『各エリア 兵(かいぶつ)どもが ジェムの跡』
翌朝アッシュは昨晩の行商人達と一緒にドーサの中央に位置する噴水広場へと来ていた。
「まずはあの受け付けで名前を記入する。そしてエリア分けの地図と番号の書かれたバッジを貰う。」
アッシュはドウズから説明を受けていた。
キロス、ワン、ボス、ナヴィは勝手知ったるという感じで手続きを進めている。
言われた通りに受け付けで名前を記入し、ドーサの街が色分けされた地図とバッジを受け取った。
「貰ってきましたよ。」
アッシュはドウズに地図とバッジを見せる。
「よし、じゃあバッジの色と番号の確認。」
「えーと、緑の32番です。」
「まぁ、今回は俺と同じ色と番号だ。初参加者の指導の為に今回は特別に俺と同じバッジにしてもらった。次からはランダムだからな。」
「は、はぁ……。」
(一体何の指導だ??)
「同じ番号同士がペアだ。そして、バッジの色と地図の色分けの同じ場所へ行く。では、地図の場所に着くまでに地図の裏面をよく読んでおくように。」
アッシュとドウズは地図に書かれた緑のエリアへと向かった。
アッシュは地図の裏面を見る。
〜 『ジェム回収における注意事項』 〜
・バッジの同番号同士がペアとなり地図と同色のエリアのジェムを回収する事。
・回収したジェムは残らずドーサ商会へと納める事。
・ジェムを私的に着服し、発覚した場合は今後ドーサへの出入りを禁ずる。
・ペア同士は互いに監視し、相手がジェムを着服した場合には速やかに報告する事。(その場合、報告者には支給ジェムの量が加算されます。※但し、虚偽の報告者は支給対象外になります。)
・ドーサ商会へ納められたジェムは受け付けで名前を記入されている来魔戦参加者に均等に分配されます。
「あぁ、それで昨日はワンさんにジェムを取ってないか確認してたんスね。」
「まぁ、確認っつってもアレは毎度のやりとりだから皆冗談半分だけどな。」
(『半分』……あと半分は疑ってんスね。)
アッシュは心の中で苦笑い。
作業は単純だった。
決められたエリア内に散らばっているジェムを拾って、支給の麻袋に詰めて各所に点在するリアカーに積むだけ。
後はドーサ商会の人間が満載のリアカーを空のリアカーに入れ替えて持って行く。
アッシュにはジェム拾いをしていると何となく見えてくるものがあった。
落ちている量が多い場所は激戦区。
ジェムの大きさからはモンスターのサイズや強さがぼんやりではあるが把握できた。
(コインサイズのジェムが散乱しているのは多分……ニータスロックビーやシーニガービーのような昆虫型だな。)
(小石大サイズは多分……鳥型か?)
そして、アッシュがゾッとしたのは拳サイズのジェムが大量に落ちている場所だ。
(この大きさなら多分、デザートサハギンクラスだ。)
(それが大量に有るという事は…………)
アッシュにもその激戦ぶりは容易に想像できた。
その証拠にアッシュが周囲を観察すると、床や壁に血の跡が……、そして力尽きたであろう戦士達が握っていた武器や防具がそこにはまだ残っていた。
アッシュはその戦士達の想いを受け取るかのようにジェムをひとつずつ丁寧に袋に入れた。
暫くドウズとペアでジェム回収を進めていると、アッシュは一際大きなジェムが落ちているのを見つけた。
「そりゃ大物だな。それ、アレだぜ?多分、お前が倒したサンドワイバーンだぜ。」
アッシュの背後からドウズが言う。
(そう言えば…………)
とアッシュが視線を上げると、そこはアッシュが寝泊まりしていた宿屋『シュック・ハック』の前だった。
「お、黒マントの兄ちゃん、そのデッカイのも兄ちゃんがやったのかい?」
緑色の21番のバッジを付けた男性が声をかけてきた。
「あ、君!例の黒マントの!!」
アッシュは声の主に目をやる。
(同じ緑色の21番バッジの女性。この男性のペアだろう。)
「ねぇ、君でしょ?2号門でサンドワーム真っ二つにしたって。そのサンドワームからジェムがいっぱい取れるって向こうで話題になってたわよ。」
「そうだゼ、あっちでリアカーが足りねぇって、人海戦術でてんやわんやみたいだゼ?やるなぁ兄ちゃん。」
21番の男性がアッシュの肩をポンと叩く。
「え?な、何かすいません…………。」
大変な事になっていると聞いて、反射的に謝るアッシュ。
「何で謝ンだよ?兄ちゃんのお陰で大量だゼ。」
「…………俺、ちょっと手伝いに。行きましょうドウズさん。」
「ダメだ。あっちは赤のエリアだからな。他のエリアには行けない決まりになってる。」
「そうよ、君はサンドワームを倒したんだから回収は任せておけば良いのよ。」
と21番の女性。
「は……はぃ。」
とは返事をしたもののまだ気にはしているアッシュ。
それから3時間の作業で街中のジェムはほぼほぼ回収された。
〜 再び噴水広場 (夕刻) 〜
まずはジェム回収が完了次第、シェルターに避難した人達が解放される。
それにより、街には女性や子供、老人達の姿が増える。
「カーン!カーン!カーン!カーン!!」
街で一番高い場所に有る鐘が鳴る。
「お、どうやらジェムの分配が終わったみたいだ、受け取りにいくぞアッシュ。」
〜 『ジェムの分配(ドーサの場合)』 〜
回収した全てのジェムの中からまず
武具商会とアイテム商会への補填分が差し引かれる。
次に残りから、来魔戦で家族を失った人達へのお悔やみジェムと治療施設への費用が差し引かれる。
そこから建築物修繕費の見積もり分のジェムが差し引かれる。(見積もりを超えた分はドーサ商会から補填される。余った分は次回までの蓄えとなる。)
更に一定量の褒賞用ジェムが差し引かれる。
最終的に残ったジェムの総量を今朝の参加者名簿に記入された人数で割る。
「さて、アッシュ。お前は欲しい用途のジェムは有るのか?」
「欲しい用途の???」
「例えば赤なら火、青なら水……みたいにジェムには多少の属性成分が含まれている。まぁ、日常生活で人気なのは赤とか青とかだな。」
「へぇ。」
「『へぇ。』ってお前、ジェム使った事無いのか??」
「使ってる人は何人か見た事あるけど……俺の村ではあまり使われてなかったな。火は起こして、水は汲んでましたから。」
「そ、そうだな確かにお前の村ではあまり見かけなかったな。」
ドウズは顎に手を当てて思い出す。
「まぁ、いい。…………で、だ。ジェムの受け取り口は別れていて欲しいジェムの色の場所に並べばその色ばかり集めたジェムが受け取れるし、こだわりがなければあっちの混合ジェムに並べば色分け無しのランダム分配のジェムが受け取れる。順番は早い者勝ちだから狙ってるジェムがあるなら早く並んでこい。」
「ドウズさんは?」
「俺は少し様子を見てから行く。俺は人気のジェムよりも、後々価値が上がりそうなジェムが欲しい。要は『使用』『換金』するより、『売り』狙いだからな。」
「……分かりました。じゃあ並んできますね。」
そう言ってアッシュは混合ジェムの列へと向かって行った。




