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Jet Black Witches  作者: AZO
4−3.萠動編 − 暗躍のうねり
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ゲロまずっ! 〜 暗躍のうねりⅴ

 一方、ソフィアサイド。V国ヘリが浮かび上がることを動向としてキャッチする。


「あら? ここら一帯にうっすらと張られている力とは別の何かが南東の方向? 海、それも少し沖かしらね?」チッ


 シエラにより、滞る流れが整えられ、本来の(まりょく)(みなぎ)る肢体を取り戻したソフィア。その魔力的感受性は、かつての能力をも遥かに凌駕するほどに冴え渡る。


 本来生まれ持つ資質がベストな状態とは限らないのだろうが、シエラによりきめ細かくチューニングされただけでなく、(まりょく)自体の干渉なのか、僅かではあるがシエラ自身に備わる流れを捉える力の根源のようなものまで伝搬したかのセンシティブな感知能力を発揮できるほどに進化していた。


 そんなソフィアが捉える、発進直後のV国ヘリの兆候を、その漏れ漂う波動の変化でシエラも捉えていた。


「ソ、ソフィアさま……いえソフィアさんも気付かれましたか? でもこれはなんなのでしょう? ちょっと異質な波動? というか、何かの生き物の脈動のようなものを感じますね。なんか暗〜い、ねっとりとした感じ?」チッ


「あら、シエラさんもそう言って……」チッ


 ソフィアが言いかけたところにマコトの念話が飛び込む。


 『わゎゎっ! 何これ? うぇぇー。ペペペペッ……コレも誰かのオーラなの? ウゲッ、ゲロまずっ!』


 マコトは目を固瞑(かたつむ)りして、舌をべぇーっと出すと、違和感を払いのけるように舌を丸めてぺぺぺっと吐き出す素振りを見せる。眉をしかめ瞳をひそめながら、味覚で感じたかの不快感を(あらわ)にする。


 『え? マコちゃまで……って、オーラって、味がするの?』


 『え? あ、味? あれ? そう言えば……味はし……ないのかな? うーん。でも見るからに気持ち悪い色だもん。オーラって、何でもすり抜けるでしょ? でもオーラ同士もすり抜けはするけど、何かしら感触があって、なんかさっきのアレ、ゾワゾワって悪寒が走るし、それが今、マコたちの中、特に顔に向かってきたらさぁ、ペペペペッ、ってならない?』


『え? マコちゃにはそのオーラ、直接視えるのね?』


 オーラが視えるらしいマコトの発した言葉に沿って、自身の体感とともに感じる気持ち悪さのイメージを自分の顔に重ねてみるソフィア。


『私が感じたのは、まさかの触れてた……ってこと?』


 と、途端にマコトと同じ感触を想像して、脳内がそのイメージで溢れかえる。するとその一瞬で舌の触覚味覚までが例えようのない嫌悪感に絡め取られる。ソフィアは何が何でも突き放したい衝動に駆られ苦い顔つきに変わる。


 『うわぁ……ペペペペッ……って。うーーん。確かに……』


 『でしょ? 良かったぁ。そうだよね、そうでいいんだよね?』


 そんなソフィアの反応を目の当たりにできたマコトは、自身の感覚と思わず取ってしまった自身の反応が間違いではなかったことに安堵し、細めた目を寄せ俯きつつ、息を漏らしながら返した。


 苦い目つきで急ぎ口を腕で拭う素振りのソフィアは、気持ち悪さへの理解を心に収めながら、もう一つの引っかかりをマコトに返す。


 『それよりマコちゃ? そんな汚い言葉、どこで覚えたのよ。はしたないわよ?』


 それはマコトの反応ではなく、マコトの言葉遣いにフォーカスした指摘を返したのだった。マコトはうっかり感を漂わせながら補足する。


 『あ! エヘヘ。アニメでJKキャラが使ってた……まさに今がその使いどころなんだろうね。たぶん。自然に出ちゃったみたい』


 『はぁっ……そう……まぁいいわ。でもそうよね。そう言えばマコちゃとジンは、オーラでレーダーみたいな試みをやってたわよね?』


 以前にマコトから聞いていた、紐状のオーラで時計の針のように周囲に回転させ、それが相手のオーラと接触するときに、そのオーラの状態を読み取るというものだ。


 その逆方向の接触行為……マコトのようにそれが視えたのなら、そして自らも触れる力を有し、しかも気持ち悪いものと認識しているのなら……そんな状況にある愛娘の心情が浮き彫りのようにソフィアの心中に沸き起こる。


 『あら? でも、ちょっと待って! そんなに嫌がるものが接近してきたわけだけど、嫌だったら、マコちゃが何もしないわけはなさそうな気が……』


 するとマコトは、あっけらかんとした表情で返す。


 『うん。ポイッと。反射的にオーラで(くる)んで放り投げちゃった』

 『え?』


 ただでさえ、敵のレーダーと思しきオーラに触れたなら、こちらの所在が知られてしまった可能性に繋がるのだが、それでも自分たちであることは、まだ特定されるには至らないはずと思える。


