ダイヤよりも硬い意地 〜 暗躍のうねり lxxj
現し身の解除に成功し、ソフィアは自身の本体へと戻っていった。
その後のジンの魔力の特大の魔力増加により、対話型会話モードに移行したカプセル、エオは、ジンを内部に抱えたまま、眩しさを振りまき大気圏外まで急上昇する。
そのまま潜水艦上甲板に取り残され、理由もわからず右往左往している司令官たちの様子は、ジンにとってなかなか痛快だったようで、頰が思いっきり緩むジンだった。
何もかもが激変する様相に圧倒されるジンだが、そんな状況の尻尾くらいは掴めるまでに心の安寧が得られたのか、ようやく口を開けるようになったジンは苦情を申し立てる。
「というか、びっくりしたよ。上昇するならするって、言ってくれないと、首の骨を折ってしまいそうな加速だったぞ?」
〔あ、そうだったわね。今の人類って脆いからね。ふふっ……あ、そろそろよね。地球の全体が見渡せるわ。ってアレ? ここ地球よね? すっかり地形が違ってる気がするのだけれど……うーん。向かう先がどこだかわからない。困ったわね。迷子だわ〕
「ん? 太古の大昔は知らないけれど、この2千年くらいはそれほど大きくは変わっていないはずだぞ?」
〔あー、うん。わたしの知る地球はもっと昔だからね。まぁいいわ。さっきの海で龍脈を感じたから、そこから行きましょう。どのみち潜る必要はありそうだしね〕
「え? もっと昔? 龍脈? 潜る? な、何を言ってるの? それにさっきまでが誰かもまだ聞けてない……」
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話は数分遡る。ジン奪還作戦を開始したマコトたちは、マコトがオーラで作り出す、レイラに合わせて少し大きめの、流線型のシールドのような器に乗り込み、ジンのいるところを目指そうとするのだが、やはり向かう先がわからないため、まるでエオの思考と似た感じの、とりあえず上空から見渡す感覚で数千ft上昇していた。
しかし、推測する方向に潜水艦とその上甲板にヘリがいるのを見つけるが、なんとなくジンがいるようには思えない直感がマコトの心を惑わすのだった。ジンとは念話のオーラで結んでいるはずで、例のカプセルの影響か、念話は繋がらないが、またオーラの指す方向は飛翔前にその方向で合っていたのを確認していたが、今はとても曖昧な状態だったのだ。
すると、そこにオーラのメッセージ、つまり数刻前に会話したU国のベルから差し込みが入る。
〝マコ? 聞こえるかい?〟
〝あれ? ベル、どうしたの?〟
〝ああ、マコは少し前のヘリの向かった先? お母さんかな? でもそのお母さんが突如消えてしまったからボクも困惑しているのだけれど、もう一人、もしかしたらお父さんかな? その人を探しているんだよね? それなら今マコに見えてる潜水艦で間違いないよ〟
〝本当? ありがとうベル〟
〝ただね、そのお父さんも今はそこにはいないと思うんだ。忽然と消えるようにいなくなったんだ。だけど……その一瞬の動きをボクは見ていたんだ。どうにも信じられないけれど、上に上がったように思うんだ。その潜水艦の遥か上空じゃないかな?〟
〝え? そうなんだ。ありがとう。マコの感覚でもいるはずなのにいないって思ってたのは、まさかの上だったのか。探してみるね。今は急ぐから、じゃあ、また後でね。See you!〟
〝ん。じゃあ頑張って!〟
どうにも探しきれないマコトの様子に、たまたま視ていたベルが知れる範囲のアドバイスを与えてくれたのだった。
念話ではなく、唇を動かし誰かと会話する素振りのマコトを見て不審に思ったイルが尋ねる。
『あれ? マコちゃん、誰かと喋ってたの?』
『あー、うん。ベルとね。それはまた後でね。それより今はパパ。ベルが言うにはどうも上らしいんだ』
『え? あ、そうなの。うん。そっち優先して!』
『うん。そうだ。上。確かに上、それもほぼ真上からパパの存在が感じられる。でも視えないね』
『じゃあ、ちょっと上がるよ? イルもレイラさんも心構えはいい?』
『いきなり不思議な飛行体験だが、オレなら大丈夫だ。好きにやってくれ、マコ』
『イルも大丈夫』
『わかった。じゃあ、行くよ? って、あれ、近付いて……お、落ちてくる』
しゅっ!
