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扉の向こうは異世界でした〜平日は会社員、土日祝は異世界で冒険者(三年限定)〜  作者: みのり


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18/23

短い帰郷と、次の行き先

 ログハウスに着いた頃には、もう日が傾き始めていた。


 今日はさすがに色々ありすぎたな……。


 精神的にも体力的にもそこそこ削られていた俺たちは、早めに夕食を済ませ、そのまま休むことにした。


 ちなみに、じいちゃんとばあちゃんは寝る必要がないらしい。


 ――が。


「わ、私たちはまだ起きていますので……!」


「お気遣いなく」


 ララとナタリーがそんなことを言い出しかねないので、二人にはさっさと寝室へ行ってもらった。


 ……なんというか。


 相変わらず仲がいい。


 ああいう夫婦、いいよな。


 将来、俺もあんな関係を築けたら――なんて、少しだけ思った。


 ◇


 翌朝。


 朝食を終え、一息ついたところで、気になっていたことを聞いてみる。


「じいちゃんとばあちゃんって、なんでここにいるんだ?」


 俺の問いに、じいちゃんが軽く顎に手を当てた。


「もうこちらの人間でもないからな。向こうの決まりに従って、別の誰かに生まれ変わるもんだと思っとったんじゃが……気づいたらこの世界の天界におってな。しかも、そこに若菜もいたんだよ」


 横からばあちゃんがさらっと補足する。


「私も驚いたわよ? 元々こっちの人間でもないのにね」


 いやほんとそれな。


「なんでもね、地球は人間が増えすぎてるから、いらないなら連れて行っていいって言われたらしいの。創造神様が」


「……え、それアリなの?」


 軽すぎないか、その判断。


「まあ、あちらの事情もあるんじゃろう」


 じいちゃんはあっさり言う。


 スケールがでかすぎてよく分からん。


「じゃあ……父さんと母さんは?」


 少しだけ声が小さくなる。


「向こうで生まれ変わってるのか?」


 じいちゃんはゆっくり頷いた。


「わしらのように“地球の魂ではないもの”なら見つけやすいんじゃがな。あやつらは純粋な地球の魂じゃ」


「何年も経っとるし、もう別の誰かとして生まれ変わっとる可能性が高いじゃろうな」


 ……そっか。


 やっぱり、そうなるか。


「私はこの人が来るのを待ってたのよ」


 ばあちゃんが、隣のじいちゃんを見ながら言う。


「どうしても一緒に生まれ変わりたくて、無理言ってね」


 さらっと言ってるけど、それ結構すごいことじゃないか?


 何十年も一緒にいたのに、さらに待つって。


 ……やっぱり、この二人すごいな。


 少しだけ胸の奥が温かくなる。


 それと同時に、少しだけ寂しさも残る。


 父さんと母さんには、もう会えないんだろうな。


 でも――


 どこかで、ちゃんと生まれ変わって、幸せに生きてるなら。


 それでいいか。


 そう思うことにした。


 ◇


「ララ、ナタリー」


 気持ちを切り替えて二人に向き直る。


「創造神様から許可ももらったし、分かる範囲で聞きたいことがあれば話すよ」


 ララが少しだけ遠慮がちに口を開いた。


「その……もし可能でしたら、ユキさんたちが生活していた場所に、私も行くことはできますか?ユキさんが住んでいた世界を、一度見てみたいのです」


 やっぱり来たか。


 予想通りのお願いだ。


 ちらっとじいちゃんを見ると、小さく頷かれた。


 ……OKってことか。


「いいよ。でも今回だけな」


 自然とそう言葉が出た。


 たぶん――


 これ、何度もできることじゃない。


 根拠はないけど、そんな気がする。


「はい。それでも十分ですわ」


 ララが嬉しそうに微笑む。


 その表情を見て、連れていく判断は間違ってなかったと思えた。


 俺たちは扉を開き、日本の自宅へと向かった。


 ◇


「……ここが、ユキさんの世界……」


 ララが静かに呟く。


「思っていたよりも……落ち着く場所ですのね」


 意外そうな顔だ。


 まあ、派手さはないしな。


「懐かしいのう」


 じいちゃんが周囲を見回す。


 その時だった。


「……ん?」


 じいちゃんがふと空を見上げるような仕草をした。


「そろそろ戻った方がよさそうじゃな」


「え?」


「こちらの人間でもないわしらが長くおると、地球の神々が困るらしい」


 ……なんか感じ取ってるな。


 俺にはさっぱり分からんけど。


「じゃあ、あんまりゆっくりはできないか。ごめんな、ララ」


「いえ、十分ですわ」


 ララは満足そうに頷いた。


 滞在時間は一時間にも満たなかったけど――


 それでも、見せることができてよかったと思う。


 ナタリーはというと。


「もっと色々見てみたかったです……」


 完全に好奇心モードだった。


 まあ、あれだけ文化違えばな。


 ◇


 ログハウスに戻ったあと。


「さて、と」


 俺は軽く手を叩く。


「フィリオに頼まれてた鉱石、探しに行くか」


 目的を思い出した俺たちは、まず情報収集のためにラーズの街へ向かった。


 冒険者ギルドで受付嬢に声をかける。


「アリーネ王国のラスターネまでこれから行く予定なんですけど、道中何か変わったことがあれば教えてほしいんですが」


「ラスターネの街ですね」


 受付嬢は手際よく資料を確認する。


「最近、国境付近で長雨が続いておりまして、土砂崩れが複数発生しています。それ以外は特に大きな問題はありません。魔物の出現も通常通りですね」


「なるほど。そこまで行くのに、どれくらいかかります?」


「最短ルートで国境の街まで七日、そこからラスターネまで十日ほどです。ただし、土砂崩れの影響で遠回りになる可能性があります」


 ……最短で十七日か。


 思ったより遠いな。


「ちなみに、四ヶ月くらいの長期依頼ってあります?」


 一応聞いてみる。


「四ヶ月はさすがにありませんね。長くても二ヶ月ほどです」


 短いな。


 となると――


 今回は見送りだな。


「じゃあ依頼は受けずに行きます。また戻ってきたらお願いします」


「かしこまりました。お気をつけて」


 ギルドを出ると、すでに昼を少し回っていた。


「少しでも進むか?」


 そう言いかけたところで。


「その前にじゃ」


 じいちゃんが口を開く。


「ログハウスのさらに先に湖がある。そこへ行ってみんか」


「湖?」


「何かあるのか?」


「行けば分かる」


 じいちゃんは少しだけ意味深に笑った。


「おそらく、お前たちの役に立つものじゃ」


 役に立つもの、ね。


 ちょっと気になるな。


「距離は?」


「一時間ほどじゃ」


 ……それなら寄り道としては悪くない。


「よし、行ってみるか」


 こうして俺たちは――


 まずは謎の湖を目指すことになった。


読んでいただきありがとうございます!

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