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Jet Black Witches  作者: AZO
4−3.萠動編 − 暗躍のうねり
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激おこプンプン丸 〜 暗躍のうねりⅹ

 相模トラフで息を潜めていたU国原潜の活動がにわかに活動を開始する頃、再び、マコトとイルの会話に戻る。


 『あー、うん……さっきさぁ……マコちゃん、相手のオーラ? 投げ飛ばしてたふうに聞こえたけど、アレ、こっちから仕掛けたことになってない?』


 『あ、あ、あ、アレ? あーーっ、そそそ、そうだよね。探りに来たのは向こうだけど、別にこっちを傷付ける感じじゃなかったかも? ででで、でもー、気持ち悪かったんだよー。うー、思い出しちゃったよぉ。うげうげぇ……』


 そんな慌てふためくマコトの様子だが、その懸命さに愛おしさを覚えながら、イルは同調しつつ見守りの苦笑いを零す。

 『あははは……』


 イルから不意に投げ掛けられた話題は、つい先ほどの気持ち悪かった出来事だった。マコトはまざまざと思い出しながらつらつらと言葉に落としていく。


 『あれ……人のオーラなのかなぁ? なんか動物っぽかったけど……だけど、確か咄嗟に思いっきり捻ってあげちゃったよね? 力がそのまま伝わったなら、もしかしたらひっくり返って激おこプンプン丸かも? あ、いや……もしや大ケガさせちゃった? あやぁー……ママァ、やっぱりしでかしちゃってた感がぁ』


 思い出すほどに歪むマコトの表情に釣られ、さらに同調の表情を深めるイル。


 少し前のソフィアとの話題、その重なりから、マコトはしでかしたかもな思いに至り、ソフィアに投げ掛ける。イルが(たしな)めるように同調の言葉を掛ける。


 『マ、マコちゃん? そうだよね。突然来たからね……イルには視えなかったけど、マコちゃんの言葉から察するに、よっぽど気持ち悪かったんだなぁって。でも大丈夫だよ、たぶん』


 ソフィアも不安そうなマコトに安心を説く。


 『マコちゃ? そーね。さっきも言ったけど、まぁ大丈夫よ。日本じゃ小学生くらいだと、好きな女子にイタズラでスカートめくりとかするらしいけど、それと一緒よ』


 『ス、スカート? ん? そ、そーなんだー。マコはあんまスカート履かないから、イメージ沸かないけど……そういえば、幼稚園のときそんな男子もいたような……でもそれと同じって?』


 『あー、恥ずかしいこと、嫌がることをしてきたんだから、そんな男子はほっぺたをバチーンと叩かれても文句は言えないってこと! マコちゃには視えたらしいけど、普通の人には視えないからって、勝手に触ってくるのは痴漢と同じだもの。法的に捕まっても文句言えないことよ?』


 『あー、そういう解釈ね。なるほど。良かった(ホッ)』


 不安な胸中にあったマコトは開きっぱなしの口をゆっくり息を吐きながらすぅーっと(つぐ)む。瞳をキョロキョロさせながら自身の頬辺りを見渡したあと、力を抜いてソフィアとイルの顔を見て、ようやくまぶたの力を緩めて仄かに笑む。見つめ返すとまたやんわり微笑み返す二人の笑顔がこそばゆく感じるのか、幾度となく視線を外しながら頬を緩め、ゆっくりと平静を取り戻していく。自身の不安な心に自然に寄り添ってくれたことが嬉しくも、幼さゆえに照れくささが隠しきれないマコトだった。


 場が落ち着いてきたところを見計らってか、今度はイルが尋ねる。


 『そういえばマコちゃん?』

 『ん? なぁに? イル』


 『さっきのマコちゃんの言葉の中で、げきおこ? ぷんぷん? まる? だったっけ? たぶん日本語だと思うから、なんとなく意味はわかる気がするけど、そんな言葉が日本にはあるの?』


 自然に受け止めながらも、初めて聞いたワードがなんなのかをイルは尋ねた。


 『そーそー、イルちゃも気になってたんだ。私もなんだろ? って思いつつも怒ってるのだと理解したけど、とっても可愛らしい響きよね? マコちゃ? そんな言葉、またアニメかドラマでやってたの?』


