第三十一章
89日目。
目が覚めると、後頭部には柔らかい感触、目を開けると近くにマインの顔。
連日と同じ、マインの膝枕だ。
「目が覚めましたか? ひゅうごさん。」
「あ、あぁ、おはよう。マイン。」
「おはようございます。」
今朝は慌てて体を起こしてマインの頭と俺の頭をぶつける事は無く、落ち着いて体を起こした。
連日この感触で起きられるのは、例え用のない程に嬉しいのだが、その半面恥ずかしい。
どうして毎朝膝枕になっているのかを問いただしたいが、そんな言葉は出ない。
「あ、あの、マインはちゃんと寝てるのか?」
「はい。充分に。」
「な、ならいいが。」
これ以上詮索が出来なくなった。
いつもの朝の祈りを行う。
口には出さない。が、思いつく限りの全てのものへの感謝の念を行う。
目を開けるとマインが天を見上げている。
また光の柱が立ったか。
「じゃ、じゃあ、戻るか。」
「はい。」
「じゃあ、ヒョウ、また行ってくるな。」
「くぅん。」
「ヒョウ様、行って参ります。」
「くぅん。」
俺達はマインの部屋に着くと裏庭に剣を振る音を確認し、二人でそこへ向かう。
早朝から魔大剣を振るハーデンの姿があった。
「早朝から精が出るな。ハーデン。」
「あ、おはよう。師匠。」
「おはよう、ハーデン。」
「あぁ、マインもな。」
梨花亭に着いたが、まだ朝食には少しだけ時間がある。
「その剣を振って良いとは言ったが、実践で使う前に俺に確認させてくれないか。」
「は、はい。どうすれば良いですか?」
俺は木剣を取り出し、影を纏わせ構える。
「俺に打ち込んでくれ。」
「あ、はいっ。」
そう言ってハーデンが型をなどって重い大剣を振るって、鋭い突きから放ってきた。
俺はそれを型通りにいなし、型の続きを続けていく。
何の問題も無く、ハーデンは魔大剣を扱えている。
後半、時々型とは違う動きで奇襲を掛けてみるが、それをいともあっさりと魔大剣を駆使し、それを回避する。
それを見て俺は確信する。
ハーデンはこの剣を使いこなせていると。
「ここまでだ。ハーデン。朝食にしよう。」
「は、はい。し、師匠。」
一部始終を見学していたマインと共に、梨花亭の食堂に3人で向かい、朝食にした。
梨花亭の席に付くと二人に話す。
「今日はハーデンのダンジョンでの魔力量管理にしようと思うが、マインもそれで良いか?」
「は、はい。」
「悪いな。マインには物足りないだろうが、サポートしてやってくれ。」
「そ、そんな。大丈夫です。」
「ハーデンにはこの安全マージンと、魔力量管理を徹底的に覚えて貰わないといけないからな。」
「あぁ、あいよ。」
「結構大変なんだぞ。魔法剣を使えるようになると、もっと複雑になるからな。」
「はい、はい。何度もそう聞いてますよ。」
軽いな。今後の自分事の筈なのに。まぁ、良いか。
「様子見で俺も付いて行くが、途中で引き上げてガイスの所で昨日の続きをするから、その後は二人でしっかりと安全に頑張って欲しい。」
「おぉよ。」
「解ってます。」
「お、おぉ。それなら良いんだ。」
食前のお祈りを3人で唱え、食事をする。
「お前達は安全マージンを取りつつ何度がダンジョンから戻り、折角街中にあるダンジョンだからな、ここで昼食をとると良い。」
わざとアギレンに聞こえる様に話す。
「あぁ。」
「はい。」
俺はアギレンに弁当を頼む。
先日のクラブハウスサンドだ。
二人に教えた後に取りに来ると伝えた。
そして朝食を終え、食後のお祈りを唱え、ダンジョンへと向かう。
ダンジョンの入り口に着くと衛兵から声を掛けられる。
今日の門番は知らない奴だ。
「お前達はパーティー登録があるか?」
「あ、いや、この二人が昨日Eランクになったが、パーティーの登録はまだだ。」
「そうか。Eランクパーティーか。なら冒険者カードをそれぞれこの魔道具に当ててくれ。」
「これは何の意味があるんだ?」
「あぁ、これはな、Eランクパーティー以上のパーティーの踏破数確認が出来るんだ。」
