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Jet Black Witches  作者: AZO
4−3.萠動編 − 暗躍のうねり
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わだかまるもの 〜 暗躍のうねりⅹⅵ

 マコトの幼稚園時代の事件で、未自覚のまま魔力発動していた事実を知り、自身のしでかしやすい傾向にやや落ち込むマコトだったが、丁寧に掬い上げながらのソフィアの励ましでマコトはなんとかいつもの自分を取り戻す。


  『ひとまずマコちゃはあのとき魔力が漏れ出てなければ、まわりの子どもや親たちに違和感持たれなかったかもしれないから、そういう意味でのマコちゃの1割ね。でも遅かれ早かれ何かは起こっていたと思うから、比較的浅い段階でわかったことは良かったことだと思ってるわ。明るく振る舞ってくれていたから、マコちゃが思い悩んでいたことと、それに気付けてなかったことを除いてね』

  『うん』


 平常のマコトの表情を見届けると、今度は自身の悪い割合の説明に移るソフィア。


  『それでママの2割。その1割は、私の素性を事前に明かせなかったことで、そのせいでお義父(とう)さまに、あ、マコちゃのお祖父さまね、直接お会いできなかったからと素性不明のまま、マコちゃを幼稚園に入れることになって、カースト最下層にいたからね。あんのぉ、クソジジ……』


  『ママ! あ! コホン。……はしたないですわよ。ソフィアさま?』


 すっかり明るさを取り戻したようで、マコトのお貴族様の言葉遊びのノリツッコミの切れ味がいつも通りなことにソフィアは頬を緩ませる。


  『あらいやだ。何か言ったかしら? オホホホ……でも、もしもキチンとお会いできていたなら、ジンは一ノ瀬一族のしかも直系ですもの。カースト上位で、いやカーストトップかな? マコちゃが嫌な思いをすることはなかったと思うわ』


  『あー、うん。いいよ、そんなこと。あんな意地悪なやつらと同格なのはコッチから願い下げだよ!』


  『ふふっ、そうね、ありがとね。それで、もう1割はそのカースト下層にいたのだけれど、日本の幼稚園って、親がいろいろやらなくちゃいけないことが多くて、当然下層にいれば、それがたくさんあるから、マコちゃの大事なときに直ぐに駆けつけられなかったことね。直ぐに気付けたらどうにかできたかもだけど、まぁこれも仕方なかったとも言えるわね』


  『うん。それは仕方ないよ』

  『ありがと。次にジンの1割だけど、あのときS国から戻っていないときだったことかな。マコちゃの事態が起こって、わたしがとりなそうとしても、カースト下層ではなかなか意のままにならないのよ。なんとか火種が大きくならないように維持するのが精一杯だったかしら』


 仕事の都合で不在だったのだから、仕方ないことではあるが、そんな仕事形態を選択していることや、ジンの一族に絡む特殊性はソフィアやマコトには関係のない事情であり、そんな事情に巻き込んでいるのはジンの責任の範疇でもある。そして父としてマコトに何かしらを抱え込ませたこと、それをずっと気付けずにいた事実に、神妙な面持ちでジンは謝罪する。


  『あー、そういえばそうだったね、ソフィア。遅れて済まなかったな。マコトも申し訳ない。あのときの件では、その裏には、マコトの説明してくれたようないろいろなことがあったんだね。オレはそれにも気付けてなかったから、オレも2割悪いかな』


 ソフィアに倣ってか、言葉の上で、自身も2割悪いと宣言するジン。


  『そうね。ふふふっ、そうかもしれないわ。でもジンが来てくれてからは、話が通るわ通るわ……なんなのかしらね〜、あのカーストによるのは負担だけじゃなく、発言力も歴然なのよね』

