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宝を盗みに来た——この町では住人が帰宅後に消える  作者: アグ


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21/29

危険な入り口

追加料金を払って、家の清掃とカメラの捜索を業者に頼んだ。


壁の裏、コンセントの隙間、換気口――

業者たちは半日以上かけて家中を調べ回った。


そして、最後にテーブルへ並べられたのは。


五つ。


親指ほどの小型カメラだった。


「……こんなに、あったのか。」


思わず背筋が冷える。


知らない間に、ずっと見られていた。


どこで、何をしていても。


業者の男は手袋を外しながら口を開く。


「かなり巧妙でした。普通なら気づきませんよ。」


俺は並べられたカメラを見つめる。


黒いレンズが、まだこちらを覗いている気がした。


少なくとも向こうには、

“業者が発見して撤去した”

そう見えているはずだ。


それが警告になるのか。


それとも――

余計に刺激するのか。


そこまでは分からない。


「このカメラ、どうします?」


聞かれて、俺は少し迷う。


触りたくもなかった。


「……置いていってください。気持ち悪いんで、警察に持っていくか……捨てるかします。」


業者の二人は小さく頭を下げ、そのまま家を出ていった。


玄関のドアが閉まる。


その瞬間。


家の中が、妙に静かに感じた。


まるで今まで、

誰かの視線の音がしていたみたいに。


「クソッ!」


俺は小型カメラを壁へ叩きつけた。


乾いた音。

砕けた部品が床へ散らばる。


それを見た瞬間――

妙な高揚感が胸を走った。


壊した。


相手の“目”を。


ずっとこちらを覗いていた視線を、

自分の手で潰した。


呼吸が熱い。


鼓動が速い。


まるで、盗みに入る直前みたいだった。


見つかったら終わり。

捕まれば終わり。


なのに、足を踏み入れる瞬間だけ、

身体の奥が妙に冴える。


あの感覚。


俺は砕けたカメラを見下ろしたまま、

自分の呼吸音を聞いていた。


だが。


次の瞬間、別の考えが頭をよぎる。


もし、まだ残っていたら?


見逃しているカメラがあるかもしれない。


その瞬間、高揚感が一気に冷えていく。


「……五台。」


各部屋に一台。


リビングに二台。


数は合っている。


けど――


俺はゆっくりキッチンを見る。


見つからなかった。


だが、あると思っていた。


あそこに立つたび、

背中がざわついていたからだ。


見られている時の感覚を、

俺は知っている。


盗みに入る側だったからこそ。


俺はゆっくり顔を上げた。


――換気扇。


そこだけ、掃除していない。


そう気づいた瞬間、

胸の奥が妙に熱くなった。


見つけられる。


そんな感覚が走る。


危ない場所へ踏み込む直前の、

あの嫌な高揚感。


俺は椅子を引き寄せると、そのまま足を乗せた。


軋む音。


視線はずっと換気扇へ向いている。


フードの横。


その辺りが妙に気になった。


中は確か、空洞になっていたはずだ。


俺は網を外す。


金属音が小さく響くたび、

鼓動が速くなる。


まるで、

誰かの隠し場所を暴いているみたいだった。


いや。


実際、暴いているのか。


俺は奥へ手を突っ込む。


暗い。


油の感触が指につく。


それでも探る。


すると――


指先が、何かに触れた。


不自然な出っ張り。


作られた感触。


その瞬間。


背筋がゾクッと震えた。


見つけた。


頭の奥が痺れる。


見つけてしまった。


「……コレか。」


俺は口元を歪めながら、

ゆっくりそれを掴んだ。


これで六個。


俺は小型カメラを指先で弄びながら、

自然と口元が歪むのを感じていた。


当たりを引いた時の感覚に近い。


隠されている物を見つける瞬間。


人の秘密へ手を突っ込む瞬間。


あの感覚が、

じわじわ頭を痺れさせる。


俺は作動中だったカメラを止め、

リビングのテーブルへ並べていく。


六つの黒いレンズ。


さっきまで、

ずっと俺を見ていた目だ。


「……さて。」


ここからが本番だった。


カメラを外したことで、

向こうがどう動くか。


怒るのか。


黙るのか。


それとも――

直接来るのか。


考えるだけで、

妙に神経が冴えていく。


観察するしかない。


それに。


隣の家へ忍び込む必要もあるだろう。


この町は情報が漏れるのが早い。


誰が繋がっているか分からない。


下手に動けば、

一気に囲まれる。


だから慎重に進めないといけない。


……けど。


気づけば俺は、

宝探しの事よりも。


この町に漂う、

危険な匂いの方へ惹かれ始めていた。

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