表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
扉の向こうは異世界でした〜平日は会社員、土日祝は異世界で冒険者(三年限定)〜  作者: みのり


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

16/21

神と祖父が同時に来たんだが

 王都を出てから、数時間。


 日が傾き始めた頃、俺たちは街道を外れた。


「この辺でいいかな」


 周囲を見渡す。人の気配はない。


 少し進むと森があり、そのまま奥へと足を踏み入れる。


 ……運が良かったのか、魔物にも遭遇しなかった。


「ここまで来れば大丈夫だろ」


 足を止める。


「これから転移魔法でフィリオの家まで移動する」


「――転移魔法!?」


 ナタリーが、明らかに動揺した声を上げた。


 ララも目を見開いている。


 ……あれ、そんな反応する?


「そんなに珍しいのか?」


「珍しいどころではありません」


 ナタリーが即答する。


「現在、使い手はいないとされています」


「へぇ……」


 横から奏太が口を挟む。


「ユキが普通に使うから、誰でも使えるもんだと思ってた」


 それな。俺もそんな感覚だった。


「私は魔法を使えないので伝聞になりますが……」


 ナタリーは少しだけ考えてから言葉を続ける。


「魔力消費が膨大すぎて実用不可能だと言われています。王国魔法省の長でさえ、扱えないと」


「マジで?」


 奏太がこっちを見る。


「ユキ、お前どんだけ魔力あるんだよ」


「さあな」


 肩をすくめる。


「計ったこともないし、転移しても減った感じしないし」


 その瞬間。


 ナタリーの目が、きらっと輝いた。


「……それはぜひ一度測定を」


 食いつきがすごい。


「王都の教会か王城で正式な測定が可能です。冒険者ギルドにも簡易的なものはありますが――」


 一拍。


「恐らく壊れますのでおすすめしません」


「壊れるのかよ」


 思わずツッコミが出た。


「……気が向いたら測るよ」


「ぜひ」


 即答だった。


 この人、思ったより研究者気質だな。


「じゃ、行くぞ」


 話を切り上げる。


「フィリオのところなら安全だし、そこでゆっくり話せる」


 魔法を発動する。


 視界が歪み――


 次の瞬間、見慣れた部屋に立っていた。


 ◆


「ここがフィリオ様のお宅ですの?」


 ララがきょろきょろと辺りを見回す。


「正確には、工房兼自宅だな」


「部屋を間借りしてる形だよ」


「多分、工房か店にいるはず」


 そう言って部屋を出て、店の方へ向かう。


 すると――


 カウンターの向こうで、フィリオが剣を磨いていた。


「フィリオ、今王都から帰った」


「ん?」


 顔を上げる。


「……なんだ、人増えてるな」


 そして、にやっと笑った。


「そっちのお嬢さん方は、ユキとソウタの嫁候補か?」


「ちょっ!?」


 奏太が即座に反応する。


「フィリオさん!?冗談でも言っていいことと悪いことがあります!」


 必死すぎてちょっと面白い。


「この人達は俺の嫁候補じゃないですからね!?」


 琴音の存在を気にしてるな。


「そうなのか?」


 フィリオはあっさり引いたかと思えば――


「じゃあユキが二人まとめて嫁にするのか。頑張れよ」


「やめろ」


 即答した。


「嫁は一人でいい。というか二人もいらん。というかこの国、一夫多妻ありなのか?」


 ついでに聞く。


「ああ、ありだぞ」


 フィリオはあっさり答えた。


「養えるだけの財力があればな」


 ……無理ゲーじゃん。


 平民じゃ相当厳しいだろ、それ。


「なるほどな……」


 とりあえず流しておく。


「で、真面目な話」


 一歩前に出る。


「こちら、この国の第二王女殿下――ララティア様と」


「護衛兼侍女のナタリー」


 軽く紹介する。


「色々あって、一緒に行動することになった」


「色々って何だよ」


 フィリオが眉をひそめる。


