いい話をしよう
ビジネススーツを身にまとい、屋敷の玄関前で佐藤と顔を合わせていた。
「こんにちは。今日もよろしくお願いします。」
決められたお辞儀の角度で挨拶する
「宮野様いらっしゃい。今すぐご案内いたします。」
三回目の屋敷
もう慣れた足取りで佐藤の背中について行く。
広い屋敷の何時も通される部屋の位置も覚えた。
だが、佐藤はいつもと違う2階に向かう。
コレは
「何時も部屋じゃないんですか?」
佐藤の足は止まらない。
階段を確実にゆっくり登っていく
「はい。今回は仕事じゃなく。プライベートの話をするので。」
仕事じゃないねぇ
「でしたら、スーツじゃなくっても良かったですかね?」
俺はそう聞くと
佐藤は笑みを浮かべた
「宮野様の私服はあまり想像できませんね」
「私も、佐藤さんの私服姿は想像できませよ」
冗談で返す。
俺は佐藤に案内されながらも、周囲の装飾品や部屋の位置を頭に叩き込んでいく。
屋敷の構造は、できるだけ覚えておきたい。
やがて、佐藤の足が止まった。
目の前にあるのは、いつもの客室とは違う扉。
ドアの周囲には、これまで見てきたものよりも明らかに豪華な装飾が施されている。
「ここは?」
俺が尋ねると、佐藤は丁寧にドアノブを回しながら答えた。
「ここは、プライベート空間です。今までご案内していた部屋は客室でしたから」
扉がゆっくりと開ききる。
中へ入った瞬間、これまで通された客室とは明らかに違うことが分かった。
プライベート空間というだけあって、テレビにPC、ゆったりとしたソファ。
そして何より、部屋を彩る装飾品が豪華だ。
――帰りに隙があれば、盗んで帰りたいぐらいだな。
そんなことを考えながら室内を見回す。
正面にあるソファには、海馬がどっしりと腰を下ろし、くつろいでいた。
俺に気づくと、海馬はソファから立ち上がり、こちらへ近づいてくる。
「宮野さん、いらっしゃい」
「こんにちは。お世話になります。とても広いお部屋ですね」
俺は室内を一通り見回してから答える。
「そうでしょう。私のお気に入りの部屋なんですよ」
海馬はそのまま俺をソファへ案内する。
「前に通してもらった部屋も素敵でしたが……ここはさらに洗練されていますね」
気分を良くしたのか、海馬は笑顔を浮かべる。
「そうでしょ」
俺は案内されたソファに腰を下ろした。
すると、海馬の表情がみるみる真剣なものへと変わっていく。
「宮野さんに、これと言って話があるんですが」
俺は目を細めた。
――腹の探り合いは終わりってことか。
「なんでしょう。いい話であればいいのですが」
「とてもいい話ですよ」
海馬がそう言い終えた、その瞬間だった。
合図したかのように、背後のドアが閉まる。
振り返る。
佐藤と、もう一人の使用人が立っていた。
二人とも、まるで俺を逃がすつもりなどないと言わんばかりに、ドアの前を塞いでいる。
……なるほど。
これが「とてもいい話」ってわけか。




