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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
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火龍と会いました①

 翌朝目覚めると、まだドルフは火の番を続けていた。

 夜中に薪を調達したのだろう、焚火は今でも燃え続けている。

「目が覚めたか。」

「おはようございます。」

 ドルフの隣にはノノが座っており、頭を下げて挨拶をしてくる。

 随分回復したようだ、流石獣人だな。


「おはようございます、ノノも少し元気になったみたいですね。」

「お前のおかげだ、この通り、重ねて礼を言う。」

「そ、そこまでしなくていいですよ! 顔を上げてください。」

 ドルフが地面に額を付けたので、慌てて止めた。

 獣人の王にそんな事させたと知られたら、後で何が起こるか分かったもんじゃない。



 食事は持って来ていないので、ここで油を売っている時間が無駄だ。

 そう思った俺は早々に出発の準備をする。

「もう行くのか?」

「ええ、俺の用事も急ぎですし、ドルフ達の事も伝えなきゃならない。火龍に会いに行くのが最優先ですからね。」

「そうか、昨晩も言ったが俺達はお前に救われた。何があってもお前に従う。お前を信じる。」

 あれくらいの事でそんな大袈裟な……。

 悪い気はしないけど。

「わかりました、もし何かあった時は……。」

「お前は必ず戻るさ、何かなど無い。しかし万が一その何かがあったとすれば、俺達は喜んで死のう。」

 いや重いな……。

 これは獣人の性なのか? 通りで奴隷に最適だなんて言われてる訳だよ……。


「う、わ、わかりました。じゃあ行ってきます……。」

 ドルフとノノは俺を信じ切っている。

 眼差しでそれがひしひしと伝わってくる。

 そんな二人の熱い視線を背中に感じながら、俺は洞窟を後にした。


 

 足元に気を付けながら斜面を進んで行く。

 何度もサツマタケの毒の直撃を食らったものの、幸いドルフに貰った世界樹の葉のおかげでまだ喉の痛みは軽い。

 龍にはこの毒は効かないのだろうか? 熱で無効化できるので、火龍にとっては無いのと同じなのだろうか。


 段々木に掴まっていないと転がり落ちそうだと思うほど傾斜がきつくなってきた。

 傾斜はやがて崖になり、顔だけ出して遥か下を流れる川をのぞき込むと、先の方で大きく二回曲がっている箇所が視認できた。

 あそこが本物の龍の穴の目印だ、あの辺りの崖のどこかに穴が開いている筈なんだが……。


 二回曲がりの所まで歩を進めてもう一度下を確認してみたが、それらしい穴は見当たらない。

 まさかここじゃないんだろうか。

 似たような場所が他にもあるおそれはある、でもそれならもっとわかりやすい目印とか、他にもあるから気を付けろとか言ってくれると思うんだよな。


 そういえばトビーが言ってたな、人の視覚を狂わせる魔法だっけ? それを洞窟にかけているって事も考えられるんじゃないか。

 そうなると実際に降りて、崖肌を手探りで確かめる事になるけど……、どれだけ時間がかかるか分かったものじゃないな。


 あー、困った。

 川で女の子が遊んでる、いいなあ気楽で。

 俺は顔を引っ込めてそのまま横になり、空を眺める。

 俺も出来れば遊びで来たかったなこの山、サツマタケの時期じゃなければいい気分転……換……に……?、

 そうだよ、サツマタケの時期だよな今?

 なんであの子は独りでこんな所に……。

 慌ててもう一度崖下を見ようと寝返りを打つと、目の前にさっき見た女の子が立っていた。


 いや、よく見ると立っていない、崖の向こう側。

 空中に浮いている。

「人間、私に何か用か?」

 女の子は背筋が凍るような眼でこちらを見下ろし、静かにそう言った。

「も、もしかして火龍……なのか?」

 それ以外にあるとしたら幽霊くらいだろう。

「いかにも、何をしにここへ来た。」

 とんでもない威圧感だ、死ぬ事は無いと思っていても死を感じてしまう。

 しかしここで怯えていても始まらない、聞かなきゃいけない事もあるし、覚悟を決めなきゃな。

 トビーはとても話の分かる龍だなんて言っていたが、これは火龍の牙に関しては最悪諦める事もやぶさかではない。



「じ、実は見た事の無い奇病で苦しんでいる子供がいて、長く生きる火龍なら心当たりがあるんじゃないかと……。」

「ほう、貴様の子か?」

「い、いや、そうじゃない。けど、凄くいい子で、治してやりたくて……。」

「ふん、それだけか?」

「あ、あと獣人の集落のある……、なんだっけ……。……そう! ムパシ! ムパシ山が噴火するかもしれないから相談したいって獣人の王様に頼まれて……。」


 火龍は眉一つ動かさない。

 そもそも見た目が女の子に見えるように俺の視覚に魔法が作用してるだけで、表情が変化するのかすらわからないが。


「どうやってこの山に入った? 人間では無理であろう。」

「あー……、それは……、俺死なない身体で、信じて貰えないかもしれないけど……。」

「え? 本当?」

 俺の身体の話をしたら、急に龍の態度が変わった。

 気がするとかではなく、本当に露骨に。

 先程までの威圧感は見事に消え失せ、鉄面皮だった表情も太陽のように明るい。

「じゃあもしかして君がアレン君? トビー君から聞いてるよ~、あ、ここじゃ何だからうち来る? ゆっくり話そっか。」



 何だこれ……、頭が追い付かない……。

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