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傭兵王はガハハと笑う 〜え、半裸のろくでなしが伝説の英雄!? 木刀一本で全てをガハハと解決する、笑いと涙の人情無双ファンタジー〜  作者: 益城 茜


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北方編:アルカディア 「思わぬ会合2」

いつもお楽しみいただきありがとうございます。

予期せぬ出会いは、悪くない方向に進みます。

多くの謎を孕んで……本日もお楽しみください。

月、水、土曜 18時の週3回投稿になります。

月水土曜はガハハの日 お忘れなく。


荷車を放り出し、グレゴはガルハートへ抱きついた。


「……ようやく、お会いできましたわ……」


ガルハートは美女に抱きつかれ一瞬面を食らうが、白衣の尼僧であると認識した瞬間、鍋を落としそうになりながらも即座に警戒へ転じる。


「……お前、スターレを襲った法力僧だな。白銀の牢獄を半壊させた『氷の涯』の尼さんか?……出て来るな、リノン、ミーナ、カンナ」


裏口の扉から顔を出し、リノンとミーナは凍りついた。


「え……ガル? この尼様が……あの襲撃犯?」

「白銀の牢獄の……? 嘘でしょ……?」


ガルハートの様子にカンナも傭兵の顔で二人に促した。


「二人とも、おじちゃんの言う通り、下がろう。本当の修羅場になる」


その警戒する二人の影から、メイが姿を見せる。


「あらあら……本当に大変です~……」


ガルハートの言葉を聞いた瞬間、 弟カインが受けた“鎧が変形するほどの打撃”が脳裏に蘇る。

穏やかなメイの表情が変わる。 静かに“剣士の気配”が立ち上がった。それは周囲の空気を押しとどめる様な独特の気配だった。


メイの気配にガルハートが目を見開いた。


(……やべぇ。この姉ちゃん……気配が読めねぇ。使えるだろうとは思ってたが、ここまでとはな。信じられねえが、領主様と大差ねえ。“静の剣”だ……)


メイは太もものホルダーから短剣を抜いた。 その瞬間、グレゴとの距離が一気にゼロになる。


グレゴも反応し、法力強化した掌で短剣を受ける。


キィンッ!


皮膚が切れ、白い僧衣に赤い線が走る。


「まさか……!  地母神様のご加護を頂いてるこの右手を貫くなんて、ありえませんわ……!」


それでもグレゴは、片手でガルハートを放そうとしない。

メイの声は静かだが、怒りが滲んでいた。


「ガルハートさ~ん、下がってください。 その女はうちのカイン君を殺そうとしたんですよね?  姉として許せません」


ガルハートは抱きつかれたまま呻く。


「俺も離れたいんだよ! 何だこの力……!」


ガルハートをもってしても振りほどけない法力を超えた何かの力。

その時―― 女の声がガルハートの奥底に流れ込んだ。


(……リオネル……リオネル……  私の愛する、美しき黄金の賢者……)


記憶に無い名が、ガルハートの脳裏に響く。


(何だ? リオネル?  黄金の賢者?  お前は俺を知っているのか……?)


地母神の意志が、ガルハートの精神に触れようとする。 ガルハートは本能的に拒絶するが、“番の理”が強制的に繋ごうとする。


メイは短剣を構え、 グレゴは抱きついたまま法力を強化、 ガルハートは得体のしれない存在に抗っていた。


その瞬間――

ドンッ!!

