# 第二部 夢のその先へ ## 第一話 東京
# 第二部 夢のその先へ
## 第一話 東京
十二月。
吐く息が白くなる季節。
春山桜は、新幹線の窓から流れる景色を見ていた。
隣には高瀬。
向かう先は――東京。
全国新人アーティストフェスの事前打ち合わせだった。
「まだ信じられないです」
桜が呟く。
高瀬はコーヒーを飲みながら笑う。
「そのうち慣れるよ」
「慣れる気がしません……」
窓の外を眺める。
遠くに見える街並み。
たくさんの人。
たくさんの夢。
桜は少し緊張していた。
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東京駅。
人。
人。
人。
「多い……」
思わず声が出る。
高瀬が笑う。
「田舎者みたいな反応だな」
「いや、本当に多いですって!」
桜は迷子になりそうだった。
その時。
遠くからギターケースを背負った若者たちが歩いてくる。
みんな同じ方向へ向かっている。
フェス参加者だった。
全国から集まる新人アーティスト。
桜の胸が少し苦しくなる。
自分より上手い人ばかりだったらどうしよう。
自分なんて場違いじゃないか。
そんな考えが頭をよぎる。
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会場。
巨大なホール。
ステージを見た瞬間、
桜は言葉を失った。
「……大きい」
五百人どころじゃない。
数千人規模。
まだ本番ではないのに、
足が震える。
高瀬が小さく言う。
「怖いか?」
桜は正直に頷く。
「はい」
「よかった」
「え?」
「怖くなくなったら成長止まるから」
高瀬は笑った。
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打ち合わせ終了後。
桜はロビーで一人休憩していた。
すると。
「春山桜さん?」
声がした。
振り返る。
そこには同年代くらいの女の子が立っていた。
長い黒髪。
ギターケース。
人懐っこい笑顔。
「えっと……」
「やっぱり本人だ!」
彼女は嬉しそうに笑う。
「私、天城美月!」
桜は首を傾げる。
すると彼女は驚いた。
「えっ、知らない!?」
「ごめんなさい!」
「ひどい!」
大げさに落ち込む。
桜は慌てた。
その様子を見て、
彼女は吹き出した。
「冗談冗談」
明るい人だった。
「私もフェス出演者なの」
そう言って名刺を差し出す。
シンガーソングライター。
登録者数十万人。
桜は目を丸くする。
「すごい……」
「桜くんも十分すごいよ」
彼女は笑った。
「動画見たことある」
桜は固まる。
「え?」
「『今日を生きて』」
美月は少し真面目な顔になる。
「あれ、泣いた」
桜は言葉を失う。
全国で活動する人が、
自分の歌を知っている。
その事実が信じられなかった。
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夜。
ホテル。
一人の部屋。
窓から東京の夜景が見える。
桜はベッドに座りながら、
今日のことを思い返していた。
全国には、
すごい人がたくさんいる。
上には上がいる。
でも。
不思議と絶望はなかった。
むしろ。
もっと頑張りたいと思った。
もっと歌いたいと思った。
もっと届けたいと思った。
桜はノートを開く。
新しいページ。
そして書く。
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「遠くへ行くほど、
最初の気持ちを忘れたくない」
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それは歌詞の一節だった。
昔の自分。
駅前で歌っていた自分。
あの気持ちだけは、
絶対に失いたくなかった。
窓の外では、
東京の光が輝いている。
春山桜の夢は、
また少し大きな世界へ広がろうとしていた。
**第二話「全国のライバルたち」へ続く。**