「王女様連れ出して大丈夫なのか?」


「王妃陛下が許可した。多分、国王陛下も。今日、城の門で待ってたし」


「……了承済みか」


 フィリオが腕を組む。


「それならまぁ……いいのか?」


 微妙な顔してるな。


「で、何があった?」


 俺は王都での出来事をざっくり説明した。


 ララとの出会い。


 そして――


 伴侶候補の話。


「……王女様がお前の伴侶、ねぇ」


 フィリオが小声で呟く。


「お前、いいのか?」


 視線が鋭くなる。


「決めかねてる最中だろ」


「……」


 痛いところ突くな。


「断ろうとはした」


 正直に答える。


「でもな、王族相手に“絶対無理です”は言えないだろ」


「情けないな」


 即答だった。


「同じ男として悲しいぞ」


「うるさい」


 ため息をつく。


「で、本題」


 軽く空気を切り替える。


「この二人にも、俺たちのこと話そうと思う。いいよな?」


 フィリオを見る。


「……なんで俺に聞く?」


「いや、だってお前――神様だろ?」


 当然のように言う。


「創造神様との連絡手段知らないし」


「……あー」


 フィリオが額に手を当てた。


「そうだったな。教えてなかったか」


「ちょっと待て。今聞く」


 そう言って、店の奥へと消える。


 ララが不思議そうに首を傾げた。


「フィリオ様はどちらへ?」


「ああ、ちょっとな」


 言葉を選ぶ。


「俺たちがここに来たことを、ある人に伝えに行った」


「許可が必要な話なんだ」


「……そうなのですね」


 完全には理解していない顔だけど、納得はしてくれたようだ。


 近くの椅子に座るララ。


 ナタリーは静かに周囲を警戒している。


 さすがだな。


 しばらくして、フィリオが戻ってきた。


「すぐ来る」


「ちょっと待て」


「……来るのか?」


 思わず聞き返す。


「ああ」


 即答だった。マジか。


 数分ほど、店先の武器を眺めながら待つ。


 そのときだった。


 ――来た。


 気配が、二つ。


 一つは、何度か感じたことのある気配。


 もう一つは――


 どこか懐かしい。


 胸の奥がざわつく。


 反射的に振り向いた。


 そこにいたのは――


 創造神と。


 そして――


 半透明の、男。


「……え」


 見間違えるはずがない。


 若い頃の姿に近いけど。


 それでも分かる。


「じい……ちゃん?」


 声が震えた。


 男は、少し困ったように笑う。


「久しぶりだな、裕季」


 懐かしい声。


 間違いない。


「元気そうで何よりだ」


 ゆっくりと近づいてくる。


「驚く顔を見たくてな」


 軽く肩をすくめる。


「来てみたんだが――」


 じいちゃんは、俺の顔を覗き込んで。


 苦笑した。


「泣きそうな顔は、予想外だったな」


 ――ああ、くそ。


 視界が滲む。


「……なんで、ここにいるんだよ」


 やっと絞り出した声は、自分でも驚くほど弱かった。


 死んだはずだろ。


 もう会えないはずだろ。


 なのに――


「細かい話は後だ」


 じいちゃんは、いつもの調子で言う。


「まずは再会を喜べ」


 ぽん、と。


 頭に手を置かれた気がした。


 触れてないはずなのに。


 ちゃんと、感じた。


「……相変わらずだな、お前は」


 思わず笑いが漏れる。


 泣きそうなのに、笑ってる。


 ぐちゃぐちゃだ。


 後ろでは――


 ララとナタリーが完全に固まっていた。


 そりゃそうだ。


 いきなり神と幽霊みたいなのが出てきたんだから。


「さて」


 創造神が、ゆっくりと口を開く。


「そろそろ良いか?」


 ――ついに。


 俺たちの秘密を明かすときが来た。

読んでいただきありがとうございます!

面白いと思ったら⭐︎を押していただけたら投稿の励みになります☆彡

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