  『そうだな。これからの時代にオレが口を挟むことがあれば、改善したいところだな』


  『あら? そうね。私たちにはもう関係ないかもだけど、そんなことができるといいわよね? だけど、それもなかなか難しいそうだけどね』

  『そうだな』


 みんなの過失割合のような形で確認したことで、当時の事件への懸念は解消し、一折の整理が着いたことになる。その当時、事態を収束させるための行動として引っ越したわけだが、ソフィアはその結果をどう捉えているのかをマコトに尋ねる。


  『そんなわけで、あのときの1件は仕方なくS国へと引っ越すことになったけれど、それでマコちゃの心には、しこりが残っちゃったかもだけれど、マコちゃはどうかしら? 引っ越さなかったほうが良かった?』


  『あ、ううん。引っ越せたから、いったん心は落ち着けたし、シャナにも会えて、魔力含んだいろんなことを知った。何よりイルたちに出会えたし、だから魔力を使うこと、高めることもできた。日本でそれに気付けても、日本はいろいろ不自由だからきっといろいろ難しかったよね。それに、お風呂絡みのいろんなことが楽しかったし、なにより、あの流星群が今のモノ作りでも大きなきっかけだったし、S国に行ったから、あの帰国便で凄い体験を沢山できた。全部繋がってる。マコは幸せ者だと思うよ?』


 マコトにとっても良い結果だと捉えてくれたことにソフィアは嬉しさを滲ませる。


  『そう? それなら良かったわ。大体全部説明できたかしら? あ! もう一つあったわね』


 一頻り話しきったことを告げたソフィアだが、話しながらもう一つ、一番大切な未解決事項に気付き、それを告げる。


  『え? まだ何かあったっけ?』


  『あら? そこは気付いてないのかしら? 一番大事なところが解決していないよね? マコちゃ自身が怖いと思うところ、トラウマになっているものよ?』


  『あ! 確かに。そうかもね。でもそれって、自分の外側、他の人の内側の話が元だもん。どうすることもできないよね?』


  『まぁ、そうね。難しい問題ではあるけれど、どうして他の人がマコちゃに対して怖いイメージを持ってしまうのかだから、これはジンか、もしかしたらイルちゃのほうがうまい解決方法を知っているんじゃないかしら?』


  『あー、そっちかぁ。なるほど。それはそうだろうなぁ』

  『え? もう何かわかったの? パパ』


  『あぁ。生まれたときからそうだけど、特にこの数年。その中でもとりわけS国に行ってからの期間、マコトの成長が凄まじかったからな……そうか。異質……いつの世も異端児は時代から弾かれる……だから周りから浮いちゃうことを心配してるんだな?』

  『え? どゆこと?』


  『ああ、これは子どもに限らないんだが、ふつうの人、特別な際立った才能もない平均的な人のことね? そんなふつうの人が多く集まって社会を形成しているわけで、その人たちに共通する認識がいわゆる常識ってやつなんだ』

  『うん。そうだよね。確かに』


  『だけど、極稀(ごくまれ)に常識を超えたことを言い出す人が現れることがある。そんな人のことを異端児と呼ぶんだけど、その常識から大きく外れる変化や振る舞いを、社会はことごとく嫌って、既存の秩序を守ろうとする動きが生まれるんだ。もしもそれが常識を覆すほどなら、そこには脅威しか生まれず大抵は拒絶されたり孤立したりだね』

  『拒絶って、その異端児さんは、何か危険なの?』


  『いや、そんなことはないよ? ホントに危ない危険な思想の人も中にはいるけどそれは置いといて、むしろ結果的には世界に貢献する真理や変革を行うからその後は大成した偉人も多い。例えば、有名どころでは地動説のガリレオ・ガリレイだったり、有人動力飛行のライト兄弟なんかもそうかな?』

  『え? マコも知ってるよ? 凄い人たちだよね? そんな人たちが異端児?』


  『うん。偉業を成したから歴史に名を刻むけど、そうなる前は周りは(あざけ)るだけで誰も信じないし、人によっては迫害されて亡くなったずっと後の世に彼は正しかった、なんてのもけっこう多いよね。大抵否定するのは大衆や宗教団体なんかで、否定に足る証明もなしに、そのときの常識と異なる、それだけの理由で間違っていると否定してのけるんだ』


