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Jet Black Witches  作者: AZO
4−3.萠動編 − 暗躍のうねり
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マコト包囲網 〜 暗躍のうねりⅹⅳ

 モノ作り談義にうっかり熱が入り、自ら矢面に立ってしまうところに気付いて慌てて火消しに取り掛かり、なんとか持ち直せたと思うマコトだったが、ジンはニヤリと含み笑いを浮かべながら否定の言葉で繋げる。


  『だが、それとは違うぞ?』

  『へっ!?』

―― ちょ! ま!


 ジンのそんな逆接の言葉はマコトの心の予定調和を大きく崩す。誇らしさで埋まりそうだった心の空間をぽっかり持っていかれた感覚のマコトは、目を大きく広げながらジンをぎこちなく見上げる。ジンは淡々と説明を紡いでいく。


  『マコトの場合はその具現化。乱暴な言い方だが、アイデアを考えるだけなら誰でもできる。だけどそれを現実の形にするにはあらゆる視点の考察や検証が必要だからその何億倍も大変なんだ。魔力ありきとは言え、マコトのは最短距離で結実させようとしてることなんだ。他に良い尺度の言葉が見つからないけど、天才なんて言葉、軽く消し飛ぶほどの資質だな!』

  『ひゃぁぁあ!』


 矢面に立ちたくない、マコトの薄っぺらい論理防壁は、ジンの要点を的確に捉えて解きほぐす説明にポコポコと弾け、とろけて、崩れ落ちる。


 マコトは身ぐるみを剥がされたかの頼りない感覚に陥り、居てもたってもいられずやや涙目であたふたとしていると、今度はソフィアが追撃を開始する。


  『そうね。マコちゃのは、考える奥行きが特殊……いや独特よね。その素地は魔女の血筋にあるとしても、その奇想天外な発想力、即座に発現・展開・発展させられる力、その源はパパ……ジンの血脈に秘められてる気がするわ』

 『えぇぇ!?』


 マコト包囲網にイルも参戦する。


 イルもソフィアも、決して攻めたい訳ではないのだが、そういう話題に行き着かないのが通常のため、日頃の小さな気掛かりの蓄積が今このタイミングに花開くのも自然の道理なのだろう。


 そしてイルに蓄積された日頃の思いはまた格別だ。


 『そそそ、そうだよね。ソフィーひとりで既に賢さも美しさも尊さもMaxなのに、加えてジンさま。かの天才的戦術家の類い希なる奇抜な発想力、そして胆力を備えた血脈。あー、もう。言葉に連ねていくだけで納得しか……マコちゃんってば、もうウットリよね』

  『ふゎゎゎ!?……も、も、もぉー。みんなしてぇ……』


 マコト包囲網を形成する面々からの回避不能な集中砲火を浴びて、またまたマコトは涙目だ。


 マコトの頑なな回避傾向の振る舞いが常日頃から気になっていたジンは、今がそのときだと、思うところをぶつけてみる。


  『だが、なんだ? マコトはいつも誉められると、核心のところを濁そうとするんだな。マコトくらいの年齢なら、誉められれば大喜びするか、反対に誉めてって要求してくるものかと思ったんだが……まぁいいけど、これは誇るべき才能だ。もっと堂々としてていいんだぞ?』

  『え? 誇る?』


  『あぁ。まぁ、話せる内容ではないかもしれないがな。とはいえ、まあ、オレも気恥ずかしく思う、そんな性格は似ていて気持ちはわかるけど……人のことは言えないわけだけど……マコトのこれからのことを考えるなら、もっと誉められ慣れてたほうがいいのかもしれんな?』


  『う、うん……そうなの? ……でも、ほかのいろんなことを知らないから、正しいかどうかも判断つかないし、マコだけ他の人と違ってるって思われそうで、堂々とするにはまだちょっとね……そ、それに……』


  『一つや二つ違うのなん……』

  『うーん……パパ? たぶんそれ全部違うと思う。今日は新入生挨拶のイベントで暇がなかったから、他の誰とも話せてないけど、時折聞こえてくる会話の内容がさっぱりわからないし……ととと……』