裏通りの向こうから、片眼鏡モノクルを着けた黒衣の影が“風を切る音”とともに駆けてきた。上位法力僧の脚力。 人間離れした速度。


「――皆さま、一旦落ち着いて!!」


セラフィナ大僧正長が息を切らしながら駆け込む。


「白衣の尼僧が騒動を起こしていると聞き、馳せ参じました……!」


その声は、氷の涯の長をも止める“上位法力僧の威圧”を帯びていた。


メイの短剣がわずかに下がり、

グレゴはガルハートから手を放し、

ガルハートは深く息を吐いて地母神の残滓を振り払う。

リノンとミーナはまだ警戒を解かない。


セラフィナは深く頭を下げた。


「この度は――我が教団が、スターレ家と鋼鉄の牙へ多大なご迷惑をおかけしました……!」


その謝罪は、教団の“政治の頂点”としての言葉だった。


ガルハートは額を押さえながら言う。


「……中で話そう。ここじゃ寒いし、尼さんの謝罪は長くなりそうだ」


セラフィナは頷き、グレゴの肩へ手を置く。


「グレゴ。あなたは一度、法力を落としなさい。番の理が強く働いています」


グレゴは金色の瞳を揺らしながら、かすかに震える声で答えた。


「……はい、セラフィナ様……ですが……あの方は……」


「分かっています。ですが今は、教団としての責務が先です」


グレゴは唇を噛み、瞼を閉じた。再び開いたときには、金色だった瞳は黒に変わっていた

地母神の残滓が少しずつ薄れていく。


メイは短剣を収めながら、静かに言った。


「……ガルハートさん。中へ入りましょう。ここでは、弟の仇を前にして冷静でいられません」


ガルハートは苦笑しながら頷く。


「分かったよ、メイ姉ちゃん。俺も頭が痛ぇ……」


リノンとミーナはガルハートの両脇に立ち、カンナは裏口の扉を押し開け、一行は酒場の中へ入っていく。


セラフィナとグレゴも続いた。


◇◇◇


客のいない早朝の酒場は静かだった。 テーブルの上には仕込み途中の野菜や鍋が並び、 その中央にガルハートがどっかりと座る。

メイはガルハートの背後に立ち、 リノンとミーナは左右に座り、 カンナはカウンターに腕を組んで立つ。


セラフィナは深く一礼した。


「まずは――スターレ家のカイン殿を半死半生に追いやった件。 白銀の牢獄を襲撃した件。 鋼鉄の牙のクランハウスを不法に接収した件。 すべて、当教団の責任です」


メイの瞳が揺れる。 リノンとミーナは眉をひそめる。 カンナは静かに息を吐く。

ガルハートは腕を組んだまま、短く言った。


「……理由を聞こうか」


セラフィナは頷き、言葉を選びながら続けた。


「……皆様、教団の僧は、精神修養と肉体鍛錬の行により地母神の意志を『感応』し、その御力の一部をお借りする『法力』を授かるというのはご存じですか」


警戒を解かないままのミーナが答えた。


「……命綱無しで寺院の高い塔の清掃をしたり、すごい大荷物背負ったりしてるのは、街中でもよく見かけるから知ってるわ」


「ご理解は頂いているのですね、ここからは、教団内の話をさせてください。

高い信心と修養を重ねた者を選抜し、地母神様の御心に触れるべく武芸を重ねた特別な集団を『氷の涯』と我々は呼んでいます。私ども教団国家『アルカディア教国』の外交部と対を成す実働集団です」


ガルハートが笑いながら答える。


「ガハハ、実働集団か、さすがにお坊さんが自分たちを部隊とは言えねえか」


「氷の涯は強い法力を持ち、常人を超えた力が発揮できます。それと同等に地母神のご意志を受け取る感応も強いのです。そのご意志が……氷の涯の感応を狂わせました。 “世界樹”を求める神意が、彼女たちを過剰に駆り立てたのです」


メイが息を呑む。


「……だから、カイン君を……?」


「はい。グレゴ大僧正は本来、誰よりも自制心の強い方です。 ですが――地母神様のご意志が、彼女の判断を奪いました」


グレゴは静かに頭を下げた。


「……申し訳ありませんでした……」


メイは拳を握りしめるが、ガルハートが手で制した。


「メイ姉ちゃん。今は聞こう」


メイは悔しそうに唇を噛む。


セラフィナは続けた。


「……地母神様は、このザウロンに“世界樹”の存在があると神意を下されました。“世界樹”を求める神意があまりに強く、グレゴを含めた氷の涯も神意に飲まれ、今思えば無茶な行動を取ることになりました。私も同様です。これは決して許される事ではありません」


