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扉の向こうは異世界でした〜平日は会社員、土日祝は異世界で冒険者(三年限定)〜  作者: みのり


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3/20

彼らは何者?

 軽く自己紹介を終えたあと、彼らはそのまま狼の解体に取り掛かると言った。


「よければ……解体、教えてもらってもいいですか?」


 俺がそう頼むと、リーダーのバレンは少し驚いたように目を細め、それからすぐに頷いた。


「おう、いいぞ。見て覚えろ。最初は誰でも分からねえもんだ」


 思っていたよりもずっと気さくな人だ。


 解体しながら、色々と教えてくれた。


 この狼はフォレストウルフ。どの森にも生息している一般的な魔物らしい。素材として価値があるのは毛皮と魔石くらいで、肉は食べられなくはないが美味くないため、よほどのことがない限り食用にはしないらしい。


「食い物が尽きた時くらいだな。わざわざ食うもんじゃねえ」


 そんなものか。


 一方、さっき倒した鶏に似た魔物――コカトリスはこの辺りにしかいないらしい。


 羽は貴族の婦人が持つ扇に使われる高級品で、あまり市場には出回らないとのことだ。


 肉については、貴族は基本的に食べない。平民の食べ物扱いらしい。しかもパサつきが強く、不作や戦時中くらいしか食べられないとか。


 ……鶏だよな、見た目。


 下処理をしっかりすれば、そこまで悪くはなさそうだが。


(まあいい。売れるなら売るか)


 そう割り切ることにした。


 解体が進み、売れる素材は魔法使いのミーナがマジックアイテムに収納していく。


 俺も同じことはできるが――初対面でそこまで見せる必要はないと判断し、コカトリスの素材も一緒に預けた。


 解体を終えると、バレンが周囲を見渡した。


「ここは血の匂いが残る。他の魔物が寄ってくる前に移動するぞ」


 俺たちはそのまま森の入り口付近まで移動した。


「ここまで来れりゃ安全だ。魔物は森の外には基本出てこねえ」


「理由は……分かってるんですか?」


「分かってねえな。そういうもんだって認識だ」


 森そのものが、何かの区切りになっているようにも思える。


(ダンジョンみたいな構造なのか……?)


 そんなことを考えていると、バレンが改めて口を開いた。


「さて、自己紹介の続きだな。俺はバレン。『鉄の斧』のリーダーで武器は見ての通り斧だ」


 見た目は無骨だが、世話好きな性格なのはさっきの解体でよく分かった。


「ハワード。剣だ。よろしく」


 短い。


 だが無愛想というより、単純に口数が少ないタイプだろう。整った顔立ちで、どこか近寄りがたい雰囲気がある。


「僕はルーカス。斥候で双剣使いだよ。よろしくねー」


 柔らかい笑顔。年下っぽい雰囲気で、距離感が近い。


「私はナターシャ。弓がメインだけど、短剣も使うわ。ルーカスの姉よ」


 なるほど、言われてみれば目元が似ている。落ち着いた物腰で、自然と頼りたくなる空気を持っている。


「ミーナ……魔法使い。よろしく……」


 ローブのフードを深く被った少女。声は小さく、人見知りなのがすぐにわかる。


 だが、解体の手際や魔法の扱いから、実力は間違いなく高い。


「助けていただきありがとうございます。俺はユキです」


 挨拶を交わしながら、俺は内心で考えていた。


 この移動中、彼らに鑑定を使わせてもらった。


 その結果――全員が“創造神の加護”を持っていた。


 さらにバレンには武神、ミーナには魔法神の加護。


(この世界で、加護持ちってどれくらいいるんだ……?)


 祖父の話では、神々は禁忌に厳しい存在だ。


 その加護を持つ彼らを、どこまで信用していいのか。


「で、お前。ユキだったな」


 バレンが俺を見据える。


「あの場所で何してた? あそこは新人が来る場所じゃねえ。お前、そこまで強くは見えねえが」


 核心を突く問い。


 隠し通すのは無理だろう。


 だが――そのまま話すわけにもいかない。


(……契約魔法、使うか)


 祖父から受け継いだスキルの中に、強制力のある契約があったはずだ。


「その話をする前に、一つお願いがあります」


「なんだ?」


「森の中に、家一軒分くらいの広さの開けた場所はありますか? そこで話したいんです」


 バレンは少しだけ考え、頷いた。


「……分かった。付いてこい。お前らは――」


「私たちも行くわ」


 ナターシャが言葉を引き取る。


「今後関わるなら聞いておくべきでしょう。それに、何かあっても全滅はしない」


 全員が同意した。


 数分後、開けた場所に出る。


「ここだ。ミーナ、結界を――」


「いえ、それは大丈夫です」


 俺は首から下げていた小さな立方体を見せた。


 そして――念じる。


『ログハウス展開』


 次の瞬間、目の前に家が現れた。


「……は?」


 全員の動きが止まる。


 当然だろう。


 俺でも逆の立場なら驚く。


「どうぞ、中へ」


 苦笑しながら促すと、彼らは警戒しつつも中へ入った。


「椅子が足りないので、適当に座ってください」


 女性陣は椅子へ、他の者は床や壁に。


 全員の視線が、俺に向く。


「まずはお詫びから」


 俺は頭を下げた。


「あなた達のことを、勝手に鑑定しました」


 空気がわずかに張り詰める。


「その上で確認させてください。あなた達が持っている“加護”とは、何ですか?」


 沈黙。


「内容によっては、この場で契約魔法を使います。この家のこと、そしてこれから話す内容を、決して外に漏らさないという条件で」


 空気が、凍りついた。


 当然だ。


 加護は基本、本人しか分からない。


 それを他人が見抜いた。


「……気づいてはいたが、そこまで見えるか」


 バレンが低く呟く。


「面倒な奴を助けちまったな」


「本当にね」


 ナターシャが静かに言う。


「あなた……大賢者の血筋ね。あの扉は封じられたはずだけど」


 その瞬間、何かに覗かれた感覚がした。


(……これが、鑑定される感覚か)


「あなた達は何者ですか?」


 俺の問いに、バレンは一度だけ息を吐いた。


 そして――


「俺たちは、この世界の“監視者”だ」


 静かに、そう告げた。

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