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Jet Black Witches  作者: AZO
4−3.萠動編 − 暗躍のうねり
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アルマ 〜 暗躍のうねり lvj

 セリスの搭乗ヘリを求め、後ろのハッチが開いているからと、時計方向で次の機、2番目のヘリに当たりを付けて、その後方に占位したマコトたち。


 すると、見えてきたヘリに女の子の姿を捉えるマコトだが、よく見ると自分たちに近しい幼い女の子であるということ、またアザ側の会話から拾うセリスの言葉と、目の前の女の子の唇の動きはまったく噛み合わないということが判明し、見た目の幼さからも二人は退こうと考えるが、見た目に騙されないようにとイルが待ったをかける。


 そんな会話をしていたところで、その女の子がふと、コチラに気が付いたかの反応を見せたことに気付く。


 マコトとイルは、ステルス装備で身を包んでいる。よく目を凝らしたりしない限り、気付かれることはないはずで、実際アザには気付かれず、妖精と信じ込ませることにも成功していたわけだ。


 やや狼狽え気味のマコトたちに向けて、突然念話が差し込まれる。


  …[〔もしかして、コッティさんにルルさん? 話しかけていいですか?〕]…


 マコトの念話と同様のやり方で、念話としてのチャネルをオープンしたい様子だ。そのままでも通話は可能で、近ければ周りの能力者に聞かれてしまうが、どうやら聞かれたくない会話を所望するようだ。


 念話が使えることから、この相手の女の子は少なくとも異能者ということになるが、予想もしなかった展開に大慌てなマコトとイルは内部念話で作戦会議する。


  『って、念話で話しかけてきたぁ、どどど、どうするイル? さっきまでのアザとのやり取り聞いてたんだね。仮名(かめい)だけどバレてる。この念話受け入れる?』

  『ヤバいね、マコちゃん。でも……バレててもそうでなくても、確かめる必要はあるんじゃない?』

  『ってことはイル? 話をするってことだね?』

  『うん。だって今の時点でアザとセリスって人たちにはバレてないっぽいんだもん。コッティとルルって知ってるってことは、アザのヘリ内を傍受してたってことで、その上で黙っているわけだし、姿が視えてるってことは、妖精じゃないこともたぶんバレちゃってる? ……さらに念話まで……うゎぁ、なんか不気味……何考えてるの?』

  『うーん。ま、いっか。じゃあ、イル、念話了承するよ?』

  『うん、いいよ』


 相手の思惑は不明だが、二人とも念話を受け入れることにしたようだ。


  …[〔いいよ。ところであなたはだぁれ? わたしはコッティ〕]…

  …[〔わたしもいいよ。わたしがルル。あなたにはわたしたち、視えてるの?〕]…


 ひとまず、二人とも了承の意とともに名前と視認のほどを尋ねる。まだ確信は持てないからか、口調はまだ、妖精もどきのスタイルを崩さないようだ。


  〔うん。繋いでくれてありがとう。わたしの名前はアルマ。セリスやアザの妹よ。わたしだけ異母兄弟で、母が魔女で血を継いだわたしにはずっと視えてるよ? ずぅっとお話ししたかったんだぁ〕


 アルマは名乗るだけでなく、簡単な素性とともに視えていることと、会話所望の意図まで付け加える。


 マコトもイルも素直に回答をくれる好感度の高い返事に肩透かしを食らう。


  〔あ、そうなの?〕


 とはいえ、見た目とは裏腹に、相手は敵の指揮官クラスだからと、まだ警戒は怠らないのか、言葉少なめに返す。


  〔うん。すっごく! あ! 警戒しないで、といっても無理あるかもだけど……わたしだけは敵じゃない……あ、でもごめんなさい。ソフィアさんへのあの攻撃の機械、わたしの発案で作ったの。それだけはごめんなさい。殺傷能力のない、ただ気持ち悪くするだけのものにしたかったのに、わたしの手を離れた後にかなり強力な装置に変えられちゃったみたいなの。それにまさかソフィアさんに使うとは思ってもいなくて……だからわたしはあなたたちの攻撃を受ける義務があるわ。覚悟はあるから、アザ兄さん、アザに与えたあの攻撃、思いっきりわたしにも向けてちょうだい!〕