 しかし、そんな敵のオーラに仕掛けてしまったということは、即ち「あなたたちの求めるものは、ほら、ここよ?」っと自ら教えているようなものでもあるわけだ。


 ソフィアの心には、しまった感が芽生えるわけだが、今は敵を惹き付ける必要があるのかもしれない、という考えと……。


 『あ、マズかったかな……あまりにも気持ち悪かったし……つい』


 愛娘の零す、そんな気持ち悪さに晒された心情を慮ればこそ、致し方なし。と、半分は納得しながらも、心に残る驚きと動揺を引きずりながら返す。


 『だだだ、大丈夫よ……』


 それを咎めるべくもない心持ちに次第に行き着き心も静まると、今しがたの心の迷いが濁した返事を振り返り、ふぅーっと息を吐きながらソフィアは娘の心情に寄り添う言葉を掛ける。


 『……気持ち悪かったんだもんね? 仕方ないわ』

 『うん!』


 屈託のないマコトの返事にただただ頬を緩ませるソフィア。娘の心情・尊厳を優先したことは、即ち敵に情報を与えたことを許容したに等しいが、既に起こってしまった結果として呑み込み、またひとつ娘の爛漫(らんまん)さを護れた喜びを噛み締める。


 そうしていると、それまで針路不定に思えた敵の行動が、指針をコチラに定めたかの変化を見せたことに気付く。


―― ……2次元で方向距離を捉えられるマコちゃほどではないけれど

―― アチラさんの放つオーラの波動のようなものが指す響きの強弱が……

―― こちらに向く頻度と流れる向きが……どうやらキャッチされたみたいね。

―― まぁ仕方ないし……何にせよ、そうじゃないと何も始まらないわけか。

―― よし! やるしかないわね。ジンの意向はどうなのかしら?


 ソフィアは過ぎたことは受け止め、それを踏まえた状況変化を前提に、今後の展開を予測して、つらつらと念話に綴っていく。


 『ということは……それに今感じるこの状態変化、ヤツらは気付いて、間違いなく真っ直ぐ……いや探りを入れるためか少し蛇行気味にも思えるけど、いずれにしてもこっちに向かってるわね。うーん。おそらくさっきのマコちゃの行動で、ヤツらは確信したと思うわ。ジン? 南東の方向から迫ってきそうだけどどう動くつもり?』


 念話からソフィアとマコトのやり取りは粗方掴みながらも口を挟むには至らなかったジン。

―― お? いよいよって局面なんだな?

―― 相変わらず状況も意向も要点だけだが、オレが動ける的確さ。

―― 流石ソフィア。応えなきゃだな。今採るべき最善は、っと……。


 いつも女子同士の感覚的なやり取りの速度にはやや遅れを取ることから聞き手に回ることが多いジンだが、行動を問われたなら、ようやく今が必要な場面と、瞬時に思考を凝らしながら口を開く。


 『お、マジか! オレにはさっぱり感じられないけど、マコトにソフィア……そう、シエラさんも言うならほぼ確定か……了解! そうだな、今のこの場所から遠ざけたいのと、陸地で何かあって被害が出るのは避けたいからオレたちも海上に出よう』


 状況の確度アップにより、今為すべきことの方向性が明確化したことから、ジンはインターフォンでパイロットに次の行動指示を伝える。


「パイロットさん? いったん、海、いや南か南西の方向に向かってもらえますか?」 チッ


 ジンの兄から受けていた作戦内容は白紙状態のままで、ジンからの指示待ち状態のややモヤモヤしていたパイロットだったが、ひとまずの指示を受けて心の芯に火が灯ったかのメリハリのある表情に切り替わる。


了解(Roger)、|南西へ向かおう《heading south west》……詳細な状況は何一つわかっていないが、君の指示に従うようにと聞いている。その後はどうするか、わかったら教えてくれ」チッ

「了解です。いったんは直進で。今、不明機が南東方向からこちらに向かっていると思われます。ちょっと相手の動向を見たいので、その後でお知らせします」チッ


 不明機のワードに眉根を寄せる機長。


了解(ラジャ)、ん? 何だ? 敵機でもいるのか?」チッ

「いえ、実は私もまだ何もわかっていないのですが、おそらくV国の何かが干渉してくることを予想しています」チッ


 詳細は不明でも、状況認識の確度が高まる機長の目は真剣味を帯び、何が起こるかはわからないまでも、今何ができるかの現状装備を共有する。


「そうなのか。この機体には武装はもちろん、レーダーすらも一切積んでいないし、あっても交戦など……そんな事態が起こるとは思えないが、いったんわかった。肝に銘じておくよ」チッ

「はい。ありがとうございます」


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