050:社畜、仕様に恐怖する
世界が改変できたら普通はどうします?
チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!
ここにいるのは戦慄する社畜
今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる
「……以上のように社長の意向は、本社が現在の在席状態を把握することです」
「はぁ……」
峯本さん?無茶苦茶なこと言ってますよ?
……チャットアプリ立ち上げておいたらキーやマウスの動きで在席を判定するとか。
しかもログを送っていることをできるだけ悟られないようにするとか。
新しく設計し直すならともかく、既存のアプリに追加するのは頭おかしいとしか言えませんね。
……とまぁこう言えるなら俺はもっと出世できるんだが。
「検討しますので、少し時間をもらってもいいですか?」
こういう時に末端社員の俺が言えるのはこれが限界だ。
「そうですね。早目の昼休憩ということで。再開は13時からということにしましょう」
峯本さんは自分の腕時計をチラッと確認して言った。
確かに気がつくと既に午前中が終わろうという時間だった。
「では、また午後に」
そう言い残して峯本さんは颯爽と会議室から出ていった。
「……まいったな」
思わず天を仰いだ。
峯本さんはとんでもない爆弾を持ってきやがった。
よく考えなくても、完全な監視ツールじゃないか、これ。
ただ、幸いなのは在席を確認できるようにしたいだけということ。
キーロガーとして何をやってるかを監視したいわけではないということかな。
……多分午後にはそういうことを言われるんだろうけどな。
これはおそらく小山クローン滅亡計画の一端なんだろう。
あと、これやったら山南のアカウント使って連絡取れなくなるぞ。山南もどき。
そう考えた瞬間、会議室の机上に置いてあったノートPCに山南もどきからチャットが飛んでくる。
『山南:めんどくさいなぁ、なんとかならないの?佐藤匠海』
結局お前はずっと見てるのな。俺が困っているところとか。
『山南:だって見てないと波に乗り遅れるじゃないか』
何の波だよ。全く……。
そもそも管理者アプリがスマホでしか使えないから、やり取りの手段としてうちの会社のチャットアプリを乗っ取ってるんじゃないか。
『山南:アプリは乗っ取ってないよ。使ってないアカウントを間借りしているだけ』
それが今後問題になるんだよ。
本社にログが送られるようになったら今までみたいにはいかないんだからな。
『山南:このアカウントだけログ送らないように出来ないの?』
それは例外処理になるし、実装に工数がかかるじゃないか。
あと、午後には多分画面のキャプチャも要求してくると思う。
どうやら小山クローンをあぶり出したいみたいだからな。
『山南:小山クローン!あんな面白いやつが他にもいるのか。是非見たいなぁ』
いらんいらん。あんなのが増殖したら会社が終わる。
……お前、絶対面白がってるよな。
そろそろうちの会社のPC以外で連絡取る方法を真面目に考えてくれよ。
あ、憑依システムだっけ?あれは却下な。
『山南:憑依システム、なんでダメなんだよぅ』
よく考えてみろよ。この辺で生き物といえばこの間のネズミか、そのへんにいる虫くらいだぞ。
そんなのとにこやかに談笑してたら救急車呼ばれるわ。
『山南:救急車は呼ばれないよ。せいぜい後ろ指さされるくらいで』
……それがいやだって言ってるんだが。
そもそもお前はこちらの思考をログで取れるんだから、スピーカーから一般人に聞こえない音声でも流してみたらどうなんだ。
『山南:あ、それは名案かも!ちょっと上司に言って予算取りしてくる』
動物に憑依する前に普通はそっちを思いつくだろ……。
うっかり焚き付けた格好になったが、あいつなら絶対ヘンテコなシステムを作ってくる。
掛けてもいい。
……俺は妙な方向で納得して昼飯を調達に出かけたのだった。
財布にはもちろん1000円生えてた。ちょっと贅沢しようかな……。
ついに目標にしていた50話到達です。
50話通して全く匠海に成長が見られません。
これからもこんな感じでゆるく続けていきます。
そして、50話到達を契機に、新しい物語の構想を進めたいと考えています。
そのため、更新を少しお休みし更新ペースを変更します。
11月から週3回(月水金)更新としますのでよろしくお願いします。




