叶わぬ物、叶える者①
その後貴族達は一応俺の所にも形だけは挨拶に来たが、本当に挨拶程度で俺に興味が無いのがよくわかる。中にはキイの事を色々聞き出そうとする奴もいたが、直接キイに聞いてくれと一蹴した。
ハバキ様はローランの料理を出来る限り食べようとしていて、話の合間を見計らっては何かを皿に乗せている。
トールさんはすぐに酒で潰れてしまった。
貴族達も流石に国王にはおいそれと話しかけ辛いのか、意外な事にトビーは静かに皆を眺めながら独り、椅子でゆったりしている。
ナインハルトはその横に座って一応食事を楽しんでいるようだが、身辺警護のつもりなのだろう、目付きは鋭い。
貴族の従者達は腕に覚えのありそうな屈強な男ばかり。という訳でもなく、執事であったり妾っぽいエルフであったり、珍しいことに魔族を連れている人までいて、従者を見ればどんな人なのか何となく想像できた。
ぼーっと観察していると、ハバキ様が俺の方へやって来る。
「横、空いているか?」
「どうぞどうぞ。」
ハバキ様は手に持っていた皿を地面に置いて、俺の横に座る。
「すまないな。」
「何がです?」
「私の失敗のせいでこんな事になってしまって。」
「ああ、いいですよ。小出しで来られるよりまとめて終わらせちゃった方が後が楽ですから。」
「そうか、そう言ってくれると助かるよ。」
「そういやさっき、トビーがこの中にも敵がいるみたいな事言ってましたけど、大丈夫なんですか?」
「ああ、敵と言っても直接王に危害を加えようなんて輩はまずいない……。いや、居たには居たのだが、ビーちゃんの例の力で粗方把握済みなのだ。」
「処刑でもしたんですか?」
「証拠も無しに突然処刑など出来る訳がないだろう。」
「そりゃそうですよね。」
「そもそもビーちゃんに悪感情を抱いているというだけで処罰など、それこそ只の恐怖政治だからな。そんなことは誰も望んでいないのだ、もちろんビーちゃん自身もな。」
持って生まれた他人の心を読む能力。
便利なようだが、読めるだけで覆せる事ばかりじゃないからな。出来損ないのふりをする事が唯一の自衛手段だったのかもな。
「だからこそローランを使って探らせていた、という訳だ。ローランが領主館の人間だとはこの者達は知らない。もちろん証拠が見つかったからと言って処刑はせぬがな。」
そういえばハバキ様とトビーはどんな関係なんだろうか。トビーはハバキ様との一日をとても大事にしている、とかローランが言ってたような気がするが。こういうのはいきなり聞いていいもんなんだろうか。
……まあいいか。
「トビーとハバキ様って恋人なんですか?」
「そうだったらいいな、とは思っている。」
意外にもあっさり答えてくれた。
「簡単に答えてくれるんですね、恥ずかしがったり否定したりするかと思ってました。」
「ビーちゃんの能力を知らなかった頃にな、私の気持ちはすでにもう読まれていたんだ、隠しても仕方ないさ。」
「でもトビーもこうしてハバキ様に会いに来るんだから、拒否したわけじゃないんでしょう?」
「いや、わからない。答えは聞いていないからな。能力の事は、ビーちゃんが国王になり領主として私を抜擢した時、信頼できる者達だけに教えるという前置きで打ち明けてくれるまで知らなかったのだ。」
なんだ、トビーに直接聞いた訳じゃないのか。
「そもそも何でお二人は愛称で呼び合ってるんですか?」
「ああ、学び舎が同じだったのだよ。私とビーちゃんは同級生で同じ級友なのだ。まあ私は騎士になる為、ビーちゃんは王子として見識を深める為に行っていたのだがな。」
「じゃあ学生時代からトビーの事が?」
「そうなるな。だからおそらく、ビーちゃんにも私の気持ちはばれているだろう。」
なるほどなあ。……いや、待てよ?
「でもハバキ様の気持ちは知ってて、それでも能力の事を話したって事は、トビーも満更でもないんじゃないんですかね。大体、今でも毎月会いに来るわけでしょう?」
「どうかな、上手く利用されているのかもしれないし、もしかしたら本当は読まれてないかもしれない。」
「確かめてみようとは思わないんですか?」
「……確かめてもし拒否されたら、というのが怖い。というのも勿論あるが、それ以上にビーちゃんも同じ気持ちだった時の方が怖いのだ私は。」
なんでだろうか。相思相愛なら幸せになれるだろうに。
「わからないという顔をしているな。私は貴族の生まれではないのだ、ビーちゃんとは身分が違いすぎるのだよ。」
あー、なるほど。差別なんかしませんよって顔して、一番自分を差別してるのかこの人は。
「ハバキ様、ちょっとキイの所に行って来てもいいですか?」
「ああ、つまらない話で邪魔をしたな。忘れてくれ。」
俺は一直線にキイの所へ向かう。
周りの取り巻きを無視して、話があると連れ出そうとした。それでもしつこく食い下がってくる貴族を見て、ローランは何か察したのだろう。
「きゃっ! 転んでしまいました、あ~ら恥ずかしい! 転んだ拍子に私の下着が丸見えですね!」
恐ろしく棒読みのセリフで注意を引いてくれた。