『パパ?』
『マコ? いるのか?』
『通じた! 今落ちていったやつだ。追うよ!』
そういう前から、もう真下方向に向いていて、その瞬間、超高速ダイブに入っていた。
『わわ。びっくりした。わかったマコちゃん』
『オレもだ。ひりつく時間の流れだ。特に説明なく行っていいからな、マコ?』
『うん。ありがとう。舌噛まないようにね』
そしてその次の瞬間には海面に突入するジンとエオ。凄まじい水飛沫が上がる。いわゆる海面激突だ。イルやレイラはもちろんだが、マコトもそんなスピードで海面に、などまったく想像もできない状況にクラクラしていた。
『パパ? 大丈夫?』
『マコ……☆△□◇▽……』
『え? わかんない。離れたらきっとダメなんだね。追従するよ?』
言いながら、マコトは海面に突っ込むために、流線型の形を鋭く、しかし大きく空気をたっぷりと孕み、より強固に変形させ、水飛沫のど真ん中に突っ込んでいく。
『突っ込むよ……3、2、1……』
どぱぁぁぁぁぁん。
一面は海の中の光景で、既にジンたちの姿は視えない。が、視えないのだが、泡が尾を引いているのをマコトは捉える。
『視えないけど、この泡を追っかける。どうやら海溝の奥に進むみたい。大丈夫かな。水圧も段々凄くなるしこのボディ、大きめにしたけど空気も心配かも。とにかく付いていくね』
海面に突入するスピードはジンたちが遥かに速かったし、時間的にも先にいたため、姿を捉えられないくらいに離されていた。しかし、空力をかじったマコトの作るフォルムは古代文明のエオと違い、空力ならぬ水力特性は優れていたようだ。マコトたちは次第に近付き、その姿を捉える。
『視えた。アレだ。一気に近付くよ!』
『『オー!』』
しかし、どこまで進むかもわからないこの進撃は、予想されるだけでも水圧に対する強度と空気残量、そして、これから光の届かない真っ暗闇の世界など、不安だらけの状況に自然と身体が震えるマコトだった。それはイルもレイラも同様だが、今の作戦であるジンの奪還を成し遂げるためには、多少の危険や恐怖は付いて回ることを覚悟するレイラがマコトを鼓舞する。
『マコ? 大丈夫だ。もうすぐそこだ。捕まえて引きずり上げればいいだけだ』
『ありがとう。レイラさん。だよね。この不安はどんどん深まるばかりだから短期決戦のつもりでアタックしてみるよ』
『そうだ。その息だ。奪還。奪って還るぞ!』
レイラの言葉に、深海の闇に意識が呑まれ、目的を見失いかけていたマコトは初心に立ち返ることができたようだ。
すると、不意にジンからの念話が差し込まれる。
『マコト? 聞こえるか?』
『あ、パパ。今行くからね』
ジンの方から気付いてくれたことに嬉しさと安心感が戻ってきたようで、今向かうことを告げるが、ジンからは却下の返事だった。
『ダメだ。早く戻れ! ここは危険だ。パパなら大丈夫だから』
『嫌だ。こればっかりは聞けない。一緒に帰ろ? ね?』
しかし、出てくる前のソフィアの状況を思い浮かべれば、このまま引き返す選択はあり得ないマコトだった。さらに、深海の奥に佇む漆黒の闇のせいかもしれないが、吸い込まれたら戻ってはこれない、このまま別れてしまえば、永遠に会えなくなってしまうような妙に危うい予感がマコトには感じられたのだ。そうであるなら余計のこと、絶対にここで引いてはいけないのだとマコトはダイヤよりも硬い意地を張る。
『そうしたいところだが、そうもいかなくなったようなんだ。理由を説明している時間もなさそうだ』
『え? どうして? 嫌だよぉ、パパ』