 それはソフィアも同様だったようで、マコトにその所以(ゆえん)を尋ねる。


 『あー、マコも知らなかったし、ふつーは誰からも聞かない言葉だと思うから、たぶんスラング? で、パパと秋葉原だったか水道橋だったかで、JCかJKの誰かが使ってた言葉が耳に飛び込んできたんだ。本当の意味は知らないけど、聞こえたまんまでなんとなくわかる気がするのと、マルって付くのが可愛らしくて頭にこびりついちゃったみたい?』


 日本語勉強中でもあるからか、マコトの言葉のあちこちから何か不思議な感覚を纏いながら(こぼ)れ落ちてくるようなワードに、イルは常々着目しているようだ。そして日本語の放つ美しさをじんわり噛み締めながら、それを袖にするように言葉を短縮したがる、そんな日本人の特性がかねてから気になっていたイル。ちょうど良い機会だと、思い切って尋ねてみる。


 『え? JCって、あー、JKが女子高生だって聞いたから、えっと女子中学生? 日本人って綺麗な日本語があるのに、すぐ縮めたがるよね? マコちゃん』

 『あ、そうそう。イルちゃもいいところに気付いたわね。たぶんメールとかの影響じゃないかしら? そうよね? マコちゃ』


 ソフィアも外国人として外からの視点で見える不可解さを感じ取り、自分なりの理由とともに尋ねてみた。


 『二人とも鋭い! そうそう。JKのオネーサンたちって、スピード感が重要っぽいよね。少し前まで流行ってたポケベルなんか、使える文字が少なすぎるのもあって数字で語呂合わせした短いやりとりを大量に繰り返すみたいだから、メールが使えるようになっても、略すのが当たり前みたい。それにデータ量が料金に跳ね返ってくるから子どものお小遣い的にも節約する意味もあるみたい』


 お小遣いが絡む説明は誰しも納得感を得られるようで、皆小さく頷きを繰り返す。すると思い浮かんだのはジンの姿で、そんな状況とともにイルは問いかける。


 『なるほどねー。あー、そういえばジンさんも覚えやすいとかで、よく数字の語呂合わせを作っては会心の出来なのかご満悦な顔してて、次のときには早速その数字を使った略記でメモしてるの見たよ?』

 『お、オレ? そうだっけ? ま、まぁ好きだけど、でもみんなそうじゃない?』


 唐突に話題を振られて、ジンは流すように返す。


 『あー、パパ好きだもんね、そういうの。でも日本人はたぶんみんな好きかも?』


 自分が弄られたようで、実は気を逸らしたかったジンだが、日本人の括りで返されたなら悪い気はしなかったようだ。急に花が開いたように明るい表情で返す。


 『だろ? そういえば日本のJKがチョベリグとか流行らせてた気がするけど、さっきの激なんとか丸? って、これから流行るのかもな?』

 『そうかもねー。可愛らしーしねー、激おこぷんぷん丸』


 流行るかもに同意を重ねながら、ジンのおぼつかない名称をそっとマコトは言い直す。


 『そうそうそれ。丸って、今だと船の名前によく使われているけど、昔の男の子の幼名でよく使われてて、有名なのが牛若丸とかだな』

 『幼名? だからかぁ。可愛らしさ漂うのは。でも牛若丸ってことはご先祖さま?』

 『あ、そういえばそんなこと言ってたな、シャナ。あ、遮那王も幼名か』


 シャナとは、ソフィアの遠いご先祖さまのことで漆黒の魔女の起源でもある。娘に自分の幼名から一部をとってシャナと名付けたらしい。そんな存在についてコトの詳細は不明だが、遠い過去の時間軸から念話のように語りかけてくる存在だ。


 『あ、バタバタしてたから帰国後まだシャナとお話できてない!』


 7年前のソフィアの民間航空機撃墜事件をきっかけにシャナとの会話が生まれ、特に1年ほど前のマコトの力が目覚め始めた以降、S国におけるソフィアたちの生活空間におばあちゃんのような語り手として自然に溶け込んでいた。


 『そのことだけど、精神波? テレパシーみたいなものなのかな? 日本は繋がりにくいみたい。魔女の里から離れすぎたのかしら?』

 『え! シャナとお話できないの?』

 『今のところはね。まぁ今度、方法は探っとくわ』


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