「あぁ、それがそうなんだ。」
俺達はそれぞれカードを取り出し、一人づつ黒く四角い石の様な魔道具の上に載せる。
載せた瞬間石に刻まれた紋様が青く光った。
それが登録の合図なのだろう。
一人一人行う度にそれは光った。
「よぉし、それじゃあ登録は完了だ。行ってくれ。」
「パーティー登録はまだだけど良かったのか?」
「あぁ、パーティー登録は事後でも大丈夫なんだ。パーティー登録後はリーダーのカードだけで大丈夫になる。」
「あぁ、そうか。じゃあ行ってくる。」
ダンジョンの入り口に立つと俺は
「マイン、ここでハーデンにドレインを掛けてくれ。二つ共だ。」
「はい。」
「・・・・・・HPドレイン!」
「・・・・・・MPドレイン!」
「よぉしっ、ハーデン、油断なく行ってくれ。」
「お、おうよっ。」
「マインは索敵もな。」
「はい。ひゅうごさん。」
「俺は後ろから確認だけしてる。」
「あぁ。」
「はい。」
直後、
「左の通路からアント1体。その直後右の通路からも。左に進むとそれに挟まれる為ここで接敵。約10秒後。私が足止めします!」
「了解っ!」
完璧だ。
マインにはこの層は物足りないだろう。
そう思った数秒後、左から1体のアントが現れる。
俺も索敵で確認済みだが。
「もう少し引き付けますっ! アースバインドっ!」
「先ずはこの剣での初退治!」
そう言ってハーデンが踏み込み、アントの頭と胸の間の頚を一刀両断。
「2体目も足止めします! アースバインドっ!」
「・・・・・ファイアーボール!」
アントは小さな炎からでも激しく全身を燃えさせ絶命する。
やはり前の世界と同じで昆虫は何か全身に油の様なものを纏っているのだろう。
ただ逆に、狭い通路での炎の使い過ぎに、一酸化中毒の危険性を感じる。
1体目のアントの牙の回収をマインと共にコツを教えながら行う。
「右は行き止まりで魔物も居ません。左に行きましょう。」
そう言ってハーデンが左の通路に入り、マインは焼けたアントの牙を回収。
俺はマインが火傷をしない様、アントの頭に水魔法を掛け冷やしておいた。
「正面からアント2体、並んで来ます。接敵まで10秒。」
「了解っ。手前のだけ足止めしてくれ!」
「了解!」
「・・・・・アースバインドっ!」
「・・・・・ファイアーボール!」
ハーデンは2体同時に向かってくるアントの、奥のモノに炎を当てつつ手前の足止めされたアントの頚をまたしても一刀両断。
大した成長だ。これなら安心だ。
今度はハーデンに牙の回収のコツを教える。
燃えたアントの頭を水魔法で冷やした後にだ。
もう一体のはマインが回収している。
「今の2体の対処は凄く上手だったぞ。もう熟練の冒険者並みと言える。」
「そうなのか?」
「そうですか。」
「あぁ、今度はマインが牙の回収が終わりそうなのを確認し、ハーデンが先に進んでアントを引っ掛けて戻ってくるんだ。それを”ヘイト”って言うんだ。」
「この先アントが3体纏まって居ます。」
「そうか、なら丁度良い。ハーデンはそれをヘイトして来い。2体までなら先程の戦法だが、3体以上の場合、マインが先頭のを足止めし、二人で後退。そこでまた先頭のを足止め、そして向かって来る1体を処理。足止めしてでも炎でも一撃でも良い。今のお前なら足止めが無くても1体位なら対処出来るだろ?」
「あぁ、出来ると思う。やってみる。マイン、待っててくれ。」
「はい。お任せください。」
ハーデンは一人で通路を先に進める。そして急に踵を返し戻ってくる。
その後ろを3体のアントが追って来る。
「・・・・・アースバインドっ! 下がりましょう!」
「おうっ」
「アースバインドっ!」
「良しっ!これは俺がやる!」
そう言って2体の足止めされたアントを潜ってきたアントに、跳ねる様に飛び掛かったハーデンが回転して胸の間の頚を一刀両断。
まさかっ!あの大魔剣をここまで使いこなせているとは!?