「つまりは、高僧であればあるほど地母神の神意に雁字搦めにされちまうって事か。因果な話だぜ」


「……現状を言うならば、地母神様の御意志はより強くなっています。ガルハート殿、貴方が現れたからです」


「……それは一体どういうことだ」


「あなたが“世界樹”の『黄金の番』であると、地母神様が御意思を下されたからです。本来、『黄金の番』は地母神様の娘のである“世界樹”と一生を共にする存在ですが…… 地母神様は、何故か御自身の為に『黄金の番』を欲しています。これは過去にも例が有りません」


ガルハートは眉をひそめる。


「……だから、俺に抱きついて離れなかったのか」


グレゴは震える声で答えた。


「……はい。地母神様の御意思が……あなたを“番”と認識して……」


ガルハートは深く息を吐いた。


「……厄介な話だな、神様に惚れられるなんて笑える気がしねえ」


セラフィナの説明が終わると、メイが静かに立ち上がる。


「……ガルハートさん。 私は、弟を傷つけた者を許すつもりはありませんよ」


ガルハートは頷く。


「分かってるよ。メイ姉ちゃんは怒らせると怖そうだからな、ガハハ」


メイは短剣を軽く抜き、刃を見つめる。


「でも……あなたが止めたから、私は剣を収めました。 あなたが“戦う必要はない”と判断したからですよ~」


ガルハートは苦笑する。


「メイ姉ちゃんの剣は領主様と同じ“静の剣”だ。激情に任せて振るうもんじゃねえ。俺が止めなきゃ、裏口はえらいことになってたぜ」


グレゴがメイを見詰める。


「……初手の一合で……掌を切られたのは……本当に驚きましたわ……」


メイは静かに言う。


「カイン君を殺そうとした相手ですもの。 本気で仕留めるつもりでしたよ~」


「すげえ姉ちゃんもいたもんだなカインのやつ、歌が上手い美人の姉ちゃんかと思ったら、とんでもねえ使い手だ。牙を巧みに隠してやがる」


「そんな~、ガルハートさんたら、美人だなんてほめてくれて~。恥ずかしいです~」


「いや、褒めたのはどっちかって言うと……」


殺伐とした空気がようやく柔らかくなり始めたのを見計らうと、セラフィナは深く息を吸い、全員を見渡した。


「ガルハート殿。 この場での謝罪は“非公式”です。 正式な謝罪と協議は――鋼鉄の揺り籠で行わせてください」


ガルハートは腕を組んだまま答える。


「……ああ。分かった。 ただし――氷の涯の連中は全員、シンバと俺の前で頭を下げてもらう」


セラフィナは即答した。


「もちろんです。 教団として、正式に謝罪いたします」


ガルハートは立ち上がり、セラフィナを見た。


「……それなりの要求をさせてもらうが、片眼鏡の尼さん。 覚悟はできてるんだろうな?」


セラフィナは静かに頷いた。


「はい。 教団の責任者として――すべてを背負う覚悟です」


「ガハハ、いい答えだぜ、セラフィナって言ったな。グレゴの尼さんも含めて最悪の出会い方だったが、悪くねえ! よろしく頼むぜ」


東にあった太陽が中天へと差し掛かりそうになるザウロン、朝の冷たい空気も昼の温もりへと変わりつつあった。


ガルハートの胸の奥では、地母神の呼び声がまだ微かに残響していた。


……リオネル……

……黄金の賢者……


その声は、まるで深い地の底から響くように、静かで、しかし確実に彼の精神を叩いた。


ガルハートはこめかみを押さえ、わずかに顔をしかめる。


(……何だよ、リオネルって……俺は知らねぇ名前だぞ……)


だが声は消えない。

まるで“思い出せ”と囁くように、淡く、しつこく、彼の内側を叩き続ける。


いつもご愛読いただいありがとうございます。

別作品の紹介

金髪女子高生と男装美女の人情バトル噺

重力1/100 〜コンテナ暮らしの宇宙人は世界を救う神らしい〜

https://ncode.syosetu.com/n7660me/

火木金の週3投稿です。

皆さんのご声援が有れば、上記より頑張ります。

どうぞ気軽にご一読ください

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