叶わぬ物、叶える者②
スケベ貴族達が余所見をした隙にキイを家の中へ連れ去る。
残念ながらローランの下着は見えていなかった、騙された。
「一体どうしたのじゃ?」
「好きみたいなんだよ。」
「なぬっ!? な、何もこんな時にそんな……。い、意外と情熱的なんじゃの……。」
急に何を照れているんだ……。
「ハバキ様は貴族出身じゃないからとかいうクソみたいな理由で、トビーに想いを告げられずにいるみたいなんだ。」
「…………。」
「どうしたキイ?」
「……いや、何でもないのじゃ。で、どういう事じゃ、詳しく話すのじゃ。」
「実はな……。」
俺は先程のハバキ様との話をキイに伝えた。王族であるキイなら何かいいアイディアが出てくると思っての行動だったのだが、どうだろうか。
「ふむ、成程のう。ハバキは今は領主じゃが、貴族でもないし爵位も持たぬのか。」
「そうなのか?」
「普通ならの。戦場での功績で与えられているかも知れんが……。どちらにせよ身分が違い過ぎて、本人達が良くても周りが何を言い出すか……、という事じゃろう。」
「そんなのおかしい、お互いが想っているなら結ばれてしかるべきだ。」
「単純じゃの、まあお主のそういう所は嫌いではないが。」
「何かいい作戦はないのか? みんなが納得できなくてもいいだろ、トビーだって貴族達を変えたい変えたい言ってたし。」
派閥争いがどうとかの話だった気もするけどどうでもいいか、キイにハッタリが効けばいい。
「ハバキが気にしているのは出自の差だけなのかの?」
「多分。フラれてもフラれなくても怖いって言ってたし……。」
キイは目を閉じて少し考えている。やっぱり何も方法はないのだろうか。
「エルフの国ではどうなんだ? やっぱり身分がどうだとか……」
「いや、そんなものはエルフには無いのじゃ。平民でも能力があれば大臣になれるし、好きあえば婚姻を結ぶ事も……、そうじゃ、その手があったか。」
何か閃いてくれたようだ。難しい物じゃなければいいんだが。
「何かいい手があるのか?」
「上手くいくかはわからん。というか人間に通用するかわからんが……、身分の差を埋める事なら出来るのじゃ。」
「どうやって……?」
キイが顔を近付けて来る。文字通りの目と鼻の先で、悪そうな笑顔を見せる。
「それはの……」
キイの話を聞いて十分後、俺はハバキ様とトビーを連れてキイの待つ地下へと来ていた。
「用事というのは何だ、そろそろ教えてくれてもいいだろう。」
「余に何かお願い事でもあるのかな?」
俺は黙ってキイの待つ部屋の扉を叩く。一階の中央と繋がっている巨大な柱がある部屋だ。マナが宿っているという話だったな。
「入るがよい。」
トビーとハバキ様を誘導して中に入ると、キイがこちらに背を向け、柱に手を当てた状態で立っていた。
「二人を連れて来た。さっきの話、頼む。」
そう言って俺は扉を後ろ手で閉める。その音を聞いて、ゆっくりとキイは振り向いた。
「トビー、今回だけは許可するのじゃ、ワシの心を読んでよい。」
「ん? どういう事だい?」
「これからお主に口外出来ぬ事を伝える、読んだら返事をするのじゃ。」
「う~ん、よくわからないけどわかったよ。」
しばらく静寂が続いたが、突然トビーが慌てだした。
「そ、そんなことができるのかい!? どうりでエルフの情報共有力がとんでもないわけだよ……。」
トビーがキイに何を読まされたのかは俺にもわからない。が、それを知ればその後の作戦に説得力が増すと言ってたので、重大な何かを読まされたのは間違いない。
「では、もう読むのは禁じる。これからワシはエルフの国の現女王、ミームの代理とする。ワシの口、ワシの耳、どちらも女王ミームの物である、ミームの言葉としてワシの言葉に耳を傾け、お主達の発言はそのままミームへ向けての発言として届くことを肝に命ずるようにの。」
「全く以てその通りみたいだね~、気を付けるよ。」
トビーが妙に素直だな。
「一体何が始まるというのだ?」
ハバキ様が小声で聞いて来たが、これも無視だ。どうせすぐにわかる事だしな。




