入居します①
朝。ゆっくりしてようと思っていたが、興奮からか早くに目が覚めたので、少ない荷物を纏めて食堂に向かう。
俺より先にキイが居る事に驚きはしないが、何と今日はシヴまで早起きをしている。キイとシヴが早朝に二人で紅茶を飲んでいる光景は何とも珍しく、今日は特別な日なんだと実感した。
「おはよう、シヴまで居るなんて思わなかったよ。」
「おう、何か目が覚めちまってよ。俺も爺になってきたのかね。」
「実は一番楽しみにしておるのはお主ではないのか、ワシより早かったではないか。」
キイより早かったとは意外だな、荷物もしっかり持って来てるし。
「へっ、そうかもしれねえな。」
「素直なのは良いことじゃ。」
俺も椅子に腰掛けて、テーブルの中央に盛られたパンを手に取り齧る。朝食はメニューが決まっているので、座れば勝手に出てくるから注文する必要はない。
「あれ、それ食後の紅茶だよな? 二人はもう食べたのか?」
皿も無いし、思ったより早くから居るのか。
「ワシが来た時にはもうシヴは食べ終えておったのじゃ。」
遠足前の子共じゃないんだから……。
「タークスさんが言うには今日から住めるようになるって話だけど、直接家に向かえばいいのかな?」
「まだ掃除道具が置いてあったから今日もやっておる筈じゃ。それに鍵を貰っておらぬじゃろう、受け渡しなのじゃから先にタークスを訪ねるのが筋ではないかの。」
「そっか、キイは家を見て来たの?」
「な、何故じゃ!?」
なんでそんなに焦ってるんだよ。
「掃除道具が置いてあった。って、たった今自分で言ったんじゃないか。昨日の夜、どうせ気になりすぎてつい見に行っちゃった、とかそんなんだろ? 最初あの家見た時凄く興奮してたもんな。」
「じ、実はそうなのじゃ。進捗が気になっての。」
やっぱりな。恥ずかしがらなくていいのに、シヴですら興味ないぜって顔しながらこんななんだし。何がエルフの秘密だよ。
「じゃあ朝食が終わったらタークスさんの所に向かおう、すぐ食べるから待ってて。」
「ローランも来ておるぞ。」
丁度よく運ばれてきた料理を頬張りながら窓の外を見ると、ピーニャと言ったっけ、獣人の女の子を抱き締めて撫でまわしているメイドが目に入った。
「何をやってるんだあいつは……。」
「あの獣人も満更じゃねーみたいだぞ、キイが来る前からずっとああだ。」
ローランはこちらに気付いているのだろうが、お構いなしみたいだ。まあ差別主義者じゃない事がわかるし安心した。
端正な顔立ちのメイドが可愛らしい獣人を愛でている、それを微笑ましく見ている美しいエルフという光景は中々見られるもんじゃないな、シヴだけが邪魔だ。
「今お前さん、碌でも無い事考えやがったな?」
「滅相も無い。」
勘が鋭いってのも面倒だな。




