034:社畜、退散する
世界が改変できたら普通はどうします?
チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!
ここにいるのは通知を無視していた社畜
今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる
本社から電話がかかってきたのはメールを送ってから2時間後だった。
……まぁそんなもんだろう。あまり早いと色々と怖い想像しちゃうからな。このくらい待つのが平和というものである。
「今までの状況と先程のメールの件で、本社としての基本方針が先程確定いたしました。」
「はい。」
「小山課長代理は本社で各種研修を受けていただくことになりました。」
「……はぁ。」
我ながら間抜けな返事である。
いわゆる日勤再教育ってやつだろ?それ。
あいつがそんな研修くらいで改心するものかね?
「そこで、そちらの体制が問題となります。」
こういう流れは非常に良くない。まさか俺を課長代理の代理とか言わないよな。
「確かに業務がかなり滞ってしまっているので、通常業務に復帰したいのは間違いないですね。」
俺は素直な感想を返した。
「そのために必要な役付きの方がそちらにおられないのも承知しております。ですので、本社としましては開発2課へまとめ役の方を一時的に配置することになります。」
おっと、まさかの人員補充のようだ。……まぁあいつ以外だったら正直誰でもいい上司になれるな。
……問題は一時的にというところか。研修終わったら結局あいつが帰ってきそうな感じだし。
「補充の方は明日の朝からそちらで勤務していただきます。本日はもう定時を過ぎていますし、今行っていただいている備品チェックはこの辺りで終わらせて退社下さい。」
「分かりました。キリのいいところまで片付けて上がります。今日はありがとうございました。」
「こちらこそ。色々助かりました、佐藤さん。」
あの微笑みが見えるようだな。……怖い怖い。
電話を切って高橋と横井に指示する。
「今日は備品チェックがキリいいところで帰っていいってさ。」
「キリの良いところ?じゃあ、いつでも帰れますね。」
「やった!俺もうこの作業イヤっす。」
どちらも帰る気満々だ。
俺達は事務所に施錠して帰宅の途についた。
◇
そういえば忙しすぎてスマホ見てなかった。
何か振動してたのは分かっていたが、スマホなんか見てたら峯本さんに怒られそうだったしな。
……スマホを取り出したら通知が79件とか表示されてて引いた。
山南もどきが面白がって状況にツッコミを入れていた形跡がある。
「……あいつ、暇なのかよ。」
歩きながら溜め息をつき、画面を親指でスクロールしていく。
『本社の人、登場』
『防犯カメラの動画データ消えてるとか』
『物理でケーブル抜くの斬新』
さすがに多すぎて全部は見る気にもならなかったが、中には気になるものがあった。
『次のレベルアップまであと30だよ』
経験値の現在値、秘匿事項から外れたのか。
管理者アプリを立ち上げると、画面の右下に100/130という表示が追加されていた。
どうやら山南もどきがアップデートしてくれたらしい。
UIに重ねてテキスト表示とか、やっつけ仕事にしか見えん。
まぁレベルアップの歌が消えてたら褒めてやろう。
「あといくつ表示は出来たから勘弁してよ。」
何か言ってるな。俺の最優先処理事項は歌の方なんだが。
……まぁいい。さっさと帰ってたまには酒でも飲むかな。総菜が割引になってない商店街を歩くのは本当に久しぶりだ。