 そう言いながら、目を固く瞑りながら顔を背けつつ、歯を食いしばり、両手を開いてアルマは構える。


  〔あ、うん。そうだね。ママたちを痛めつけられたのはかなり頭に来たから、そうしたいけれど、さっきの説明だと、あなた自身には非がなさそうなんだもん。そのなの聞かされたら、やる気も失せちゃうよ〕


 マコトやイルにとって、アルマは敵側に違いないのだが、まったくの想定外な相手と対応に気が削がれるようだ。ソフィアが母親だと知った瞬間、アルマの目は大きく広がる。


  〔あ、そうか。ごめん。説明しすぎたね。でもココは引くわけにはいかない。わたしは自分が赦せないから遠慮なくやっちゃって! それにお母さんなんだね。それなら余計だよ?〕


 それでも引こうとしないアルマ。マコトが娘という立ち位置を知ればこそ、余計に引けない思いがあるように視える。マコトは迂闊に親子であることを漏らしたことに気付かされる。


  〔あ! またやっちゃったかぁ……うん。まぁ、いいよ。気が乗らないし、セリスさんなら危ない感じだからそうしようと思ったけど、なんか今はねぇ。それにアザさんでちょっと気は晴れたし……何より今はそんなに時間無いの。用件があるなら先にソレをお願いできる?〕


 埒が明かなそうなやり取りだと感じたからか、マコトは用件の内容の引き出しにかかる。それを問われれば、無駄なやり取りを回避できそうとマコトは思ったようだ。


  〔あ、うん。時間かぁ。そうだね。簡潔に言うと、私の母は攫われて、囲われて今のわたしがいるの。そして今はその母ももういない……だからいつか復讐したくて……だからできる範囲で協力したいし、叶うならば、いつかわたしの復讐に力を貸して欲しい……ってそう思っているの〕


 アルマは淡々と話し始めるが、母を語る部分ではやや悲しげな表情で声のトーンも少し下がる。そうして、僅かずつ声に淀みが混じり始める。瞳が潤みだすのを懸命に抑えようとしたせいだった。


 嘘を言っているかも知れない? との思いも二人の頭を過(よぎ)ったようだが、それを凌ぐほどに、スコープから覗くマコトは、アルマの話す内容と表情変化や今にもぐずつきそうな声のトーンにすっかり絆される。イルは遠目ゆえに機微な表情は覗えないが、聴こえる声のトーンから嘘は言っていないことを感じ取ったようだ。


  〔そ、そうなんだ。それは悔しいよね。わかる。だからさっきも強引だったんだね。〕


 マコトは同意を返し、傍らではイルも頷きを返す。


  〔うん。そう。でももう少しキチンとお話したい。だけど、ちゃんと話すには時間かかるし、わたしたち遠くから来てるの。M国が多いけど、ヨーロッパからアフリカにかけての大西洋側のアチコチを行き来していて、そうそう会ってというわけにもいかないから、このメモにあるメールアドレスに連絡が欲しいの。取りに来てくれる? 安心して! 罠なんてないから〕


 アルマの言葉に力が籠る。これが一番の伝えたかった用件だったようだ。それを聞いたマコトは、疑う余地もないが、参謀的な立ち位置のイルに意見を求める。


  『どう思う? イル』

  『うん。嘘は言ってないと思う。メールアドレスのセキュリティとか、どうすればよいかはあまり自信ないけど、コッチにはシエラさんいるから、問題ないかとか、コチラの素性が追えないようなやり方もあると思う。それに今接近して、アルマさんに変な挙動がないかはイルが見張っとくよ。取りに行こう?』


