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Jet Black Witches  作者: AZO
4−3.萠動編 − 暗躍のうねり
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丸い刃 〜 暗躍のうねり lviij

 セリスから、日和ってると言われ、相手が「神」は承知の上の作戦、そもそもの目的は神の王国再建で、それには神の力でもない限り不可能、すなわち本物の神だからこそ必要なのだと説かれるアザ。


〝『あ、いや、そうだな。神への対処は普通にやっては敵わないから、弱らせてからご同行願うってわけだったな? だが、妖精ってのはどうなる? ソフィアが本物の女神だから、妖精が付いて回るのか?』チッ〟


 アザは目の当たりにした超常現象への驚きのほうが鮮烈だったため無理のないことかもしれないが、脳裏に刻み込まれた「妖精」という存在がどうしても切り離せなかったようだ。


〝(『おい。アザ。お前、頭、お花畑か? この話の流れなら、その妖精とやらも別の魔女ってことなんじゃないか?』チッ)〟

〝『え? 妖精じゃなくて実は魔女? まさか……考えたくないが……はぁはぁ……アレは魔女だったというのか? つまりは人……はぁはぁ……あの厄災のような力は人に為せる技なのか? というか、ソレが為せるとしたら、女神と妖精と魔女……そこに一体どんな違いが?』チッ〟


 確かに、魔女の仕業とするには、妖精と目するものから受けたものは桁違いの事象だったことから、アザの中では今でも消化できない状況のようだ。しかしそんな詳細を目にしていないセリスは、ことのほか冷静に切り分ける。アザにとっては、まさに厄災レベルの衝撃として記憶に強く刻まれているようだ。


〝(『ソフィアの事例から推し量る力の大きさは半端じゃないからな。その力の揮い方? 用法用量によっては厄災にもなるんじゃない?』チッ)〟

〝『そ、そうなのか? だが、あー、なるほど……例えばカッターナイフは子どもが工作にも使う紙を切る道具だが、使い方によっては人の命だって簡単に奪えるもんだしな』チッ〟

〝(『そうそう。それとおんなじじゃん?』チッ)〟

〝『いや、だが、あれは本当に途轍もない力だったのは事実だ。そんな力を奮ってきたなら、やっぱり太刀打ちできないだろ?』チッ〟


 思考は数歩進んでいったが、やはり巨大すぎる力の壁にアザはぶつかり、妖精という存在の呪縛に囚われるようだ。


〝(『あー、まだそこ抜け出せないかぁ……まぁ、それが人間じゃないなら妖精の可能性もあるけれど、でもソレ、人間の言葉を喋ったんでしょ?』チッ)〟

〝『え? あー、そうだが、それがどうした?』チッ〟


〝(『あー、もう! そんな人間を超越するような存在がなんで流暢に人の言葉を話すのよ! 妖精の世界に人語(ひとご)の学問でもあるって言うの? 言語だって国の数だけ沢山あるし、大体なんでそんな超越する存在が人間ごときに合わせるのさ?』チッ)〟

〝『あ! 確かに……だが、あれが人間だったとして、途轍もない力なのは変わらないだろ?』チッ〟


 アザはようやく、力を為す存在が人である整理は着いたようだが、それでも力の大きさが立ちはだかるようだ。


〝(『アザ? あんたってここまでガチガチの思考だったっけ? 相手が人間なら、いくらでもやりようがあるでしょ、ってことよ?』チッ)〟

〝『え? どういうことだ?』チッ〟


〝(『ったく……本当に無慈悲な神や妖精だったなら、何も言わずに殺せばいいじゃない?』チッ)〟

〝『そりゃ、そうだが……』チッ〟


〝(『じゃあなぜ今それをやらないないで交渉を持ちかけるのか。もしも「面倒だから」というありがちな理由なら、わざわざ交渉にくるほうがもっと面倒じゃない? またはその力には限界があって、それほど多用できないのかもしれない。それとわざわざ出向いて力を放った、ということは、そこにいないと力を行使できないのかもしれない。つまり捕まらないように絶えず動くか、かなり遠方にいたなら力は及ばない可能性が高いってことよ』チッ)〟

〝『確かにな。だが可能性だからわからないんじゃ……』チッ〟


 まだ心では引っかかり続けているのか、アザは素直に疑問を返す。


〝(『そりゃそうだけど、試さないとわからないのも事実だけど、どう考えてもその可能性は限りなく高いでしょ? 極端な話かもしれないけれど、もしもM国にアザがいたなら、その妖精とやらは、あんたのいるその場所をどうやって突き止められるのよ? 突き止められたとしてもそれは何日、いや何年かかる話?』チッ)〟

