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Jet Black Witches  作者: AZO
4−3.萠動編 − 暗躍のうねり
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蜂の羽音 〜 暗躍のうねりⅺ

 動物っぽい何かのオーラを捻り跳ばしてしまったマコトは、その相手を怒らせたかもしれないとやや怯み、またしでかしたと(へこ)みかけていたところを、ソフィアたちの擁護の言葉でひとまず気を取り直せた状況だ。


 粗方(あらかた)、話の(くだり)が落ち着いてきたのを見計らってか、話しながら、その途中からマコトは下を俯き、なにやらゴソゴソと弄り始める。


 (カチャカチャカチャ……シュンッ……シューー……)


 ソフィアはさらに擁護の言葉を重ねる。それとは別に、どうやら他に気がかりがあるようだ。


  『だから気にすることはないわよ。でも……さっきの話聞いてて、ちょっと気になるのは、それが人間じゃないかも? ってことね。まさか動物を兵器転用してる? でもそんな特殊能力を秘めた動物っているのかしら?』


 (……ギュン、ギュン……beee……)


 手元では別のことをしていても、キチンと話を聞いていたマコトは兵器というワード、そこから連想される何かに心を寄せる。


  『え? 兵器転用? そんなぁ。可哀相過ぎる』


 マコトの心配そうな表情をよそに、ソフィアは現実的な問題に着目する。まだ動物かも、仮にそうだとしてその種類もわからなければ、姿さえ思い浮かべられないからか、関心は薄そうだ。


  『まぁ、それはこの際どっちでもいいけど、もしも動物ならさっきのルールがわかるわけないから、怒っちゃった可能性も否めないわね』


 (……beee……ギュン、ギュン……)


 動物の感情というのなら、マコトには経験的に思い当たるものがあった。


  『えーと、もしも動物で怒ってたのなら、それなら大丈夫。たぶん。そんなに可哀相な境遇なら余計だね。次に向かってきたなら、優しく(いたわ)ってやらなきゃ』


 (……beee……)


 『ん? (いたわ)る? マコちゃは何か方法を知ってるのね?』


 マコトは、人だけでなく、生きるものの纏うオーラを視ることができる。そしてそのオーラの表面には感情の起伏が表れるのだとか。


 『あ、うん。S国に居たときに、遠くからだけど、苛立ってる猛獣を(なだ)めたことがあるよ?』


 猛り狂う猛獣のソレは、毛と同様に逆立つらしい。マコトは自身のオーラを伸ばした触手のようなもので優しく撫でてあげることで、逆立ちも凪いでいき、その気持ちよさにしだいに怒りも収まるのか、そのときは気持ち良さそうに眠りについたらしい。言葉は通じないが、マコトの(いたわ)る想いは言葉以上に伝わるのかもしれない。


 『あら。凄い経験してるのね。危なくなかったのね?』

 『え? マコちゃん、そんな経験があるんだ。危険は……あ、そうか。そこでオーラで探知するってことかぁ』


 (……beee……ギュン、ギュン……)


 『うん。そう、それ。大丈夫だったよ。離れた安全なところからだし、動物って言葉は交わせなくてもちゃんと感情を持ってるからね。』


 マコトの考えや行動には、いつも何か驚きが潜んでいることをイルは知っている。これまで何度も驚きを重ねて、親友としてかなりわかっているつもりだったが、またも新鮮な驚きが次から次へと飛び出してくる。もう驚きがあることには驚かない、マコトは規格外なのだと括ることで、平静を保ちながら驚いてみせるイルだった。


 そして驚きはするが、置いて行かれないよう、記憶と判断が追従するよう、驚いたその中身の咀嚼にイルは余念がない。その脳機能の貴重な演算能力は、今日もそんな余計なものに費やされるのだった。


 『へー。驚きだね。マコちゃんのいう繋がるって、動物まで含まれるのか。あれ? そういえばマコちゃんと初めて出会ったときも動物が危険かどうかわかるって言ってたような記憶が……あー、そうね、なるほど。うんうん、なるほどなるほど……』


 またひとつ咀嚼が完了し、心の安寧が保たれたことに落ち着きを取り戻すと、ふと周囲が気になるのか、イルは辺りをキョロキョロと見回し始める。


 (……beee……)


