『(反転胴)Hantendo Switch』
突進の勢いそのままにアッシュは大剣を振り下ろす。
ドォォンッッ!!
大剣は空振り、舞い上がる砂塵。
パン、パンッ!!
サンドウィッチマンは軽い身のこなしでアッシュの初撃を躱し、アッシュのボディに拳で軽い連打を入れる。
「群れ立つ焔よ、地を覆い…………」
サンドウィッチマンの詠唱を止める事が出来ない。
(アイツ、戦いながら詠唱できるのか。)
アッシュに焦りが見える。
ヒュリンッ!
大剣を叩き付けた態勢からの斬り上げるような素速い横薙ぎ。
(捉えた!)
だが、サンドウィッチマンは体を仰け反らせアッシュの大剣の軌道より更に下を掻い潜り、そのままバク転の要領で移動しアッシュとの距離を取る。
タンタンタンッ!…………ササッ!!
サンドウィッチマンはバク転からの着地後、素速いステップで右半身と左半身の胴の構えの前後を反転させ、杖の先端をアッシュへ向ける。
「……我が覇を照らす王の炎となれ。」
ボゴォゥッ!!
サンドウィッチマンは詠唱を終え、杖の先端から火球が放たれた。
アッシュは咄嗟に大剣を横腹で防御する態勢を取る。
リリアも即座に反応し、アッシュの前面に風のバリアを展開!
バリンッッ!!
「キャアッ……!」
火球の威力に風のバリアは軽々と破られ、アッシュの構えるドラゴンキラーに直撃。
ボグォワッッ!!
ドラゴンキラーが炎に包まれる。
「チィッ……ぐぐ、ギが…………」
耐火性に優れるドラゴンの皮から作ったグローブを装備しているとは言え、アッシュの手は燃えるように熱い。
アッシュはドラゴンキラーに炎を纏ったまま正面に構え直した。
「リリアッ!空螺旋だ!!」
リリアは黙って頷き素早くドラゴンキラーを渦巻く風で包み込む。
「どぅおりゃ!返品だぁッ!!喰らえ『火炎空螺旋!!』」
アッシュは受けた炎をそのまま空螺旋に混ぜ込んでサンドウィッチマンへと放つ!
タンタンタンッ…………
サンドウィッチマンは再度魔女から武道家へと態勢をスイッチし、軽いステップで『返品』された空螺旋を華麗に躱す。
「クソ!あの態勢入れ替えが厄介だな。」
「あまねく熱を奪い去る、沈黙の冷気……」
アッシュに考える間を与えず、次なる詠唱に入る。
「アイツ、マジかよ……させるか、ぜりゃぁ!!」
詠唱阻止の為、アッシュはどうしても攻撃を仕掛けなければならない。
(攻撃させられてる感がしてイラつくぜ。)
振り下ろされた大剣!!
トンッ!スィー…………
サンドウィッチマンはドラゴンキラーの横腹を掌で押して軌道を変える。
「流転の時すら凍てつかせる氷棘…………」
「さぁせぇるかぁッ!!」
スフィンッ…ジャリンッ…ドスッ!!
横薙ぎ、斬り下げ、突きの三連撃。
タンッ、タンッ、ザザッ…………クイクイ。
サンドウィッチマンは華麗な足捌きで連撃を躱し、指で招くような仕草でアッシュを挑発する。
「ピリオドを刻む、絶対の氷刃となりて…………」
その間にも左半身で詠唱を続ける。
「リリア!急いで砂を巻き上げろ!!」
バフォッ!!
リリアは返事を省略し、最速で砂を巻き上げる。
アッシュからはサンドウィッチマンが、
サンドウィッチマンからはアッシュが視界から消える。
アッシュはこの一瞬の隙に後退し、サンドウィッチマンから距離を取る。
「どうだ、目標が見えなきゃ魔法を当てられまい!」
「だけど、アンタも相手が見えてないじゃない。」
リリアの的確なツッコミ。
「いや、俺には見えている。」
「………??」
アッシュが妙にカッコつけている。
こんな時は大体少しズレている。
リリアは経験から知っていた。
だが、一応聞いてみる。
「相手の殺気を感じ取る……とか、心の眼とかってやつ??」
「いや、物理的に見えてる。」
そう言いながらアッシュは指を差す。
そこには、舞い上がる砂埃の奥で、サンドウィッチマンの魔導の杖が魔力を溜め込みぼんやりと発光していた。
「あ、……あぁ…………。」
リリアはそれ以上発する言葉を持ち合わせない。
サンドウィッチマンはターゲットを見失い、詠唱を止めているようだった。
(今が好機!)
発光する杖を頼りにアッシュは気配を消してサンドウィッチマンに近付き一気に斬りかかる。
「貰った!!」
ガギィィィィィィンンッ!!
咄嗟にサンドウィッチマンが杖でアッシュの攻撃を受け止める。
「何!?動きが読まれた!!」
(コイツ、気を読むタイプの武道家かッ!)
(アンタが「貰った!!」とか言うからじゃないの?)はリリアの心の奥にそっと仕舞い込まれた
ギャリギャリギャリ…………
ドラゴンキラーと魔導の杖の接触点から摩擦音が響く。
(防御されたとはいえ、初めて刃が当たった!)
「捕まえたぜ!!」
アッシュは両腕に力を込め、更に上から体重を乗せる。
サンドウィッチマンの片膝がガクッと沈む。
だが、杖でドラゴンキラーを防ぎつつ眼光鋭くアッシュを睨むと薄く笑ってから口を開く。
「汝の熱を奪い、永久に沈め。」
「コイツッ!!まだ詠唱を!!」
詠唱が完了。
杖の先端が一層強く発光し、サンドウィッチマンの背後に20本程の氷の棘が出現。
(ヤバイッ!!)
ダァンッ!!
アッシュは身の危険を感じ取り、ようやく得た優位をあっさりと捨て、身体能力のほとんどを脚に振り切ったバックステップで緊急回避。
サク、サク、サク、サクッ…………
アッシュが迅速な判断で空けた間合いには4本の氷が突き刺さっていた。
「ハァ、ハァ、ハァ…………危うく串刺しで氷漬けだぜ。」
「『漬け』かは知らないけど、串刺しは免れたわね。」
と意外と冷静なリリア。
「だけどまだあの氷、10数本は有るぜ?」
「ほう……なかなかの反射速度。あの態勢からのあの距離でよく躱せたな。」
サンドウィッチマンからの厭味を含んだお褒めの言葉。
「テメェ、呪文以外も喋れたのかよ。」
アッシュも厭味で応戦するが、サンドウィッチマンは既に何度か喋っている。
「さて、そろそろトドメとしようか。」
そう言うとサンドウィッチマンの背後に浮かぶ氷の棘の先端が一斉にアッシュの方へと向いた。
(チィッ、ヤバイぜ。遮蔽物も何も無いこんな砂漠であの数は避けきれん!)
「リリア、何か良い手は!?」
サンドウィッチマンが杖を振り上げ、発射態勢。
「ダメよ、私の妖力ではあの魔法は防ぎ切れないわ。」
(せめて、数発ずつなら避けられるか?)
サンドウィッチマンはアッシュに向かって杖を振り下ろす。
「全弾!?アイツ!一番やって欲しく無い事を!!」
アッシュはドラゴンキラーを砂地に突き立て、その影に身を潜ませる。
「チィ、躱……しきれる…か?こんなんで。」
(何とかなれ!!)




