くんが運命の人になるのよーーーー!?」
真っ赤になった顔を隠すように布団を頭からかぶり、わたしの眠れない夜は更けていくのだった。