 既に疑いようはないが、念のための措置だけはしておくことをイルはマコトに伝え、安心を促す。


  『わかった。流石イルだね。マコには思いつかない着眼点、もう100万点だよ』

  『え? 満点の一万倍? って、まぁいいけど』


 ひとまず迷いなくメモを受け取りに行くことに意見は整ったようだ。そうと決まれば即行動のマコトだ。見切り発車の如く既に前方に滑り出してはいたが、やや加速して近づいていく。


 アルマはヘリ内のC国の搭乗員に後ろを向かないように指示を出したようだ。


 マコトはヘリのハッチの上に横向きに停まるようにエアボードを運ぶ。ステルス装備のマコトたちはC国の搭乗員には見つかりにくい状況だが、なぜかアルマにはわかったようで走り寄り、フードから覗かせる二人の顔を見て、少し驚いたようだが、そのままマコトとイルに抱きつきメモを渡す。


  〔来てくれてありがとう。はい。これメモね。二人とも小さいんだね。それなのにあんな立ち居振る舞いしてたのね。凄い! アルマも見習わなきゃだ〕

  〔あははは。かなりハッタリかましたけどね……〕

  〔そうそう。一時はどうなるかとハラハラしてたよ。かなり切れてたもんね〕


 それは二人の成り切り妖精でぶちかましたハッタリシーンのことだが、イルが付け加えたのはマコトがアザの言動にブチ切れたシーンのことだった。


  〔ふふっ。良かった。二人とも素敵な女の子なんだね。勇気を沢山貰った気がするよ。それにどっちが工作担当なの?〕


 イルもその特殊な共通点を見出してはいたが、アルマもマコトも互いに感じてはいたようだ。


  〔え? ああ、ボク、コッティのほう……って、そういえばあんな機材作っちゃえるのって凄いよね。あ、アルマって呼んでいい?〕

  〔うん。アルマでいいよ。ボクっ娘なんだ。あははは。コッティさん、わたしと似てるかもね?〕

  〔そうだよね。コッティはいつもDIYってうるさいんだから〕


 モノ作りマニアには苦(にが)めの一言に思わず目が泳ぐマコトで、そこに親近感を覚えるアルマの頰が綻ぶ。


  〔え? あぁ、Do It Yourself のことね? ふふふっ。その話もいつかしたいな〕

  〔うん。しよしよ。じゃあ、時間あるならもう少しお話ししたいところだけど、そんなに悠長にはできなそうだから、これで帰るね?〕


 長時間化していることが気になるマコトだったため、名残り惜しくも別れを切り出す。


  〔うん。メール待ってる〕

  〔うん〕


 別れ間際だが、アルマはふと気掛かりを告げる。


  〔あ! そうそう。セリス姉さん……セリスもなかなか破天荒な性格だから、強引に攻撃してくるかも。それでわたしが作った丸くて大きなカッターみたいな飛ばす刃を持ってるからくれぐれも気を付けてね? かなり切れる武器なの〕


 何やら危険度の高い武器があるという情報だった。驚きながらもマコトとイルは気が引き締まる思いを携える。


  〔刃? わ、わかった。こんな空中で投げてくるってことなんだね?〕

  〔うん。そうなんだけど、切れ味だけじゃなくて、無線操縦で操作可能だからちょっと厄介かも?〕


 言葉だけではキチンと理解できるものではないが、アルマが敢えて説明を付け足すほどの何やら凄そうな武器であることはマコトとイルに伝わったようだ。


  〔わ、わかった。そんなものも作れるんだね。じゃあアルマまたね?〕

  〔わたしも。アルマさんまたね?〕

  〔うん。話せて良かった。バイバイ!〕


 そうして、いったんアルマのヘリを離れ、後退するマコトとイルだった。そんなところへジンからの念話が差し込まれる。


  『マコト? 状況はどんな感じだ?』


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