続けて足止めされたアントにファイアーボールを一発ずつ。
ハーデンは奥のアントに向かって行き、まだ暑そうな頭を摘みながら牙の回収を行っている。
マインは手前の頚を切られた頭からの回収。
「姉ちゃん、ここらでアントはもういないんだよな?」
「えぇ、次に接敵するのは少し先です。」
「次の接敵でまた3体、4体と引っ掛けたら、魔法を5発で留められなかったかもだから、これで引き返す。で、良いんだよな?師匠。」
「あ、あぁ、充分だ。お前の力量も、管理も。俺が思っていた以上だ。安心して任せられる。」
「んあぁ、そこまでかぁ?」
「あぁ。そこまでだ。」
そしてハーデンが最後のアントの牙の回収に入る。
「しっかしこの素材回収ってのは厄介だなぁ。」
「そうか?」
「あぁ、この大剣では面倒だ。ナイフを持ってた方が良いかな?」
「確かにな。素材回収だけでなく、更に近接防御や、武器を取り落とした際の予備的にも有った方が良いだろう。」
「そうなのか。」
「あぁ、お前になら、あ、マイン。お前の短剣を貸して貰えないか。」
「はい。どうぞ。」
「ありがとう。」
マインから渡された両刃の短剣をハーデンに渡す。
「お前が持つならこの位の長さは有った方が良いと思うぞ。これで採取してみてくれ。」
「悪いな。ねーちゃん。借りるぜ。」
「いいえ。どうぞ。」
「おっ、これ良いなっ、今日終わったらおっちゃんの所でこんなのを買いに行こうっ!」
「それだがな、ハーデン。ここでならマインの短剣が丁度良いかもしれないが、この先進むと素材の回収は多岐に渡る。この層のボスであるクイーンアントだとこれより硬い頭の中に魔石が有るし、その上の階だと蝙蝠で、羽を切って回収したりとか。今のアントの素材だけで決めない方が良い。それまでは大剣で苦労したりマインに借りたりしていろ。その内お前に合うモノが見つかるさ。」
「そういうモノなのか。」
「そうだと思うぞ。」
「いつでも貸して差し上げますよ。」
「そうか。じゃあこれで一旦入り口まで戻ろう。」
「はい。」
あ、そういえば今日はあれから丁度7日なのでは。
そう思って最上階の100階まで索敵を行ってみる。
前回は確か午後に倒したからまだかもと思いながら。
すると索敵に引っ掛かった。大黒蛇はそこに居た。
7日でリスポーンするといっても時間まで全く同じとは決まっていないのだろうか。
だが居る事には変わりはない。
折角鍛冶士見習いになれたのだから、高級素材での制作も行ってみたい。
「お前達はここで下がって魔力回復に努めて欲しい。俺はちょっと用事が出来た。先に進める。」
「えぁっ!先の獲物を蹴散らせてくるってか!?」
「いや、そうはしない。足止めして進むだけにするから心配するな。」
「そ、そうか。なら気を付けてな。」
「あぁ、ありがとうな。」
「お気をつけくださいませ。」
「あぁ。」
俺はその先の通路に足を進め、出くわすアントを影縫いで止め、殺さずに進む。
それと同時に、二人の力量なら何処までが適正だろうか確認しながら。
確かクイーンアントまでは大きくは変わり映えがなかったと記憶している。が、最上階から降りてきた、たった一回の記憶だ。俺目線でなく二人にとってのを確認する為だ。
2階に上がるとアントは先程のより真っ黒になっている。大きさは変わらない。
倒してみると先程の濃い茶色のアントより外殻が硬い。
しかし頚を切るのには力はさほど変わらない。
1階の濃い茶のアントも混じっている。
3階。真っ黒なアントだけになった。
4階。少し大き目な真っ黒なアントが混ざってきた。
5階。殆ど大き目な真っ黒なアント。
6階。大き目で真っ黒なアントの中に、赤黒い、最初のアントと同じくらいのアントが混ざってきた。
そいつは兎に角早くて硬い。その一匹が居ると居ないとでは大きく戦略が変わる。
7階。大き目、約体長1m近くの真っ黒なアントが7割位。残りの3割が最初のアントと同じくらい、50cmから80cm位で赤黒いアント。かなりやっかい。