〝『あ! まぁ……確かにそうだな。』チッ〟


 セリスの突き詰める論法にグウの音も出ないアザ。


〝(『それに相手が魔女、つまり人で、言葉というコミュニケーション、つまり交渉の場にいるのなら、その言葉の温度感でいくらでも流れは変えられるよね? あんたがさっき、交渉のテーブルに着いたけど逆鱗に触れた、って言ってたけど、どうせ空気を一切読まないでいつもの歯に衣着せぬとんでもない暴言を吐いたってだけなんでしょ?』チッ)〟

〝『う!』チッ〟


 見ていたわけでもないセリスだが、アザは痛いところを突かれたようだ。


〝(『そんなの交渉とは言わないから』チッ)〟

〝『かっ、返す言葉もない……』チッ〟


 すべてを覆されたアザはしょんぼり俯く。


〝(『話を戻すけど、じゃあなぜわざわざ交渉に来るのか、なんだけど、それはズバリ困っているから……ということでしょ? そんな凄い力があるのなら、あの音響機器か、またはヘリそのものをぶっ壊せばいいだけでおそらく一瞬で片が付くはずなのにそれをやらない、というのもおかしい話でしょ? 要するに、ソフィア王女に対する攻撃をやめて欲しいっていう懇願であって、それを妖精という隠れ蓑で一芝居打っただけのことなんじゃない?』チッ)〟

〝『なるほど』チッ〟


 最早、ただのイエスマンに成り下がるアザだった。


 一方、ソフィアのもとに撤退中のマコトたちは、まだセリスとアザの会話をウォッチしていた。


  『アチャー。もうバレバレみたいだね。マコたちも放り投げる良いタイミングだったかもで。このセリスさんとやらは、なかなかの切れ者みただね? イル』

  『そうみたいね。マコちゃん。まぁ早くソフィーのところに戻りましょ。ここからは全速がいいかもね』

  『そうだね。ゆっくり下がってたけど、一瞬で着けるよ。ちょっとダイナミックに動かすから注意してね? イル』

  『OK、大丈夫だよ』


 そう言いながら、二人を乗せたエアボードは急激な移動を開始する。


 セリスたちの会話はまだ続くようだ。


〝(『大体、神っていうなら、むしろ普段の傲慢で無慈悲なあんたのほうがよっぽど神らしいよ』チッ)〟

〝『え? そうなのか? オレのほうが神らしいか……ふっ。で、じゃあ、どうする?』チッ〟


 どうでもよい言葉を放ったセリスだが、アザは単純で、神らしいの一言に悪い気はしなかったようだ。


〝(『今のステーショナリーな(動かない)対応から、ランダムな機動を加えればいいんじゃない? それにけっこう時間掛かっちゃってるから、そろそろ決着つけて退かないと厄介かもしれないしね。まぁあんたは動けそうもないから、まだ我慢できるならそのままで、後でアルマに癒してもらうか病院に行けばいい。あとはあたしが指揮するわ』チッ)〟

〝『わかった。任せるよ』チッ〟


 結局、アザの歯痒さとジレンマはどこへやらで、淀むところなくセリスに指揮を委譲する。


〝(『OK! 任された』チッ)〟

〝チチッ〟


 アザは了承の意を返す。


 セリスは全軍に向けて一斉指示を流す。


〝(「全軍に告げる。これより指揮はセリスが引き継ぐ。各機は今はいったん現状維持。これよりあたしがターゲットに攻撃を仕掛ける。ターゲット上部を削り取る予定だ。そこから飛び出すようなら、その奪還に向け、ターゲットの動向を見て指示を出す。当機は3番機でこれから打って出る。2番機と1番機は3番機に付いて来い。ひとまずターゲットに動きがあったら、それ以降は現隊形は解除し、奪還にあたる機以外は特に指示がなければ撤退に向けた位置をとれ。状況変化に応じて変更指示を上げるから聞き逃さぬよう。不明点があれば今すぐ上げよ」チッ)〟

〝(チチッ)〟

〝(「よし、問題なしだな? では作戦開始だ」チッ)〟


 セリスは自機のテイルハッチをオープンする。セリスの搭乗機は時計回りに三番目の位置にあった。そこからセリスはアルマの言っていた丸く大きなカッターみたいな刃(やいば)をソフィアの籠る繭のようなものへ向けて放つ。


 しゅるしゅるしゅるっ…………。


 それを見たマコトは慌ててソフィアに知らせる。


  『ちょちょ、ママ? 敵が何か円盤みたいなもの、切れ味の鋭いカッターみたいなのをそっちに向けて放ったよ! 気を付けて!』


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