012:社畜、無茶振りされる
世界が改変できたら普通はどうします?
チートで無双? ハーレム生活? 大金無双!
ここにいるのはいつものごとく理不尽に巻き込まれる社畜
今日もまた佐藤匠海による、自身の心の絶対的平穏を勝ち取るための戦いが始まる
「佐藤、ちょっと来てくれ。」
上司が急に俺を呼んだ。
これだけであまり良くないことが起きたのは分かる。
普通の指示ならチャットでするはずだ。
さっき電話で何やら話していたのは見ていたが、きっと厄介事に違いない。
「何でしょうか。」
上司のデスクの前に行き、表情をうかがう。
致命的なバグ?サーバー落ち?それともまた例のクライアントからの無茶振りか?
しかし、上司からの答えはこちらの想像のはるかに斜め上を越えていた。
「月曜日にISOの監査があるらしい。」
何だと?
「悪いことに本社の監査員も同行だそうだ。サポート要員だと本社側は言っているがな。」
さすがに目が点になってしばらく何も言葉が出てこなかった。
監査といえば枕詞に細かいとか面倒くさいが付くアレである。
そもそもISOの何たるかなど現場に教育などされていない。
担当者とかも知らん。
「うちの部署の担当は佐藤だったはずだな。よろしく頼むよ。」
ちょっと待て。そもそも担当とか何も聞いていないのだが?用意するものすら分からん。
「担当ということ自体が初耳ですが?」
思わず出た返答に対し、上司は笑いながら言う。
「本社からこの部署の担当は誰かと聞かれてね。私がこの部署での適任は佐藤くんだろうと思ってそう返答したわけだよ。」
あーなるほど。こいつは俺に全責任を押し付ける気だな?それならそれでこちらも考えることにする。
「何を用意しておけばいいか分かりますか?」
俺の疑問に対して上司はさらっと言い放った。
「そういうのは担当者が一番詳しいはずだがね?」
うん。想定通りだ。
こいつは何一つ分からなくて、俺に責任と自分の怠慢の全てを押し付ける気だわ。
「すみません。状況は承知しました。月曜日までには間に合わせます。」
俺は上司に一礼して振り返り自分の席へと歩き出した。
……お前がそういう風に出るなら今日の終電までと明日の休日出勤を全て使ってちゃんと準備しておいてやる。
……覚えてろよ。