  『それは当たり前だろ。知り合いほとんどいないはずだし、日本を暫く離れてたから流行り廃りはわからないしな?』

  『違うんだよ、パパ。そういうのじゃなくて……』

  『って、なんだ? 他に何かあるのか?』


―― うーーっ。 なんだか丸裸にされていってるみたい……むっちゃ恥ずっ……


  『あ、うん……そう……幼稚園の頃の話なんだけど、なんか皆、話している次元が、まるで違っているみたいで……なかにはただ幼すぎてって子もいるけど、そういう物心が付く前の子どもたちじゃなくて……いや? それも少しは含むかな? でもその多くは、物心は付いてきてるのに分別が全くついていない子どもたち、というのかな? なんか独特の、その子に都合の良い世界があるみたいで……みんながそうならまだいいんだけど、そんな子はごく一部。親が金持ちか何かで、偉そうな力でもあるのか、それを傘に着た、もうむちゃくちゃ横暴なのが少しいて、それ以外はそれに従ってる取り巻きさんみたいで、別の無垢な子どもたちや気弱な子どもたちを無理やり従わせたりしてる。その子たちの親も口出しできずにいたみたい。あれはイジメだったのかな? 明らかに理不尽なことを言ってるのにそれがまかり通っているのね?』

―― なんか当時の情景が脳裏に蘇ってきた……涙出そう……。


 つらつらと昔あった出来事を語りだしたマコト。一息ついて再び言葉を連ねる。


  『マコはそんなの許せないから口出しするけど、まったく伝わらなくて。すると今度はマコに嫌がらせをしだしたり、終いには、その横暴な子だけじゃなくて、まわりの子たちがひそひそと話しだしたと思ったら、マコからは段々遠ざかっていくし、嫌がらせが増えてきて、あまりに酷かったからカッとなって怒ったら、(ひる)んで転んだのか、自分で勝手に怪我をして、何をどう説明したのか、それがマコのせいになって、今度はその親たちがアレコレ言い始めて……その子たちの勝手な意見がすべてで、その親からは、マコが一方的に悪いような言われようになるし、何をどう考えたら……理不尽に染まりきった状況でしかないのに、マコの言葉は誰にも届かない……もうこの子たちの世界はなんなのって。……マコは何をどう考えればいいのかがさっぱりわからなくて……イルやパパたち、よく知ってる良識のある大人なら、安心して会話できるのに……マコの同い年以下の子どもたちだと……何を言っても、マコの言葉は伝わらないどころか……相手に引かれるばかりで……S国ではそんなことはなかったから、やっぱりこういうのは日本だけなのかなぁ』


 そのときのこと、状況を思い起こしながら、言葉に綴ってみたマコトは、言い足りていない言葉を付け足す。


  『ううん違うな。もしかしたら、何を言ってるのかさっぱりわからない外国人みたいに見られたのかなぁ……あれ、でも、ちゃんと日本語で話しかけたよね。うん、間違いない。いや、当時は日本語しか知らなかったから当然なんだけどね。まぁ、今でこそ金髪だけど、あの頃はまだ黒髪だったし、それにそれがきっかけだったのかな? そのまま日本を離れてうやむやになった感じだけど、マコの心、日本の子どもたちへの印象は沈んだままなんだよね。だってあのとき、マコの耳は良すぎるせいでしっかり聞こえてたんだ。子どもたちもその親たちも、コソコソとマコが間違ってるみたいな陰口ばっかり……輪から弾かれるあの感覚……それが怖くて怖くて……自分の判断は間違っていない、って今でも思ってるけど、あのときの子どもたちにはマコの言葉が何一つ伝わらないばかりか、なんか怖いイメージを持たれたようにも思えた。日本語も間違えてないと思うけどなぁ……マコの振る舞いの何かが間違ってたのかなぁ……あの幼稚園での事件から、マコはたぶんトラウマになってるっぽいの。こういうのたぶんコミュ障って言うのかな? 入学式のときみたいに子どもも含めた大勢相手になら、常識っぽいそれらしい言葉を並べ放つことはできるけど……1対1の子どもに話しかけるのはたぶん無理じゃないかと……ちょっと……ううん。凄く怖いんだよ』


 すると、それを静かに聞いていたソフィアが差し込む。


  『そっかぁ。あのときのことでマコちゃはそんなにも……』


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