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不死者の町人生活  作者: 旬のからくり
22/209

メイド雇いました③

 そうか、領主館がここから近いのかはわからないが、少なくとも領内にあいつがいるのは間違いない。

 朝見掛けたローランが馬車で行って、数時間後には戻ってこられるような距離だし、他に連絡手段を持っているとかでなければ、領主館はそう遠くないのかもしれない。


「せっかく明日から新生活が始まるというのに……、ローラン、友人って言ってたけど、トビーは領主様の所へは政務で来ているんだろ?」

 全身ピンクの馬鹿王トビーが、過密な日程の合間に僅かな滞在時間しか作れない中、領主から直接話を聞いて政治に役立てていく為に各地を飛び回っている。という台本を期待して俺はローランに尋ねた。


「いいえ、今回は私用だと思いますよ。今やらないといけない案件は片付いたから、と仰ってましたし。」

「そんなしょっちゅう来ているのか?」

「ええ、そうですね、月に一度は必ず見えられます。すぐお帰りになられる時もあれば、数日滞在されることもございます。」


「トビーはいつから来ているんだ?」

「本日ですよ、私が領主館に戻った時にはお迎えの準備をしておりましたから。」

「で、今回は何日いるとか言ってたか?」

「はい、不都合がなければ三日程おられると。」

 三日か、あと二日はこっちにいるのか。


 キイは絶句、シヴは頭を抱えている。

「あの、先程からどうされました? 本当に国王様のご友人だという事は察しましたが……。」

「いや、気にしなくていい、それより、明日と明後日の予定とかは聞いているだろう? 聞いてなければいつものお決まりの流れとかがあるか教えて欲しい。」


「明日は領内に住む貴族を集めて、狩りに出られる予定だったかと。」

「そうか、じゃあ明日は問題ないな。明後日は?」


「特に伺っておりませんが、いつも最終滞在日は庭で紅茶を飲みながら、ハバキ様と二人で時間までチェスとご歓談を楽しんでおられますね。」

「来るとしたらそれを早めに切り上げるか、予定自体を無くして王都に帰る前に寄るくらいか、それくらいなら我慢できるか……。」


「早めに切り上げるなんてありえませんよ? 二人共その時間を一番大事にされていますから。」

 という事はつまり……。

「こちらに来ることはなさそうじゃの……。」

 安心しきってキイの表情が緩む。ただ、今回は来ないにしても、知られてしまっているのは覆らない事実、いつか必ず俺達の前に現れるだろう。

 

 ローランはずっと腑に落ちない表情を浮かべていたが、深く教えるつもりもないので話題を変える事にする。


「じゃあ俺からローランへの質問なんだけど、メイドとしてというかアサシンとしてというか、外での仕事が無い時は領主館でメイドをしているのか?」

「いえ、領主館に居る日は基本的にお休みですよ。メイドの仕事も完璧にこなす自負はありますが、私は本来アサシンとして雇われておりますから。それに……。」

「それに?」

「領主館には私の師匠がいます、私が出る幕はございません。」

 メイドの師匠だろうか、領主館ともなると使用人の質も数も凄そうだな。


「いずれお目にかかると思いますよ、ハバキ様が視察に来られれば必ず付いてきますから。」

 メイド長みたいな感じだろうか、外出にも連れて行くって事は余程信頼が厚いんだろうな。


「そのうち息の根を止めてあげようと思っているのですけど、暗殺術とはいえやはり教わった技では教えた者には勝てないのでしょうかね……。」

「アサシンの方の師匠かよ!」


「うふふ、勿論メイドの技も師匠に教わりましたよ。師匠はアサシンを廃業致しました、今は執事の仕事しかしておりません。」

「男だったよ、勝手に熟練の凄腕メイドばあさん想像してたよ。」

「相変わらず早とちりがお好きですね。お昼の事件、もうお忘れですか?」

 う、墓穴。

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