024:社畜、仕事に取り掛かる
世界が改変できたら普通はどうします?
チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!
ここにいるのは工数を気にする社畜
今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる
監査は終わった。
だが今日の仕事は残っている。
帰って早々上司の小山が何か自慢げに話していたが、失笑を抑えきれそうにないので、仕事を理由にして早々に退散した。
「山南:あいつ面白かったぜ。佐藤匠海にも見せてやりたかったよ。」
席に着くなり外のやつが話しかけてくる。
本社に行っている間通知が来ないなとは思っていたが、こいつは小山の方を見てたのか。
「山南:だってあっち面白そうじゃん。」
お前もいい性格してる。
せっかくだから会議の内容教えろ。
「山南:それは教えられないな。禁則事項になるし。」
禁則事項ってあれか、どっかのラノベに出てきてたやつ。お前のネタちょっと古くないか?
「山南:僕は佐藤匠海に合わせてるからね。」
それはありがたいが、いちいちネタ放り込むのはやめてくれ。ツッコミが追いつかん……。
……そういやこいつは山南が復帰したらどうするつもりなんだろうか。
「山南:その時は佐藤匠海にアカウント作ってもらうよ。」
そもそも別のシステムで連絡するとか考えないのか、こいつは。
「山南:だってめんどいじゃん。そういうの作るの工数掛かるんだぜ。」
お前が工数とか言うな。ヘタレエンジニアが。
「山南:こっちも残業制限とか色々あって面倒なんだよ。予算管理もあるしさ〜。」
そんなことは知らん。優先度から言ったらまずはレベルアップの時の歌の廃止かあといくつでレベルアップするかの明示、その次が専用の連絡システムの構築だ。
「山南:しょうがないな〜。考えとくよ。」
考えるんじゃなくて、上司とやらに掛け合って実行しろ。
「山南:あ、いけない。そろそろミーティングの時間だ。またあとでね。」
山南を騙る外のやつは、勝手に言い残すと急に黙り込んだ。
……まぁいい。お互い仕事しような。
手元の時計を見るとちょうど18時である。
派遣さんが「お疲れさまでしたー」と挨拶を交わしながらエレベーターホールへ消えていき、事務所にはカタカタと乾いたキーボードの音だけが響き始めた。
小山はさっきドヤ顔で帰っていったし、横井もとっくに家でくつろいでいるだろう。
さて、静かになってきたからやっと俺の時間だ。
俺は積み上げられたバグ報告の書類を手に取り、気合を入れた。




