↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Jet Black Witches  作者: AZO
4−3.萠動編 − 暗躍のうねり
195/220

カイの心肺蘇生 〜 暗躍のうねり lxv

 マコトとイルは、なんとかキメラからの吐き戻しに成功する。懸念していたキメラの素性がカメレオンではなく、おそらくカエルであるとの推測が立ったわけで、蘇生が成功することへ一縷の望みを託し、生死不明のカイとともに、今到着する。


 マコトは、ソフィアが活動拠点としている繭状の構造物の中に若干の衝撃とともにドスンと置くようにカイを接地させると、網(ネット)の物質化を解除し、自分たちも繭の中に入っていく。急いでいることもあってか、エアボードをやや勢いよく接地させ、マコトは蹴散らすように降りて周囲を見回す。


  〈あれ? ママたちいない〉


 気掛かりだった、レイラと意識はここにないはずのソフィアを探そうと見回すが、ぱっと見に見つからない。マコトは繭の中、先頭方向の奥の奥に目を向ける。


 そんな二人の会話、その特徴的な声の高さに無意識に反応したのか、誰もいなかったはずの場所からニョキッと腕が出てきて、次いで寝返りを打つレイラの姿が目に飛び込んでくる。


 レイラはようやく深い眠りから醒めたようだ。それまでステルスシートに覆われていたのか、捲(めく)れていない下半身部分はまだ視えないままだった。


  〈ん? ふぅぅ……んー……なんだここは? ……あ、そうか、そうだった……ソフィアたちに助けられたんだったな〉


 レイラの顔色はもちろん、声色も、そしてゆっくり身体を起こした後の、ちょっとした仕草に垣間見るレイラらしいキビキビ感からも、すっかり回復していることがわかる。


 そんな所作を見て、マコトもイルも頬を緩める。まだ裸のままのレイラで、その引き締まった肢体の美しさに惚れ惚れしながら、二人は見惚れてもいた。


 そういえば、と、ソフィアやマコトがレイラを救うときに全裸にして、その後のレイラは、そのまま眠りについてしまっていたことをマコトは思い出す。


  〈あ! 良かった。レイラさん気が付いた。ママは……いた。やっぱり意識なしか〉


 レイラの回復した姿を瞳に映したマコトは安堵の声を漏らすと、すぐにその傍らに、シートが捲れて露わになった顔、横たわったまま微動だにしないソフィアを見つめる。意識なしとは、少し前に念話が途切れ、今、ジンが当たってくれているはずだが、まだ進展がないことを意味していた。


 そんな視線と交錯するように、レイラはマコトとイルの向こう側に寝かされるカイに気付く。


  〈え? 向こうにいるのはもしかして……カイ?〉


  〈あ、そうそう、レイラさん。急がなきゃなんだよ。細かく説明している暇がないから手短にね。巨大なカエル? に呑み込まれて吐き出させて連れてきた〉


 カイの存在に気付いたレイラに説明の必要があったが、マコトは時短のために、思いっきり省略した説明を返す。


 レイラはややキョトンとするが、時を急(せ)く状況だと理解して、話しながらも動き始める。


  〈は? 省略しすぎだろ。あのキメラのしわざか? だが時間がないってことか。時間は何分経った?〉


  〈あ、うん。呑み込まれて1〜2分で吐き出させた。そこから大体30秒くらいで連れてきたばかりかな? 息してないと思う。あと胃液が凄い〉


 レイラは最も緊要な時間を問い、マコトは要点だけ連ねる。


  〈わかった、上出来だ。だが時間はたぶんギリギリ。急ぐぞ! 胃液か、胃酸だから厄介だな。水があれば……あるはずないか。拭う布なんてのもないよな?〉


 できるだけ早く息を吹き返させることが最重要事項だが、胃酸にまみれていては為すことも為せない。そう思ったレイラはない水の代わりに拭うものを所望する。


  〈ん? 布ってこと? あー、拭うためか。水がないからそうだよね? それならイルが何とかできるんじゃない? 水を吸うタイプのやつ〉

  〈あー、うん、できるよ? でもサラッとした水なら綿のようなナプキンタイプがいいけど、粘性高そうだよね? 素直に布巾かタオルのようなこんなのはどう?〉


 イルは話しながら、オムツに使えるようなナプキンタイプと布巾タイプ、タオルタイプの3種類をその場でオーラから生成してレイラに見せる。


  〈え? あ、あるんかい? ちょっと見せてみろ。ってどこから出した?〉


 あるはずはないものと、俯きカイの様子を見ていたレイラ。突然差し出されたソレを瞳に映すと、急激に目を見開き、あまりの驚きに身体を後ろに反らしてしまう。慌てて手に取り確かめながら、出どころを問いただす。イルは何でもないように軽い口調で返す。


