『アッシュ・ヴァミリヲです。』
来魔戦参加者のジェムも一通り受け取りが完了する。
あちらこちらで分配された麻袋を抱えた人達から「今回は多いな」と口々に聞こえてくる。
暫くすると一人の男性が噴水広場を見渡せる壇上へと上がり、声を張り上げる。
「え〜、私はドーサ商会の会長『ザルザ・ザザーランザ』である。」
広場中に声が届く。
どうやら、会長が口の前に持っている水色のジェムが声を増幅拡散させているようだ。
(……にしても会長の名前、『ザ』が多いな。)
アッシュはどうでも良い事が気になっていた。
「まずはドーサの為に闘ってくれた戦士達に御礼と感謝を申し上げたい!よく闘って、そして生き延びてくれた、有り難う!!そして残念ながら、今回の来魔戦を乗り切れ無かった戦士達に追悼の意を表し、一分間の黙祷を捧げる。…………黙祷!!」
「カーン!」
街の鐘がひとつ。
・
・
・
・
「さぁ、では続いて今回の報奨を授与する来魔戦の英雄達を呼んでみましょう。今回もドーサ商会の聞き取り調査により数名の英雄達の噂を耳にしました。まずは、過去にも度々名前の上がっている…………『ボス・ストラーダ』!!おられましたら壇上へお越しください!!」
「あ、ボスさん呼ばれてますよ。」
アッシュは興奮気味に言う。
他の行商人仲間はいつもの事だからか、『だろうな。』程度の反応。
ボスが壇上に上がると拍手が起こる。
「え〜、続いては……目撃された特徴の情報からになります。ホワイトブロンドの髪、ロングソードの使い手の女性。条件に当てはまる方は壇上へお越しください。」
すると、壇上にホワイトブロンドの髪のロングソードを携えた女性が三人現れた。
一人目は、ロングヘアーで体格の良い冒険者風
腕組みをしながら壇上から周囲を見渡している。
二人目は、ポニーテールにヘソ出しルックのワイルド系
鞘ごと床に剣を突き立てて、『条件に当てはまるから来た』というだけで興味なさそうに立っている。
三人目は、ボブヘアに大きなリング状の耳飾りの少女
こういう場は不慣れなのか、やや緊張気味だ。
「では皆様、こちらの女性の活躍を見たという方は挙手願います。」
一人目を手で示しながらザルザ・ザザーランザの呼びかけでちらほらと手が挙がる。
「では、こちらの女性の活躍を見たという方は挙手願います。」
ザルザ・ザザーランザが二人目を手で示しながら周囲に呼びかけると大勢の手が挙がる。
「最後に、こちらの女性の活躍を見たという方は挙手願います。」
三人目を手で示して反応を見る。
こちらも大勢の挙手はあるが、二人目よりはやや少ない結果となった。
「では、二人目の報奨授与はこちらの…………お名前をどうぞ。」
とポニーテールの女性に呼びかけた。
「ルルカ・エルダルトルだ。」
と素っ気無く短いひと言。
(こっちはこっちで名前に『ル』が多いな…………)
とアッシュはまたどうでも良い事を気にしていた。
「え〜、ボス氏とルルカ氏、こちらの御二方には多大なるご活躍を称え、ジェムの追加報奨を授与します。」
ドーサ商会会長の言葉と共に麻袋に入ったジェムが手渡され、周囲から拍手が起こった。
「さて今回、もう一人多数の目撃情報が寄せられている人物が居ます。こちらも特徴の情報になりますが…………黒のマントに大きな剣を携えた青年!この情報に見合う方は是非壇上にお越しください。」
「おい、アッシュ!お前だろ!?」
ドウズが肘で小突く。
「え?あ、俺スか??」
とキョロキョロする。
キロスもワンもボスもナヴィも
(え?他に誰が??)
みたいな目でアッシュを見ている。
アッシュは行商人達の視線に推されながら壇上へと進んだ。
すると壇上へもう一人、黒マントにアッシュ程のサイズとは言わないまでも大きな剣を背負ったベテラン剣士風の男が現れる。
すると(青年……ではない…よな。)という空気が流れたのを広場中の人が感じ取った。
「で……では、こちらの男性の活躍を目撃された方は挙手を願います。」
と、ザルザ・ザザーランザがベテラン剣士を手で示しながら問いかける。
ポツポツと手が上がる。
「続いて、こちらの青年の活躍を目撃された方は挙手を願います。」
と今度はアッシュを手で示す。
すると、広場中のほぼ全員の手が上がった。
「では、こちらの青年に追加ジェムを授与します。名前をどうぞ。」
とアッシュの口元へ音声拡散ジェムを向ける。
「アッシュ・ヴァミリヲです。」
と控えめに名乗った瞬間、拍手と歓声が沸き起こる。
「アッシューーーッ!!」
パチパチパチパチパチパチ!!
「今回はお前が一番だったぜ!!」
「アッシュ!!」「アッシュ!!」「アッシュ!!」
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!
「うぉおおおお!凄かったぞ!!」
「わぁぁああぁぁぁぁぁ!!」
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!
「え〜、つきましてはアッシュ氏にはこちらのジェムを贈呈します。」
出て来たのは成人男性の頭程の大きさのジェム。
(あ、あれは確かワイバーンの。)
アッシュは見た瞬間に理解した。
自分で倒したモンスターのジェムが自分へと授与される。
「うぉぉおおお!!」
「でけぇ!」
「あんなデカいジェム見た事無ぇ。」
と広場のあちらこちらがザワつく。
「こちらは後ほど商会の者がアッシュ氏指定の場所へ送り届けます。……では最後に、壇上の戦士達全員へ盛大なる拍手を!!」
パチパチパチパチ!!
パチパチパチパチパチパチ!!
パチパチパチパチパチパチ……………………
拍手はジェムを授与された者にも、されなかった者にも別け隔てなく送られた。
「では、以上をもちましてジェムの分配を終了します。」
とザルザ・ザザーランザが締めくくり、本当の意味でのドーサの来魔戦は終了した。
噴水広場に集まった人達もそれぞれの日常、居場所、職業、立場へと戻っていった。
アッシュも流石に疲れていた為、行商人連中と別れて壁のぶっ壊れた宿屋の自室へ戻った。
アッシュはベッドに腰掛けながら窓も壁も無い『直』の街並みを見ながらリリアに相談する。
「なぁ、リリア……俺さ、あんなデカいジェム貰ってさ………この先どうやって旅を続けたら良いんだ?」
リリアが怪訝な表情を浮かべる。
「あのさ、例えばさリリアの風の力で浮かせて運ぶ…………とか出来ないかな??」
「アンタ、久々にアタシに話かけたと思ったらそんな下らない事!!?……出来る訳ないでしょ!!自分で何とかしなさいよ!!」
「えぇ〜?だって俺、こんなデカい剣持ってんだぜ?」
「知らないわよッ!」
そこを何とかさ………………しつこいわね……………えぇ〜?頼むよ……………………そんな甘えた声出してもダメ!!…………………そんなぁ、俺とリリアの仲だろぅ?………………………………えぇい、さっさと寝ろ!!……………………………………………
…………………………………………
…………………………
…………
……
ドーサの夜空はいつもと変わらない満天の星空だった。




