033:社畜、報告する
世界が改変できたら普通はどうします?
チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!
ここにいるのは指示を受ける社畜
今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる
「はい、社長室。峯本です。」
「開発2課の佐藤です。お世話になっております。」
「佐藤さん、どうしました?」
「急ぎで報告したいことがありまして。」
「はい。何でしょう。」
「防犯カメラなんですが、ポートハブのところで断線しているようです。テストしてみないと実際はわからないのですが、触ってしまうことになるので、指示をいただきたいなと。」
「少しお待ちくださいね。」
受話器からは保留音が流れ出した。
◇
5分は待っただろうか……突然保留音が止まった。
「佐藤さん。どういう状況で断線しているか調査お願いできますか?」
「わかりました。現状の現場写真を撮って送ればいいですか?」
「そうですね。それでお願いします。」
「あともう一点。」
「通常管理はポートハブの扉には施錠されてるのですが、施錠されていなくて、小山課長代理のメガネが内部においてありました。」
「なるほど。小山課長代理が触った可能性が高いですね。」
「あと、昨日小山課長代理がポートハブの設置場所に入ったのを横井が目撃しています。」
電話の先で息を呑む音が聞こえたような気がした。
「……貴重な情報をありがとうございます。こちらも急いで対策を考えますので、これで失礼しますね。」
峯本さんはそれだけいうと電話を切ってしまった。
ツーツーという切断音だけが耳元で響いている。
そっと受話器を置きながら思わずため息が出た。
今の反応から察するに、峯本さんは犯人を断定したんだろう。
本社が今どんな状況かは分からないが、小山の処遇が一層悪くなることは想像できる。
……いつもなら、ざまぁ。と言いたいところだが、今回は何か釈然としない……。
「佐藤さん。峯本さんは何と言っていました?」
横井が心配そうにこちらを見ていた。
「現場写真撮って調査してくれと。その辺のノート繋いで上下流にPING打てばどっちが切れてるか分かるだろう。高橋は写真撮っておいてくれ。」
「わかりましたー。スマホでいいっすか?」
「それでいいよ。きれいに撮ってくれよ。」
「ういっす。」
俺はノートPCを持ってポートハブへと向かった。
ポートハブの前で高橋が何かをじっと見ている。
「あ、佐藤さん。カメラのLANケーブル、コネクター浮いてないっすか?」
よく見るとコネクターの爪が完全に外れている。刺さってない状態だ。
「もしかしてこれが原因か?」
「そうじゃないっすかね?戻します?」
高橋が無造作にコネクターを差そうとしたので慌てて止める。
「待て、まずは写真撮れ。証拠残しとかないと峯本さんに怒られるぞ。」
「あっ、あぶねー。峯本さんに怒られるのはまずいっす。」
高橋は慌てて写真を撮っていた。
「これは意識的にやらないと抜けないよな。ストッパーあるんだし。」
「そっすねー。この状況だと小山さんで確定っすね。」
高橋が他人事のように呑気に話す後ろで、横井が腕組みをしたまま冷静に言った。
「業務停止指示が出てる以上……あとやれるのは備品チェックだけですかね。明日は派遣の人使わせてくれないですかね。」
明日か、明日のことよりも今日をどうやって切る抜けるかだな。
備品チェックって今日中にどこまでやればいいんですかね……。
……とりあえずこの写真をメールで送って指示待ちか……辛い。
盛り上がってきたところですが、今週の更新はここまでです。
来週をお楽しみに。




