火龍に会う為の準備をします①
朝食を終えてローランが掃除を始める頃、キイとシヴはガルボニーさんを引き摺りながらギルドへ向かった。
俺も行こうかとも思ったが、火龍に会いに行く準備をする為に別行動をする事にした。
「仮にサツマタケが生えていない時期だとして、どのくらいかかるんだ?」
「私は行った事はありませんからねえ……。ただ師匠は領主館の皆が起きてこない早朝に出て、寝静まる頃に帰ってきますよ。」
「近道を利用してるとかはないのか?」
「どうでしょう。師匠も今は害獣駆除用に使うだけで年に2~3回しか行きませんし、通常のルートではないでしょうか?」
「そっか、そうなるとココノエさんと条件は一緒か。でも俺の足だからなあ、長年アサシンで鍛えてた人と同じ速さは無理だな。」
「そうですねえ、私も師匠が息を上げている所は見た事ございませんし。流石に往復で走り続けるような事はしないとは思いますが、休憩は取らないかもしれませんね。」
領主館の人間が誰も起きてこない時間から寝静まる時間まで歩きっぱなしか、無理だな。
倍はかかると思って普通に1泊を考えておいた方が良さそうだ、採取じゃなくて龍に会いに行くんだし、いくら温厚でも寝てる所を起こして火龍の牙下さいな、なんて失礼過ぎて怒られそうだし。
夜寝るのか知らないけど。
「馬ならお貸しできますが?」
「いや、ありがたいけど馬に乗った事はないんだ。練習するくらいならさっさと出発するよ。」
「そうでしたか、でもキイ様は乗れるでしょう?」
「うん、キイは乗れるな。送ってもらえって?」
「はい、シヴ様がすぐにエルフの国へ発たれるのでしたらシヴ様と途中までご一緒でもいいかと思いますが。」
「乗れるかどうかは知らないけどシヴは馬なんか使わないよ、自分が走った方が早いから。」
「冗談でしょう?」
「まさか、あいつどんな悪路……、いや、道が無くても一直線で走り抜けるからな、今回も走っていくと思う。」
「2日で行けるというのはいくらなんでも誇張し過ぎかと思いましたが、そういう事でしたか……。」
ローランもまだシヴと出会って日が浅いからな、信じられないのも無理はない。
しかしキイに途中まで送ってもらうと言うのはいい案かも知れないな、戻ったら聞いてみるとしよう。
「馬を借りるとして、ローランがいない間はトールさんに聞けばいいのか?」
「私が不在の間はそうしてもらえると。領主館に戻る前にトールさんの所の仕事も片付ける予定ですので伝えておきます。」
そうか、トールさんの会社の管理もローランがやってるんだったな。
「助かるよ、借りるかはまだわからないけど。」
「畏まりました。」
旅の道具はクロウの頃の荷物そのままでいいとして、手土産とか要らないかな?
でも龍が喜ぶ物とかわからないしな。肉とか調度品とか? なんかヒントあったっけ? トビーが何か言ってたような……。
「ノノン、友達で間違いないよ、良い紅茶があれば余の所へ来て一緒にティータイムをする仲さ。」
そうか、紅茶だ。
わざわざ良い物が手に入ったよ、って持ってくるくらいだからな。
「ローラン、龍に手土産を持って行きたいんだけど、貿易先の中で一番いい紅茶の産地ってどこ?」
「ここですよ。」
「え?」
何だと。
「ですからここです、私の経験上ハバキ様の領土で採れる物が一番品質が良いです。」
何てことだ、じゃあ高級な茶葉を持って行っても珍しがってはくれないかもしれないのか……。
「いや、でも何かないか? 品質は同じくらいでもいいから、すごーく珍しいみたいなさ。」
ローランは顎に手を当てて考える。
「ああ、味は好みもございますのでどちらが上とは言いませんが、滅多に手に入らない珍しい物なら師匠のコレクションの中に何点かあったかと。」
「紅茶のコレクションなんてしてるのか?」
「はい、特段師匠自身が好きというわけではありませんが、優れた執事の条件に必要不可欠だとか何とかで、様々かき集めている筈ですよ。」
ええ……、それ下さいって言って貰えるもんなのか……?
「……くれるかな?」
「さあ、私にはわかりませんがハバキ様に頼めば何とかなるんじゃないでしょうか。何ならギルドに危険人物の討伐として師匠の事を依頼されてみては? 殺してしまえば貰い放題ですよ。」
「冗談だろ。」
「半分。」
「ココノエさんの仕事が全部ローランに。」
「物騒な依頼はやめましょう。会いに行かれるのでしたら私が帰る時に一緒に参りましょうか。」
よし、ローランが帰る時に領主館まで行って、何とかココノエさんに頼み込んで紅茶を貰い、西の山の龍が住んでいるという龍の穴の情報も貰って、龍に会って火龍の牙を貰う。
貰ってばかりの俺の旅の流れは固まったな。