  〈え? あぁ……オーラから作り出すからいくらでも出せるよ?〉

  〈オーラ? またオーラか。わけわからんが、まぁいい。詳しくは後で教えてくれ。今は大至急、大きめのナプキンタイプを5つくらい、作れるのならまず出してみてくれ〉


 レイラは知らず知らずのうちにオーラを纏い効果を発揮しているのだが、それは気合と根性の結果であり、と考え、その存在すらまったく信じてもいなかった。


 しかしソフィアたちと接する中では、切っても切り離せぬオーラという存在を信じざるを得ないものと認識度合いは向上していた。だが、変わらず目に視えないものへの理解は一歩後退(あとずさ)るようだ。


 そのうえで、今行うべき対処に必要なものを見繕いオーダーするレイラだった。


  〈大きめがいいのね? ならバスタオルよりも大きめのこんなので良い?〉


 オーダーを受けたイルは、その先に役立つと思える、より良いものを察して、すぐにバスタオルより大きめのナプキンシートを創り出して示す。


 最初に作るのはけっこう困難なものだが、一度作ったことのあるオーラの生成物はその身の内に持っている。


 それをいつでも取り出せるし、複製や拡張も簡単だ。マコトが如意棒やダイナビーもどきをポンポン出せるのもこの技で、マコトが編み出したものだ。


 自身の常識から離れて起こる現実の姿、ありえないほどのスピードで創出されるものを見て、いつの間にそれをおかしいと思う感覚はすっかり麻痺してしまったのか、マコトやイルのスピード感をすんなり受け止めるレイラだった。


  〈マジか。OK。これなら1枚でいい。ああ、後から交換用にもう1枚出してもらうか。あとタオルタイプをとりあえず3つ頼むよ〉

  〈はい。さっきより少し大きめで厚めがいいよね? 大きめバスタオル。どうぞ〉


 そして今また、驚きとともにレイラの常識は上書きされる。驚きが重なりすぎて、幼い頃に村の誰かが入手してきたらしい、外来アニメとして観せてもらったドラえもんを思い出す。


  〈お、驚きだな。ほんとになんでも出せそうだな。さすがドラえもんの国……というか、見た目からもお前、日本人じゃないから、日本は関係ないのか。あーっと、今さらで悪いが、お前、名前はなんという? これが初絡みだよな?〉


 そして、今さらだが、自身に驚きをくれる相手、イルの名前を知らなかったことに気付いて、レイラは改めて名前を問う。


 また、そんな会話とは別に、拡げた大きめのナプキンシートにカイを寝かせるために手振りの指示でタオルをかけて、二人に両足を持たせて、自身は上半身を抱えて移動させ、タオルでの拭き取り作業を並行して進めるのだった。


  〈あ、そうでしたね。イルといいます。生まれはS国で、S国E国N国のクォーターです。以後お見知りおきを、レイラさん〉

  〈わかった。イルだな。よろしくな。っというか、お前ら二人とも可愛いな! 特にその髪色、赤っぽい金髪は見事だが、なるほどクォーターなんだな?〉


 改めて交誼を結ぶレイラは、相手の顔もマジマジと見つめ、ようやくその愛らしさを認識するようだ。髪色にも着目してくれたことから、マコトがしゃしゃり出る。


  〈そうでしょそうでしょ! イルは可愛いんだよ? それにその髪、「ストロベリーブロンド」といって、なかなか珍しい髪色なんだからね! フンフン〉

  〈そ、そんなことはないよ。マコちゃんのほうが……ずっと可愛いし……〉


 イルを大好きなマコトは、イルが誉められることが何より嬉しいようで、まるで自分のことのように誇らしげに返す。


 イルは当然嬉しいのだが、しどろもどろに照れ隠しの言葉を返す。


  〈そっか、マコもイルもお互いが可愛くて仕方ないってことだな。うん、わかるわかる〉


 笑顔でそう言いながら、概ねカイの全身の拭き取りは終わったようだ。ようやく触れられるようになったところで、レイラはカイの心肺蘇生に取り掛かる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。