8階。真っ黒アントと赤黒アントが半半位。たまーに1.5m位の赤黒いアントに遭遇する。かなり強い。
9階。1.5mの赤黒いアントが、10匹から20匹の小さい赤黒いアントを引き連れて行動している。ここまで来るとアントが1,2匹でポツポツ現れる事は無い。必ず集団戦だ。
そして10階のクイーンアント。良く見たら1.5m級の赤黒いアントが30匹位でクイーンアントを守っていた。
奴らは毒も持っている。
クイーンアントは体長約3m位はある。
俺は今までと同様に、小さいアント達を纏めて影縫いで止め、クイーンアントに切りかかる。
今回は頭と胸の間の頚を切った後、牙をナイフで回収してみる。
牙を回収してから頭部の中心にある魔石を取り出す。
これでドロップが出てくれば牙は2倍になる。
しばらくドロップの白い光を期待していたが、何故か出てこなかった。
綺麗に素材を回収した者にはドロップしないのか。
回収の労力が無駄になった。
まぁ、そういうものと割り切るしかない。
これを知る為にやったんだし。
先を進め、ボス部屋に入ると、同じように素材を綺麗に回収しドロップを待った。
いずれもドロップはしなかった。
最後に大黒蜘蛛は蜘蛛糸をドロップ品として白い光の中から回収し、蛇の階に向かった。
蛇の階も確認すると1階1階どんどん強くなっていっていた。
毒を持っていたり、跳ねたり、天井を這ってたりとだ。
まぁ、それらは殆ど倒すことも無く影移動で通り過ぎたが。
そこで100階層の大黒蛇の間に着く。
扉の前で奴の気配を感じる。
毒息もこれ以上必要ないので、どうやったら最速で倒せるか、だけを考えながら。
重い石造りの大きな扉を開ける。
ゆっくりと開かれた扉の隙間が、人一人分開いたところで瞬時に中に入る。
それと同時に大黒蛇の周りに影盾を8枚作る。
瞬時に駆けだし、その影盾を足場に大黒蛇を翻弄するように前後左右に移動する。
移動しながら黒穴引と出を作り出し、すかさず引に入る。
出から出るとそこには大黒蛇の後頭部。
すかさず頭を切り落とす。
扉を開けてから数秒の事だ。
大黒蛇の体を収納し、ドロップを待つ。
白い光の中からアダマンタイトを回収する。
俺はそのアダマンタイトを持って、まだ約束の日にはなっていないが、これを持っていけば師匠が顔を出してくれるかもと思い、階段を上がった。
しかしいつもと何か違った。
いつもは100段位の階段を上がると、師匠の居る湖の周りの平原があるのに、数十段上がった所に階層がある。
恐る恐る少し進むと左右に道が分かれている。
階段の途中でテレポートか何かの罠を踏んでしまったのか。
そんな感覚は全く無かった。
しかし師匠が現れるかどうかだけを想像し、油断していたのも事実。
更に恐る恐る先を進むと何やら気配が。
分かれ道の手前に差し掛かった所で、左右から1匹ずつ魔物が近付いてきた。
俺は少し下がってそれに対処する。
体長1mはある百足の魔物だった。
背筋に寒気が走った。
俺はこの手の虫が嫌いだった。
10cm位の百足を見るだけで虫唾が走っていた。
それが10倍の長さの魔物だ。
恐怖を押し止め、手前の大百足に影縫い。
それを乗り越え向かってきた1匹の頭を両断。すかさず仰け反らせて来てた尻尾の二股の針を根元で両断。
そう、前世の百足も頭を潰しても直ぐには死なず、尻尾の針を仰け反らせて刺しに来るのだ。
その記憶から対処は出来た。
直ぐに影縫いで足止めした百足も頭と尻尾を落とした。
気持ち悪いが一応2匹とも回収する。
索敵から、少し進むだけで数十匹と引っ掛けそうな位に固まっているのが分り、下がることに。
階段を降りても戻れるか心配したが、先程の大黒蛇の部屋に着く。
どうしてこうなったのか分らない。
湖の平原はどこへいったのか。
ここで考えても仕方がない。
とりあえず戻れるなら戻ることに。
次々と階層を駆け下りていく。
やはりいつも通りの階層だ。
何匹も居る蛇には目もくれず、影移動で素早く駆け抜ける。
大黒蜘蛛の部屋に着くが先程倒したばかりで何も居ない。
