あれ? 女の子? 〜 暗躍のうねり xxxiij
ジンはヘリの多数機導入することの意味を総括し、マコトはその底しれない悪意に震えを寄せる。しかし……。
『あ! そうか。マコたちの存在は知られてないからか。ふふふふ……うちにはパパという天才軍師がいるんだからね? フフフン』
そんな悪行を挫き阻める算段が立てられそうな理由に気付いたマコトは、前向きの気持ちが加速する。さらにはそれを成功に導く鍵として、ジンという絶大なる存在を誇らしげに宣う。
『あ! おい、オレじゃなくてマコトの存在が大きいんだぞ? マコトの産み出した如意棒とかの道具の存在がどんだけ大きいか……アレがなかったらS国からの帰国便では命があったかも怪しいところだぞ?』
ジンは、自身が中心に敵の企図を阻んできた自負はあるが、それを可能たらしめた立役者はマコトだと思っており、それを投げ返す。
『え? いやいやぁ……マコのDIYなんてとてもとても……でも、それに秘匿することが戦略的に重要って、こういうことなんだね……うーん。それに……本当にヤバいのは、V国じゃなかったってことかぁ』
マコトにしてみれば、すべてはジンの分析や組み上げる策略が功を奏していると思っているが、今は軽く流す。それよりも、今、秘匿していることの重要さ、その大きな意義を噛み締めていた。帰国時の空港ではV国諜報員に苦戦を強いられたが、今のマコトは、それすらも小さなことに思えるのだった。
『あー、V国も攫おうとしているのだから、要注意国ではあるけどな。これまで全く気付きもしなかったが、裏でいつも糸を引いていたのは武器商人組織ということがわかったわけだ。まぁ今回、まさかこんな形で低周波攻撃を受けることになるとは予想だにしていなかったけど、ヤツラがソフィアを奪取するための方法として、なかなか理には適っている。もしも殺害したいだけなら、狙撃という方法が最も効果的だが、それをしないわけが拉致目的なのだろうと思う。もしも狙いが魔力なら、マコトやイルだって、存在そのものもそうだけど、力が知られたらヤバいんだからな?』
そんなマコトの意識にはひとまず訂正を入れるが、改めて、敵の作戦の完成度や、知られてはならないことなどの念を押す。
『わ、わかった。怖いなぁ。ママも絶対奪わせないけど、マコたちも隠密を徹底しなきゃだね』
『その通りだな。皆で皆を護るぞ!』
『オー!』
士気を上げる掛け声で締めると、ジンはまた少し粒度を上げた説明を始める。
『で、話を戻すけど、一つ一つの高周波では周りに影響しない程度なら、それが2つ重ねられてもそれほど大きな影響は与えられないのが実情だ。共振周波数なのだから、振幅が跳ね上がることでその真価が発揮される。つまり、多数機の投入は、効果範囲を拡げて確実にする意味もあるのだろうけど、一番の理由は共振を高めること、振幅が跳ね上がって相手を確実に弱らせることだと思うんだ。マコトが螺旋状にと言ったように、少しずつ角度が異なる高周波を重ねるように波を乗せていく、その効果を見込んでいるのではないかと思っている』
『ほぉぉぉ。螺旋状なのはそんな理屈が……』
ジンの説明で、改めて螺旋状であることの凄みがマコトの意識に刷り込まれる。
『今回の敵はソレを狙って、しかも周りの誰にもそれを気付かせない。武力行使なしに秘密裏に掻っ攫うから、日頃は前面に出てくることのない武器商人がC国を隠れ蓑に、外資系企業のヘリを使って出張ってきたのじゃないかと思う。単品では殺傷能力皆無の超ハイテクな音響機器を使ってな』
『え? それは例えば、今ここに自衛隊や海上保安庁が来てくれて、状況を押さえて連行したとしても、軍事兵器もない民間ヘリで、音響機器を調べても何の殺傷能力も認められないから無罪ってことになるの?』
敵の狙いの一つかもしれない狡猾な手口を予測するジンの言葉に驚き、マコトの中から理不尽極まりない思いが声を上げる。
『お! よく気付いたな。音響機器は空中試験をしていた、とでも説明されたら何ら疑いなく通ってしまう可能性がある。前例がまったくないからな。そういう狙いもあっての音響機器を使った作戦なのかもしれない』
『どこまでも狡猾! 赦せない!』
単に悪いやつ、ズルいやつはマコトの正義感がそれを許したくない思いに駆られるが、この場合は、桁違いに程度が異なっていた。憤りにマコトはワナワナと身体を震わせながら激怒する言葉を吐き出す。
『そうだな。だが、今回ばかりはそうはならない。なぜならマコトがいたからな!』
