17 黒石の床
裁判まで二十四日。
黒石の床が私達の顔を反射する。硬い床底が靴音を響かせた。
ここは王都から東、海を見据えるシーロリオ領、その外交使節団用の応接棟だ。
流線状の調度品、太刀と呼ばれる円弧の剣、四つの顔が積み上がった木彫りの置物。異国情緒を感じさせるこの場所はリムナント王国の外交を担う重要な場所だ。
本来なら私などが足を踏み入れて良い場所ではない。それなのにここに来たのは追憶石を探すためだ。
「……ここで、間違いないです」
ロスティが指したのは応接室の一つだ。その手に持つ白の追憶石から光が伸びている。
応接室に入り、光を辿る。
「今度は、蒼か」
カイルの声が響く。部屋の一角、書類棚の影に冷たい蒼色の輝きがあった。
「二つ目、ね」
「ここは外交用の応接室だぜ? 嫌な予感しかしねぇな」
軽い笑い声を無視して、私はロスティを連れて蒼の追憶石の前に立つ。
「……これを持てばまた記憶が」
そのためにここに来た。なのに、中々、手を伸びない。
脳裏に紅の追憶石がチラつく。
シュバルシア領で手に入れた追憶石には確かにロスティ様の記憶が刻まれていた。
否定しようも無い罪の証拠として。
不利な証拠だ。ロスティ様が罪人であると補強したに過ぎない。
しかし、シュバルシア領で手に入れた物は紅の追憶石だけでは無かった。記憶を再生して少し経った後、白の追憶石がまた光を指したのだ。
まるで、次はこの記憶を回収しろとロスティ様にささやかれている様だった。
シュバルシア領からホウキを飛ばして五日。
私達はまたこうして新しい追憶石の前に立っている。
息を吸った後、私は覚悟を込めて手を伸ばした。
「フィリア様、また、ロスティ・メモワールの記憶を再生するのですか?」
「当たり前よ。そのために来たんだから」
「……分かりました」
一拍置いて、背後に立つロスティの手が私の首に触れた。
私は一度だけ目を閉じ、蒼の追憶石へ手を伸ばした。
そして、追憶石が記憶を再生する。
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