 『だけど、確かに大通りから離れた山奥や平原は危ないっていうよね。街にいれば猛獣なんて誰かが直ぐに気付いてなんとかしてくれているのか、いつもだいたい安全だし、そもそもイルは人気(ひとけ)のないところにはなるべく近寄らないようにしてたからってのもあるのかな。一度も遭遇することはなかったなぁ……って……さっきからずっと気になってたんだけど……』


 話しながらも、イルはアチコチに視線を飛ばしながら、気掛かりの方向を炙り出そうと、どちらかの片手を被せた片耳を向けて確かめては、消去法で包囲網を狭めていった。その結果、予想はしていたが、やはりその大元は眼の前のマコトである、という答えに行き着いたため、ようやくそのことを問い質すことにしたイル。


 『ん?』

 『騒音にこっそり紛れてうっすら聞こえてくるこのビーって音、何?』


 突き詰めるようなイルの問いかけに、手元をちらりと見ると、ゆっくり視線だけでイルを見上げながら、少し困ったような表情で返すマコト。


 『ん? あー、うん』

 『マコちゃんの手元のそれ。どうもそこから聞こえて来てるような……』


 悪いことをしているわけではないが、問われた回答の言葉がすぐには見つからないマコトだった。適切な言葉を探すようにゆっくりと視線を上へ、さらには斜め上の空間へと滑らせるが、やはりうまい説明が見つからない。マコトはひとまずそのものの目的の一般的な名前を返してみる。


 『あー、これねー。えーと……体力増強器具?』

 『え?』


 しかし、言った本人がしっくりこないことと、やはりイルの反応も鳩が豆鉄砲を食らったような素っ頓狂な表情だったから、マコトは少し異なるざっくりなカテゴリ名を返してみる。


 『あー、違うかな? 玩具(おもちゃ)?』

 『ええ? どっちなの? ていうか、その2つとも何にも関連性なさそうだけど、それよりそれより、なんで今なの?』


 素朴にわからない表情をされても、マコト自身が良い説明を見つけられないことにはどうしようもない、そして今である理由などを問われても、これまた説明するのは難しそうだと、マコトはほとほと困り果てる。


 『あははは。説明ムズいなぁ……』

 『あー、もったいつけてぇー』


 釈然としないマコトの返しに、痺れを切らし気味のイル。マコトもワザとではないことを伝えたいが、やはり良い説明が見つからない。名前を使った文章説明ができそうにもないなら、と今度はありのままの状態を伝えることを試みる。


 『ち、違う違う、説明するとちょっと面倒臭い感じなんだ。なんかギュンギュン手首が鍛えられる感じ?』

 『何それー、あははは。全然わかんないや……』


 余計にわからなくなってしまったイルは、マコトの説明のおかしさに思わず噴き出してしまう。


 『はっ! ……そーいえばマコちゃん、天然の天才肌だった!』


 そうして気持ちが緩んだところで、ふと我に返ったイルは、そういえば、とマコトという存在の特徴を思い出すのだった。


 『て、天然? 天才? いやいやどっちも違うし……これホントに特殊なんだってばぁ』

 『えー、ホントかなぁ』


 イルは要領を得ずな顔付きから、口を(つぐ)んでむぅっとジト目でマコトを見る。そんな見られ方に圧を感じていると、マコトはふと助け舟をくれる適任者を思い当たる。


 『ホントホント……。あ! そーそー! ……こーゆーのは……うん。パパ担当だね。大体マコに教えてくれたのもパパなんだし』

 『ん? どうした? え? マコトそれ、もしかしてダイナビー? ちょっとちっちゃいけどもしかしてオーラで造ったのか?』


 名指しされたジンは、索敵(見張り)を中断し、マコトの手元を見ると、よく知るもののミニサイズ版がそこにあることに驚きを返す。


 『あ、そーそーそれ、確かそんな名前だったぁ。ダイナビー。そーそー。本物はマコの手には大きすぎたから、試しにね。そしたらなんとなくのができちゃった』


 ジンの参入で、一挙に話が進んだようだ。その内容や本質的説明も大事だが、まずは名前だと、マコトはハッと気付かされる。


 そしてすぐにそこを突っ込むイルだった。


 『もー、マコちゃん! 名前や理屈とその説明は大事だよ? もーコレだから天才はぁ』


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