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Jet Black Witches  作者: AZO
4−3.萠動編 − 暗躍のうねり
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天天ちゃん 〜 暗躍のうねりⅻ

 蜂の羽音の正体が何なのか。マコトのおぼつかない説明に全く要領を得ないイルだった。マコトはふと助け舟をくれる適任者を思い当たる。


 『ん? どうした? え? マコトそれ、もしかしてダイナビー? ちょっとちっちゃいけどもしかしてオーラで造ったのか?』


 名指しされたジンは、索敵(見張り)を中断し、マコトの手元を見ると、よく知るもののミニサイズ版がそこにあることに驚きを返す。


 『あ、そーそーそれ! 確かそんな名前だったぁ。ダイナビー。そーそー。本物はマコの手には大きすぎたから、試しにね。そしたらなんとなくのができちゃった』


 ジンの参入で、一挙に話が進んだようだ。その内容や本質的説明も大事だが、まずは名前だと、マコトはハッと気付かされる。


 そしてすぐにそこを突っ込むイルだった。


 『もー、マコちゃん! 名前や理屈とその説明は大事だよ? もーコレだから天才はぁ』


 『あははは。でも天才とかとは違っててマコがただおバカなだけなんだよね』


 そんなイルとマコトのまどろっこしいやり取りはさておいて、ジンは別の気掛かりが芽生えたようで、それをマコトに尋ねる。


 『で、マコト。今筋トレしたいわけじゃないと思うんだが何か作ろうと? まさかジャイ……』

 『ピンポーン! 流石パパだね。そー、そのジャイロともう一つ……』


 似た者同士なのか、一言や一目見たなにかで、ジンとマコトの間では、話がどんどん進んでいく。


 『あー、なるほど今から空の領域だから……姿勢指示器、|AI《Attitude Indicator》でも作る気なのか?』

 『あー、AI《Attitude Indicator》、そうそう、AI(エーアイ)って名前だったね。それ作りたいんだけどなんか難しそうで今は作れそうにないかな〜。いったんジャイロ? だけ作れたらいいなぁって。ジャイロプリセッションだっけ? アレ考え始めると頭がこんがらがっちゃって……えへへ』


 イルの場合と違って、話が弾むように、次から次へと単語や話題が紡がれていく。


 『おー、なるほど。確かに。ジャイロがあるなら、雲の中や暗闇でもパニックにならないと思うから安心感半端なさそうだな?』

 『でしょ?』


 気質の類似性もあるが、これまでの経験が互いに重なるのだろう、話の筋には二人しかわからないこれまでの経緯(いきさつ)も大きく絡んでくる。S国からの帰国便、機外で共に空中を駆け回った記憶が二人の脳裏には浮かんでいるようだ。


 『でもよく作ろうと思ったな。というかよく作れるな。高速回転を得るのにダイナビーなんだな? でもその回転を安定して継続させるのは難しそうだけど』


 『えへへへ。回転軸は普通、ボールベアリングってやつ使うんでしょ? でもそんな精巧なの作れそうにないから、軸を接触しないように魔力で保持。それと空気抵抗が問題そうだから空気入らないように真空の中で回転するようにしてみたんだよ。接触しないなら軸部分が多少(いびつ)でも問題なさそうだし……そしたらほら? ……ずっと回り続けるようになったみたい?』


 今度はモノ作り的経験談に花が咲く。もうすっかりモノ作りオタク同士の会話に拍車がかかる。すると、そのマニアックな取り組みを聞かされたジンは、驚きながらマコトに賛辞を贈る。


 『おー。なるほど。マコトはやっぱり凄いな。この天才め!』

 『あははは。もー、パパまで言う? 力が使えることのアドバンテージが他の人よりあるだけで別に天才なんかじゃないよ』


 この二人の相性は抜群なのかもしれない。置き去りにされ、会話にちっとも絡めないイルは二人のキャッチボールをただただ目で追いかけるしかないようだ。


 『いやいや。その発想に辿り着く部分が既に称賛に値するよ』

 『そ、そぉ〜お? でも褒められたのなら嬉しいな』


 止まりそうにないこのキャッチボールにいい加減痺れを切らしたイルは、割り込んで説明を求める。


 『待って待って待って! さっぱりわかんないよ。ジャイロって確か姿勢安定制御なんかに使われる技術だったと思うけど……さっきのダイナビー? からAI(エーアイ)? プ、プリセッション? もー、何もかもがチンプンカンプンだから全然繋がらないよ!』


 その言葉を聞いたマコトは、やっと自分の主張が理解してもらえる場面だと、ニコニコしながらイルに返す。


 『あは。でしょ? だから説明が面倒臭そうって言ったんだよ?』

 『あー。確かに。それに説明されても余計に混乱しそうだわ』


 このマコトの言葉には、流石のイルも納得しか返せなかったようだ。


 『まぁ、ともかく高速回転を生み出す玩具(おもちゃ)? 筋トレグッズ? があって、その回転でジャイロ装置を作って、空中の姿勢維持に使うんだ。あれ? マコってば、なんかうまく説明できてるっぽいんじゃない? イル』


