021:社畜、本社に行く
世界が改変できたら普通はどうします?
チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!
ここにいるのは口裏を合わせる社畜
今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる
あの後色々あったが、今は3人でタクシーの中だ。
横井は後ろに座らせた。小山と並んで乗るなど俺は御免だ。
横井は最後まで上座が……などと抵抗してたが、強引に座らせた。
車内は特に会話もなく、ラジオの音だけが響いていた。
ふと気がつくと小山は後ろで何か呪文のようなものを唱えていた。小さくて聞こえないが、聞かないほうがいい内容だろう。
……もしかして管理者アプリで思考を覗けたりしてな……。
ふと思い立って管理者アプリを立ち上げてみる。
「いつの間にかレベル上がってるじゃないか。なかなかいいだろ? このアプリ」
立ち上げた瞬間から外のやつが話しかけてくるが、そんなことは無視して小山のステータスを確認する。
Object.Human.Oyama_ryoutarou
ステータスはどうでもいいや、思考とか見れたら面白いんだが。
「佐藤匠海は管理者レベルが低いからまだ無理かなぁ」
やはりそうか、レベル3程度でそんな事ができるなら苦労はしない。
あ、思い出した。
あのレベルアップの歌をどうにかしないと俺の精神が死ぬ。
「あ、あのシステムうまく動いたんだね。楽しいだろ? みんなから祝福してもらえるの」
お前は頭のネジを何処かに落としてきたんだろ。
あんなものは即刻廃止しろ。街中でレベルアップした瞬間に俺が詰む。
「えー。あれ苦労したんだぜ。キミがそういうの好きだって言ってたから実装したのに」
言ってないし、いつの話だそれは。
「高校生くらいのログに書いてあったよ」
そんな昔のことは忘れた。今の俺の趣味じゃないから変更してくれ。
もしくは、あといくつでレベルが上がるか見えるようにしろ。
「それも面倒くさいな。仕様だってことにしといてよ」
お前、仕様って言えば何でも通ると思ってるだろ、そういうのは2流っていうんだぞ。
「上に報告しとく」
頼むぞ。お前の頑張りで俺の精神の平穏が保たれるんだからな。
「今日の本社でのリコメンド会議、君たちは私の言うことに頷いていればいい。分かったな」
急に小山が喋りだしたので、俺はそっと管理者アプリを閉じた。
「あの、個別に質問されたらどうすればいいですか?」
横井が至極もっともなことを聞く。
「その場合はすべて小山さんの言う通りです。と回答しなさい」
それは無理だろ。こいつ頭おかしいんじゃないか?
「はぁ」
横井も理解できなかったと見えて気のない返事を返す。
小山はまだ何か言いたかったようだが、運転手にその言葉を遮られた。
「お客さん。到着ですよ」
俺は支払いを行い、タクシーを降りた。
小山は車を降りさっさと歩き出していた。
横井は小山の後に付いていったようだ。
俺はわざとゆっくり歩き、入口に向かう。
指定されたのは202号会議室。
待っているのは、あいつが思い描くような都合のいい話じゃないはずだ。
俺は階段でゆっくりと2階へ上がった。
土日は更新お休みです。
月曜日をお楽しみに。