  『うはっ、最悪だね、それ。でも常識から外れることは確かに怖いけど……あ! そうか。新しい何かは常に常識の外にあるってことかぁ。街で非常識な人を見かけたら皆顔を歪めるけど、もちろんその人たちは常識を知らない不届き者で周りから注意されても仕方ないわけだけど、新しい常識を説く異端児だって、常識を纏う人たちからしたら、どっちも同じにしか視えないかもだね。異端児の人たちは、やりたい新しいなにかの他に、それを認めてもらわないと活動そのものができないわけだから大変だぁ』


  『まぁ、そういうことだな。話が少々飛躍して長くなったけど、人は本質に対して無関心。変化を嫌い、既存の秩序を守るために無責任に否定や排除をする生き物ってことだな』

  『うん。ちょっと悲しいけど、仕方ないのかな。でもそれって、魔女裁判なんかと同じだね。だから、魔力を使えることを知られてはいけないって……』


  『そう、その通り。マコトもオレたちも細心の注意を払わなければならないところだな。でも、それ、魔力行使とは別に、異端児の話でもそうだけど、言葉として発することにも同じことが言えるよね?』

  『うん』


  『話を戻すと、まぁ、どんな親だって、あの幼い年頃の子どもが何を考えているかなんて、わからないものなんだ。物心がついたばかり、つまりまだ何も教わってはいない、イコール、自分だけの独自ルールで動くのが当たり前で、何かを言い表したくても言葉をあまり知らない。脳が発達途上だから、感情すらうまく表せない』

  『ふつうはそういうものなの? マコは生まれたばっかりのときがそんな感じだったかな〜?』


  『そうだな。マコトはちょっと特別だったからな……そんなところへ、今や大人顔負けの理路整然と話すマコトは当然異質に映る。もしも同じことを対等ではない上下関係の親から言われたら、意味はわからないまでも従うしかない以上、言う事を聞かされ続ける。つまり受け止めるしかないということ。そうやって他者との接し方を学んでいくという側面もある。しかしそれを自分と対等の存在から、つまり子ども同士で言われたとしたら、自分の意志と異なることには反発するのは当然だし、自分が知らない興味のないことには畏怖しか生まれない。その結果、自分たちとは違う存在、という意識が強く芽生えてしまうのは自然の道理とも言えるからな』

  『ふぅーん。ちと難しいね。わかったような気もするけどまだわかってないかも?』


  『うーん。そうか。でも大人も子どもも本質的には変わらないわけで、自分の知らない常識を受け止めるには、よほどの説得力というパワーが必要なわけなんだ。それが知識も経験もない幼い子どもなら、受け止められるはずがないから、無関心で受け流すか、理由(わけ)もなく反発するか、恐れを(いだ)いて畏怖するか、だろうと思う。だからこの幼い時期にその基本的なことを教える親の役割ってのはとっても重要なんだよ』

  『ふぅーん。なんとなくはわかった。でも、それがマコの今の話題に関係あるの?』


  『あ! そうそう。少し脱線したかもだな。つまり、わからない相手にわからないことを言うのは悪手。相手の理解が届く範囲で解かるように言うなら、受け入れてくれるというわけ。親が子どもに話するときは、かなり言葉を選ぶのが普通なんだ。反対に言えば、わからないと思えることを言ってはいけない、とも言えるな』

  『あー、なるほど〜。それならわかる。大体わからない相手にわからせる必要もないしね。でも、その辺りの境界線や、わかるように話すってのはマコには難しそうかも?』

  『あー、そうかもな。まぁ、これから追々理解していけばいいさ』

  『うん。うまくできるかは別として、なんとなくわかった。ありがとう』


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 そんな念話が弾む頃、索敵(見張り)に専念していたシエラからの報告が差し込まれる。


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