 すると、言葉足らずではあるが、なんとなくの名前を並べ立てられたマコトは、瞳を煌めかせながらドヤ顔でイルに返す。


 『あー。うん。確かに。さっきのよくわからない説明を聞いた後だからかな? 途中の小難しい何かはあった前提で、ともかく高速回転でジャイロね。一応上っ面だけなら理解したかも』


 ようやく取り付けたイルの肯定の反応に、嬉しさのあまり、マコトは瞳を見開き、頬につられて口も大きく開く。しかしすぐに我を取り戻し、コホンと一つ咳をして何事もなかったかのように淡々と返す。やや唇を(うわ)つかせながら。


 『さすがイル。理解力半端ない! 伝わったようで良かったよ』

 『もー。全然理解はできてないよ。ただなんとなく納得した気でいるだけよ』


 そんなところへ、不意にソフィアが賛辞とともに理解の旨を差し込む。


 『マコちゃ? やっぱりあなた凄いわね。概ね理解できたわ』

 『え? ママわかったの? ひょえぇぇ〜。普段似たような話を交わしてるパパが理解を示してくれるのは自然ともいえるけど、こんな断片情報を話されたって普通はわかんないはずなのに……ママって、やっぱり凄いんだなぁ』


 イルとの理解共有に難儀したマコトだったから、ソフィアの理解力に驚きが止まらない。


 『あはは。一応これでも飛び級で16歳にして大学まで行ってたし、物理も苦手ではないからね。それに私だってセスナくらいなら操縦したことあるのよ? ふふふふん』

 『な、なるほど……って、え? ママも飛行機操縦できたんだ。は、初耳だよ!』


 既に聞いたことはあっても、飛び級で大学、しかも16歳。何度聞いてもなんとも説得力のある言葉、とマコトが思っていたら、憧れのパイロット、飛行機の操縦の話まで飛び込んでくれば、驚き度合いはとたんに跳ね上がる。


 『ふふっ、王室の嗜みってやつかしら? ライセンスは無いけどね。で、マコちゃ? それどうやって使うのかもあるけど、何か使える形のものが出来上がるってことね? 私も欲しいわぁ、それ』


 『あ、ママも欲しいのね? わかった。パパのは当然作ろうと思っていたけど、ママのも作っとくね。で、使い方はどうするのかってことだけど、今はこんな感じ? 3つのジャイロをまとめて頭にベルトで装着する感じ? それと、も一つ。最初の始動や回転が落ちたときに、回転を伝えるためのダイナビー? もセットかな?』


 『おー。凄いわねそれ。今のマコちゃなら、大学飛び級で入れそうなくらいよ?』

 『え? まだ小学校入ったばかりだよ? それに理屈をまったく説明できないから無理だよ。それにそれに、魔力なんてどう説明するの?』


 『あら。それもそうね。でも将来が楽しみね』

 『あははは。どうなるんだろうね。マコの未来。そんなに凄いことだった?』


 共に同じ時代の未来を控えるイルが食い付き気味にコレに反応する。


 『マコちゃん。凄すぎだよぉ! またマコちゃんの背中が遠くなった気がするね。細かな理屈? あー、じゃないね。言葉の説明じゃなくて、実際にやってるところを後で見せてもらいながら教えてね? あとは私のほうで調べて理解するから大丈夫』

 『はは。イルにはいつも苦労をかけます!』


 『ホントよ。マコちゃんってば、まったくもー。天然の天才ちゃんなんだから』

 『だから、違っ……』


 一度は否定した言葉がダブルで復活しそうになるのを慌てて否定するマコトだが、そんな反応の面白さを横目に、被せるようにイルが追撃する。


 『もう愛称(ニックネーム)天天(てんてん)ちゃんでいいかな?』


―― ふゎぁ……


 イルの愛らしい声質に包まれたその呼称の響きの可愛らしさに一瞬心を(くすぐ)られるマコトだった。


―― って! それってマコのこと?


 しかし、それが自身に向けての呼び名であることに気付くと、途端に恥ずかしさが極まり赤面しながら制止を呼び掛ける。


 『いやー、()めてぇ……あ』


 と、そのとき同時に動かしていた手作業がちょうど一段落することに気付き、誤魔化すべく話題転換を図るマコト。


 『ひとつでけた。まだ試作品だからわかりにくいかもだけど、はい。パパに渡すね』


 『おう。マコトありがとう。さっきのマコトの所作を見てたから多分大体わかると思うけど、後から不明点があれば質問させてもらうよ』

 『わかったパパ』


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