020:社畜、茶番を眺める
世界が改変できたら普通はどうします?
チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!
ここにいるのは本社の人に立ち向かう社畜
今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる
10分の休憩と言われたので、とりあえずトイレと水分補給をしようと席を立った。
トイレで用を足したあと、自販機でコーヒーを買いその場で飲んでいると本社の峯本さんがやってきた。
「佐藤さん。バッチリでしたね。私たちの手助けいらなかったですよ。」
……手助けする気は絶対なかったよな。
「いやいや、結構答えに詰まってたと思いますよ。」
俺は一応社交辞令で返しておく。
「午後にリコメンド会議ありますから、佐藤さんともう1人あまり経験がない方がいるといいんですよね。今後のためにも。」
……あ、そういうのあるのか。さすがにそれは山南の資料にはなかったな。
事前会議には高橋が行ってたみたいだから、行くなら横井か?
「事前会議に出ていた高橋という者がいますが。」
「出来たら本当に未経験の方がいいですね。」
なるほど。それなら横井だな。
「それなら横井という者がいますね。」
「横井さんですね。ありがとうございます。」
峯本さんは一礼して去っていった。
そしてそれを見ていたのか小山が寄ってきた。
「おい、何を話していたんだ?」
「いえ、午後のリコメンド会議に私ともう一人経験の浅い者を連れてきて欲しいとのことでしたよ。一応高橋を推したんですが横井がいいそうです。」
小山は俺の言った内容が気に食わなかったようだ。
俺を指さしながら怒りをあらわにして言った。
「佐藤くん、君はこの部の責任者でもないんだから勝手にそういうことを決められても困るんだよ。もっと自重したまえ。このあとの聴取ではくれぐれも余計なことを喋るんじゃないぞ。」
小山はそれだけ言うと足音を響かせながらトイレに向かって去っていった。
……何なんだ、こいつは……。
◇
休憩時間が終わって再び会議室である。
ドアを開けて入ると、本社の緒川さんと峯本さんはすでに手元のノートPCを開いて待っていた。
「それでは、労務および業務管理についての確認を始めさせていただきます。あ、確認と言っても形式的なものですから。」
緒川さんが形式的とわざわざ付け加えた。
……どう考えてもおかしいと思うがな。俺なら。
しかし小山はそんなことを疑問に思わなかったようだ。……幸せなヤツ。
「では業務管理について教えていただけますか?」
緒川さんの質問に小山は食い気味に答えた。
「ええ、何でも聞いてください! うちの部署は私が徹底してタスク管理を行っておりますので、無理な残業や業務の偏りなどは一切発生しておりません!」
高橋から聞いてはいたが、こいつ完全にヤッてるな。
緒川さんは顔はにこやかにしたまま聞き手に回っている。
小山の話は一向に止まる気配がない。
峯本さんの手はキーボードを叩いているが……どう見てもあれはメモ取ってないな。
さすがに聞くのが疲れたのか緒川さんが小山の話を遮った。
「……分かりました。工数配分の詳細や勤怠データのエビデンスにつきましては、午後に本社の方で確認いたします。」
「承知いたしました! 午後のリコメンド会議には私も同行して、しっかりと状況をご説明させていただきます!」
胸を張る小山に対して峯本さんがすっと口を開いた。
「それから、午後の会議には現場の理解度確認のため佐藤さんと、もう一名……経験の浅い方にも同行をお願いします。横井さんでしたっけ?」
「えっ? 横井を、ですか……?」
「はい。本年度から経験が浅い方をリコメンド会議に同席させる方針となりましたので。先日の会議でもお伝えしたと思いますよ。」
小山の顔色がはっきり分かるくらい赤くなった。
「も、もちろん、承知しております。横井を同席させますので。」
……今の多分嘘だろ。峯本さん食えない人だな……絶対に敵にしたくないわ。
「それでは本社でお待ちしております。14時に202会議室をアテンドしておきますので、そこによろしくお願いいたします。」
本社の二人はそう言い残すと会議室を後にした。
……こりゃ午後の会議は荒れそうだな。
20話到達です。
まさかここまで話が進まないとは。




