喧嘩するほど仲がいい?
「1時間目は化学の実験をするから、みんな特別教室に移動するように」
先生の声が教室に響く。
(移動……? 移動ってどう行けばいいの!?)
転校初日だから、学校の構造なんてサッパリ分からない。
聞きに行こうにも、こんな時に限って上田くんも北川さんも二人で楽しそうに喋っている。
(しょうがない……桐生くんに聞くしかないか……!)
おそるおそる、隣の席の男の子に声をかける。
「あ、あの……桐生くん」
「あ?」
「……っ!?」
(えっ、『あ?』って……! やっぱりなんか怒ってる……!?)
「いや、その……」
声が詰まってビビっていると、わたしの様子に気づいた上田くんが間に入ってくれた。
「まぁまぁ、琉弥。そう威嚇すんなって」
「威嚇なんかしてないわ、俺は猫か。話しかけられたから『あ?』って返事しただけやろが」
「それがキレてるように見えてるって言ってんねん。……で、柚葉どしたん?」
(……いきなり下の名前で呼ぶんだ!?)
やっぱり関西の人ってすごい。距離感の縮め方が怒涛すぎる。
それに比べて、桐生くんはなんて関わりづらいんだろう……。
「その……移動教室の場所が分からなくて」
「あー、まぁそりゃ初日やし分からんよな。……琉弥、連れて行ったれ」
「なんで俺やねん。お前が行けよ」
「俺はいろいろ忙しいねん。だから口答えせずお前が行け」
「なんでやねん、めんどいわ!」
(……ひえっ、この人たち喧嘩してる……!?)
さっきから飛び交う言葉の圧が強すぎて、わたしはオロオロと二人を見比べる。
……と、その時。
「なにぼけっとしてんねん。はよ行くぞ、一ノ瀬柚葉」
「う、うん……! ありがとう!」
(……いや、フルネームで呼ぶんだ!?)
悪態をつきながらも、結局先を歩いて案内してくれる桐生くんの背中を追いかける。
(上田くんは速攻で『柚葉』だし、桐生くんは『一ノ瀬柚葉』だし……やっぱりまだ、この人たちのテンションについていくのは難しいな……)




