紅茶を手に入れます③
ローランに連れられココノエさんの私室へ。
ローランが言っていたように、使用人の中で一番偉いからといって、広い部屋が割り当てられているわけではなかった。
「ココノエさんはどれがおすすめだって言ってたんだ?」
俺の問いに返事をしながら、紅茶が入っていると思われる棚を探すローラン。
「えーっとですねえ……、あ、ありました。まず一つ目、これが一番手に入りにくい物だそうです。」
そう言って片手で持てるくらいの大きさの瓶を差し出した。
中には容量の半分ほど茶葉が入っている。
「そんなに珍しいのか?」
「ええ、師匠の話によればごく一部の獣人族が栽培している物らしく、直接会って交渉したそうですよ。」
農耕を行わない獣人族の中にも、たまに趣味で植物を育てている者がいるとは聞いた事があるが……。
確かに珍品だな。
「味はどうなんだ?」
「保証はしないと言っておりました。」
「あ、そ。次は?」
「こちらですかね、普通に淹れると美味しくないんだそうですが、果実と合わせると抜群に果実の味を引き立てるのだとか。」
紅茶に果汁を混ぜる事はよくある。
そうなると火龍好みの果実も探さないといけなくなるな。
「他には?」
「こちらの3種類はどれも魔族の国の物だという事です。」
ローランは瓶を3つ俺の前に並べる。
なんだか変わった色をしているな。
「魔族の国か、でも今は大分こちらにも輸入され始めているんじゃないのか?」
「食に関しては殆ど貿易は行われておりません。エルフの食文化は私共人間に近いので受け入れられやすいと思いますが、魔族の方々は……。」
なるほどな、確かに話し合い、という名の殴り込みだが、それに行った時はどれもこれも口には合わなかった。
魔族は匂いの強い物を好むから、キイなんかは結局一口も食べなかったくらいだ。
「つまり不味いって事かな?」
「普通なら間違いなく。しかしですね、何故師匠がそんなものを3種類も持っていると思われますか?」
さっきのやつと同じで、淹れ方によっては美味しくなる方法があるのだろうか。
「いや、見当もつかない。」
「実はこれは出来上がった物ではないそうなんです。」
ほう。
「この状態から一度カビを発生させて発酵を行い、どろどろにしたものをお湯に溶いた物が魔族の国で飲まれているのだそうです。」
あ、言われてみれば腐臭の凄い飲み物を出された事があるな。
「つまりその、腐らせる前なら美味いと?」
「そう言っていましたよ、見付けたのは偶然だが魔族の国で一番の収穫だった、と。」
そうだな、未完成のままで他人に振舞う訳はないしな。これは掘り出し物だろう。
味を確かめる余裕はないけど、珍しい事、そして味が良い事を両立してるならこれでいいだろう。
火龍の好みはわからないが、不味いのが好きならトビーがあの時話題にしていただろうし、人間の味覚に近いと信じておこう。
「よし、それにしよう、3つの違いはどうなってるんだ?」
「さあ?」
「さあ? って、味の違いとか聞いてないのか?」
「ええ、どれも美味しいとしか。3つとも持って行っていいと思いますよ、一つだけとか言ってませんでしたし。何なら今紹介したもの全て持って行きますか?」
「かさばるから要らない。じゃあ魔族の国のを三つ持って行くとするよ……。」
「畏まりました、ではお包み致します。」
やれやれ、やっと手土産が出来た。




