『棒棒 鶏とガンガン行く男』
「ハイヤァ!……ハイッ、ハイィィィッ!!」
商店エリアでは小太りの丸眼鏡サングラスの男がニワトリのようなモンスター複数羽を相手に闘っている。
丸眼鏡の男が両手に握るは棘付き棍棒。(※正確にはフランジドメイス型)
相手にするは『ニワトリス』
〜〜 『ニワトリス』 〜〜
雄鶏の頭と体に、ドラゴンのような翼を持つ怪鳥。
上位モンスターに『コカトリス』等が存在する。
コカトリスは尾の部分が蛇の尻尾の形状である為、外見で見分ける事ができる。
アッシュの見ていたモンスター図鑑には『コカトリス』の更に上位種の『◯◯トリス』というモンスターが記載されていたが、文字が掠れてしまっていて何と書いてあるのかは判別できない。
ニワトリスの爪には毒が有り、傷を負うと血液の凝固作用が失われ、止血や治療を施さないと成人男性なら半日で失血死に至る。
弱いながらも土属性の魔法を使える為、口から石つぶてを吐き出す事も可能。
因みに、ニワトリスは活け締めにするとジェム化せず、取れる肉は美味。
「ぎゃぁ~ぎゃぁ~…………」
ニワトリスの低く耳障りな鳴き声が響く。
「クソっ、このッ、来やがれ!!」
商店街では住民達が武器屋の支給品を手にあちこちで交戦している。
「ハイ、ハイ、ハァァァイッ!!」
ドン……ドドンッ…………
丸眼鏡の男が棍棒を振るう度に鈍い音が響きニワトリスがジェムと化し散ってゆく。
(本当は生け捕りシて、ニク売りたいケド……今は無理ネ。)
ニワトリスは鋭い爪を立てて丸眼鏡の男に一斉に飛びかかる。
丸眼鏡の男はそれらを華麗に躱しながらニワトリスの頭部を狙おうとした瞬間、頭上から石が降って来る。
「あ痛ッ!何するネ。」
ニワトリスは口から石を吐き出しながら頭上を飛び回る。
丸眼鏡の男は地上のニワトリスを蹴散らしながらジェムを拾い上げ上空のニワトリスに向かって投げつける。
(こんな事なら飛び道具も練習しとくだたネ。)
(うとしいネ。)
「随分と揶揄われているみたいじゃないか?」
丸眼鏡の男は声のする方へ視線をやる。
そこには眼帯の男が気取ったポーズで立っていた。
「丁度いいとこ来たネ。お前の下品な武器でアレ撃ち落とすネ。」
「下品とは何事か!俺の素晴らしい発明品を!!それが助けを乞う者の物言いか!?」
「お前の発明品は認めてるネ。下品なのはお前のネーミングセンス ネ。」
丸眼鏡の男はそう言いながら襲って来たニワトリスを3羽片付ける。
「そう、コレは『悪さ』を働く者を退治する為に開発し、試作を繰り返し……38番目にして遂に完成した我が最高傑作。」
「ヤメロ、言わなくていいネ。」
眼帯の男は自作の武器を天に掲げ叫ぶ。
「その名も『悪さ ◯◯◯(ピーー)38』」
(※コンプライアンスに配慮して伏せ字になっています。)
〜〜 『悪さ◯◯◯(バキュンバキュン)38』 〜〜
眼帯の男がこの世で『悪事』や『悪さ』を働く者を退治する為、独自に開発した遠距離武器。
いわゆるピストルである。
リボルバー式。
8発装填可能。
試作に試作を重ね完成したその38作目。
通常の金属製の弾丸の他、ジェムを加工して作った『属性弾』も撃つ事が可能。
素晴らしい発明品では有るがネーミングが致命的に下品。
「お前は毎回ソレ言わないと気が済まないカ?」
と丸眼鏡の男は溜め息交じりに言う。
バンッ!バンッ!……ババンッ!!
「俺のキメ台詞だからな。」
と軽口を叩きながら上空のニワトリスを次々と撃ち落としてゆく。
ヒュィィィイイイッッ…………!!!
遥か上空から薄い風切り音が近付く。
ピュィッ!
咄嗟、眼帯の男が何かを感じ身を躱すが頬に薄っすら血が滲む。
直後、
ドォォンン……………………
砂埃、舞う。
地面に窪み。
…………姿は、もう無い。
「何ネ!?」
丸眼鏡の男には何が起きたか理解できていない。
眼帯の男は『知っている』というようなそぶりで飛び回るニワトリスより遥か上空を凝視する。
そこには大きく翼を広げた銀色に輝く『鷲』の姿。
〜〜 『砂漠の鷲』 〜〜
全身メタリックシルバーの砂漠に住む鷲型モンスター。
身体や羽は金属のように硬いが、見た目より軽い。(約7〜9kg)
上空から時速約300〜350kmで急降下し、突き刺さるように体当たりしてくる。
直撃なら致命傷、外れてもそのまま地面を削り砂埃で目眩ましした瞬間に上空へとエスケープする。
別名:『砂漠の流星』
「出たな、砂漠の流星……俺の弾丸と勝負だ、デザートイーグル!!」
眼帯の俺はデザートイーグルが急降下の態勢に入る瞬間を見極める。
「そっちも良いが、こっちのも撃ち落として欲しいネ。」
と丸眼鏡の男が悪態をつく。
眼帯の男は気にせずデザートイーグルとのスピードロマン対決に集中している。
……………………スゥ
デザートイーグルが急降下の態勢に入るのを見逃さなかった。
眼帯の男は『悪さ◯◯◯(ピロピロピロ)38』を静かに構える。
ヒュィィィイイイッッ…………!!!
微かな風切り音。
真正面。
「喰らえッ!」
ドゥッ! ドゥッ! ドゥゥッ!!
3発!連射!!
キャィン! チュィン! ピュィンッ!!
火花が散り、弾丸は3発とも命中したが弾かれた。
「!!?何ぃッ!!」
弾かれたと判断した瞬間、横飛びで回避する。
ズドン!!
眼帯の男がさっきまで立っていた地面に穴が空く。
そこにデザートイーグルの姿はもう無い。
「何て硬さとスピードだ。」
そう言いながら腰袋をまさぐる。
「次はとっておきを喰らわせてやるゼ。来やがれ。」
と取り出したのは徹甲弾だ。
ガシャン!……パラパラパラ…………
チャキン!
眼帯の男は弾倉の弾を全て弾き出し、特製の徹甲弾を一発込める。
……………………スゥ
旋回していたデザートイーグルがまた降下態勢に入る。
ヒュィィィイイイッッ…………!!!
鋭い風切り音。
「喰らえッ!」
バギュゥッ…………!!!
重厚な銃声が響く。
ズドム。
デザートイーグルの翼の付け根に徹甲弾が喰い込む。
(まだだゼ。ソイツは爆破属性のジェムから精製した特殊徹甲弾……吹き飛びな!)
ドォォンッッ!!……………………
デザートイーグルは急降下しながら空中で爆散した。
「…………ッシ!!」
眼帯の男はロマン対決に勝利し、拳を握る。
「…………ッシ!!は良いから、こっちも頼むネ。」
丸眼鏡の男はまだ必死に残りのニワトリスを薙ぎ払っていた。
「あ、スマねぇ…………忘れてた。」