ところが、ジンからそれを打ち消し、さらにその理由がマコト自身にあるとの言にキョトンとしてしまう。
『え? どういうこと? またマコ弄りなの?』
一息置いて、また弄られたのかと勘繰りを返す。
『あははは、違う違う。さっきまでのは、前例も根拠的な理論も証拠もないからなんだ。仮に推測理論を立てられたとしても、根拠が薄ければ実地検証だって実現しないかもだ。だが、今回はマコトが隠密で探ってくれたから、敵の攻撃手法が明らかだろ? 螺旋状の高周波差分攻撃であることは間違いないわけだ。ただ、隠密であるとか、ソフィアの機外活動のオーラ構造物なんかは言えない話だが、検証する前に、物質化したオーラ構造物を作成しておいたり、イルの布状のものも作成してそこにセンサーを付けておくとかの仕込みをしておけば、相手が実際との可視不可視の違いを指摘できるはずはないんだ。なんたって攻撃なんてしていないことがヤツラの主張になるわけだからな?』
しかし、それは、マコトが敵の行為の本質に近い事象を検知していたからだとジンは説明を入れる。
『なるほど〜。実際にはそんな公の検証なんて機会はたぶん訪れないと思うけど……だって武器商人は表に出てくることはないんでしょ? だから、どう転んでもコッチが勝利したところでアッチは逃げの一手だと思うし、逃げるのなら、大事にしたくないからパパは追うことはしないんでしょ?』
ひとまず理不尽さへの怒りの炎はやや鎮まるが、収束させたい意向を事前に聞いていたから、マコトはやや煮えきらない行動スタイルを突っ込んでみる。
『そうだな。まぁ、この後、うまくことを運べたとしても、良くてそんな結末なんだろうな。マコトもなかなか読むんだな?』
『あははは。マコもいろいろわかってきたのかもね』
マコトにしてみても、被害も受けず、綺麗に収まるのならそれもかまわないとの姿勢だった。
『そうだな。成長著しいのは、嬉しさもあるが、どことなく寂しさもあるな』
『ふぅーん、そういうもの?』
それとは別に、今のこの状況について、講じたい次の一手について、ジンは話し始める。
『そうだな。で、ここからのことだが、今ソフィアは、暫定対策で凌げてはいるが、また事態はどう転ぶかはわからない。まだ奥の手がある可能性は否めない。少なくともC国ヘリの腹に抱えてる機械を無力化したい。そこでだ。マコトは前にやった電撃みたいなこと、今もできる?』
それは敵の機械を無力化するために、帰国時の対戦闘機戦で行った電撃攻撃の実施可否だった。
『あのときは、上空のいろんな大気の変動状態から生じた、静電気が凄かったからできたんだよね。でも今は同じことができるかどうかはわからない。できたとしても、あのときの大気状態を作り上げる時間的な余裕もないし、あってもあの不思議な気象状態をこんなところで作るのはいろいろ問題あるんじゃないかな?』
『そうか。無理か、あのときの大気状態? 小さな太陽? あれは誤魔化しきれないからなぁ。うーん……』
しかし、それには今の状況が伴わないこと、やれなくはないが、やるとすれば、他にいろいろな解決しなければならない問題も派生してしまうことから、この要請は先細りとなるようだ。ただ、マコトには別案があるようだ。
『あ、でも一つアイデアはあるよ?』
『お! さすがマコトだな。で、それはなんだ? どうやるの?』
しかし、マコトは時間ロスを避ける意味からも今は伏せることを返答する。
『あー、どうするかは……今は内緒。説明は時間かかるし……でもまぁダイナビーがヒント』
『え? まさか捻りこんだツブテでも撃つとかなのか?』
ただ、ダイナビーに関わるものであることだけ伝えるが、ジンはチヌークの機内で説明された捻り込みのツブテを想像するが、マコトは否定で返す。
『あはは、違うよ。そんなことしたら、物理的な攻撃がバレちゃうでしょ?』
ジンも眼の前に別の対応が必要になりそうなことからも、いったんはマコトに任せることにする。
『そ、そうか。わかった。マコトができると思ってるのなら多分大丈夫なんだろう。でも気をつけるんだぞ?』
『ウィーッ……じゃあ早速取り掛かるね』
『ああ、オレも眼下の潜水艦からヘリが上がったから、近付けないようにやってみるよ』
『わかった。パパも頑張ってね!』
ジンとの話を終えて、マコトはこれからの行動のためにイルを起こそうとしていた。すると……。
〝Wait, what ? Are those... little girls ? 〟
どこからともなく。
囁きのような何かが鼓膜を震わせるように。
か細い音として聴こえてくることにマコトは気付く。




