051:社畜、ディストピア構想を聞く
世界が改変できたら普通はどうします?
チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!
ここにいるのは妄想を聞く社畜
今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる
「……では続きをやっていきましょう」
午後は峯本さんのこの一言で始まった。
峯本さんは、心なしか肌がツヤツヤして顔色が明るくなったように見える。
……化粧し直したのか、いいもの食べたのか。
俺がなし崩しでもタスクを受けるように見えたから、機嫌が良くなったのかもしれん。
……どちらにしても、俺にとっては迷惑極まりないんだが。
「よろしくお願いします」
こう返すしかないところがサラリーマンのツラいところではある。
「午前中の最後でお話した仕様なのですが、本社としましては全員の入力記録とできれば定期的なスクリーンショットの撮影ができることを追加として要望します」
……おっと、想像の斜め上を行ったぞ。
キーロガーを仕込みたいのは何となく分かってた。
まさかデスクトップの撮影まで行わせようとしているとは。
これは完全に社員の行動をすべて監視するシステムですよ?
以前いた会社には、Webカメラと連動してトイレに行った時間まで休憩時間にされていたところがあったが、おそらくこれはその上を行く。
キーロガーにスクリーンショット、マウスの動きの把握。完璧な監視体制だ。
だが、そのディストピア構築には大きな問題がある。
「キーロガーにマウスの動きの把握、一定間隔のスクリーンショットまで行わせるとなると、回線の帯域が絶対的に不足しますよ」
俺は率直な意見を言った。
「同じ拠点だったら何人まで全ログを取れますか?」
今度は何人までいけますかときた。
俺は頭の中で送信量を概算して答える。
「同じ拠点で、帯域をあまり圧縮しない方式と考えれば、せいぜい2人が限界ではないかと思います。拠点に別サーバーを立てて、夜中に送るという方式を取ればまた別だと思いますが」
「拠点ごとの別サーバーは難しいですね。ソフトのアップデートなら問題ないと思いますが、予算の問題が出ますし……」
なるほど、予算か。
おそらく本社側は金をかけたくないから俺に依頼してきている。
……それよりも問題なのは他のベンダーに振ると情報が漏れてしまうことだろうな。
「予算をかけられないというのであれば、人数を抑えるしかないと思います」
俺の言葉に予想外の満面の笑みで峯本さんは返してきた。
「もちろん、全員を対象にしたいわけではありませんので、そこはご心配なく。社長室として仕様に入れて欲しいのは、IDによる詳細記録のオンオフ機能です」
……あ、それはさらにヤバイやつだ。
特定の社員をターゲットにして記録を取るということは、そいつを絶対に陥れてやるという仕組みを構築するということだ。
それに加担しろと?後から絶対恨まれるやつじゃん。
大体開発2課の会議室で話す内容ではないと思うんだが。
壁ペラペラですよ?ここ。
……いや、ちょっと待てよ?今この話を知ってるのは俺と峯本さんだけだ。
これでどこからか情報が漏れたとして、疑われるのは真っ先に俺じゃないか。
『壁が薄くて外に漏れ聞こえてました。』なんて言い訳するだけ無駄だろうし。
繰り広げられている会話の内容からしたら、外で聞いてるやつがいたら飛び込んでくるような内容だし、今黙ってても俺に聞いてくるだろうしな。
「あと、もう一点。各拠点の防犯カメラに問題点があることが分かりました。佐藤さんのレポートのおかげです」
「……それはどうも……」
「防犯カメラに詳しい佐藤さんにこちらも改修していただきたいのです」
「え?防犯カメラもですか?」
「はい。各拠点はビルに備え付けの防犯カメラが多くて……先日のような事件が起こると本社側としては人員を割かざるを得ません。人員にも限りがありますので。できればこれも本社側に定期的にデータを流してほしいのですよ」
峯本さんは実に楽しそうに話している。
……そろそろ突っ込んでいい頃かな。
ディストピア作る気ですか?って。
11月より、連載周期が変わりました。
月水金の更新となります。
11/3に新連載を開始しますので、そちらもよろしくお願いします。
魔法少女?……さて、何のことやら……。