どんどん駆け下りる。
アントの部屋まで降りた時には、索敵で回復して再度ダンジョンに入ったマインとハーデンの二人を感知した為、出会うアントにことごとく影縫いを掛けていく。
そうやって2階層までアントを影縫いを掛けて1階に。
そのまま進むと一つ曲がった先に二人が。
俺は視認出来る前に大声を放った。
「マイン!ハーデン!俺だっ、ひゅうごだっ!」
最後の角を曲がり、二人に近付くと、二人は穏やかに、でも少し緊張した趣で待っててくれた。
「おかえりなさいませ。」
「あぁ、師匠。どうだった?」
少し拍子抜けした感覚。
俺は魔物をヘイトして引き連れて、大事な二人にぶつけてしまわないかを恐れて影縫いを掛けてきた。
以前ここを同じ様に通った時には、あんな時間に潜っている奴なんか居ないと、それに俺の影移動でヘイトはされないとタカをくくっていた。
以前ハマっていたMMORPGでは、魔物をヘイトして他人にぶつけるのは禁忌で、自分がアカネ(他プレイヤーを殺すと自身のネームが赤くなる事)にならない様にわざと大量の魔物をヘイトして他人にぶつける奴も少数はいた事から、最大の悪事と捉えてられていた。
今、それを現実に、自分が行ってしまった可能性を考えるとぞっとした。
MMORPGではたかがレベルの減少。
その者にとっては何時間、何十時間の労力の無効。となり、大変なものとして扱われていたが、自身の命を奪うものではない。
ここは現実だ。俺の行動で大事な二人に危険を作った可能性が有る。
「ここまでは影縫いで止めているが、どうなるか分らん。今まで何発打った?」
「え? あっ? えと、4発だ。」
「そうか。なら直ぐそこに2体のアントを足止めしてある。それを魔法と剣とで倒してくれ。その後少しダンジョンから出て欲しい。俺が上の魔物を下まで引っ張っていないか確認したい。」
「あぁ、分ったよ、師匠。」
「はい。」
ハーデンは俺が影縫いで止めたアントに、奥のにはファイアーボールを、手前のには剣で倒し、牙の回収を図る。
俺はその素材回収を終えるのを見守り、終えると3人でダンジョンから出た。
索敵は常に行っていたので、危険は無いと分かってはいた。
先程の門番の前に出ると声を掛けられた。
「お、先程より早いな。ちゃんと安全マージンを取ってるってことか。良い事だぞ。」
「お、おぉよ。ちゃんと師匠に教わってるかからな。」
と、ハーデンが自信満々に応える。
そこでマインが自身でも索敵により、俺が上階から魔物を引っ掛けていない事は確認しながらも、俺が焦っている事に疑問に思い、聞く。
「ひゅうごさん、何かあったのでしょうか。上階の魔物は引っ張ってはいない様ですのに、何か心配事がありましたか?」
「あ、あぁ、な、何と言って良いか。」
「はい。」
「俺はいつも通り大黒蛇を倒したんだが、師匠の所には行けなかったんだ。」
「そ、それはどういう?」
「あ、あぁ、何と説明すれば分るか。」
「はい。」
「俺がいつもお前を連れて行っている祠は、湖の先の丘の上にあってな。」
「はい。存じてます。」
「そうか。それでいつもは魔法で直接向かって行くけど、物理的に行くにはこのダンジョンを通ると近道なんだ。」
「そうですか。」
「あぁ、今まで何度もここを使って通ってた筈なんだ。」
「はぁ。」
「それが今日、急にそのダンジョンの出口が違う所になってたんだ。」
「出口が違うと?」
「あぁ、出口でなくて、更にダンジョンが続いていたんだ。」
「え?あ? では、51階層目に出られた。ということでしょうか?」
「ご、51階層? あ、あぁ、まさしくそうだ。突然51階が現れた感じだ。」
「それは伝承通りです。ひゅうごさん。やはりそうでしたか。そうなると思っておりました。」
「で、伝承?」
「はい。それで父上ではなく、祖父とお会い頂きたく思います。あなた様は一族の救世主に御座います。」
「は? 父様で無く、お爺様?」
そう言った瞬間、目の前が眩しい光に包まれた。
「小娘よ。伝承通りなら童にも話を通す必要が有ろうぞ。」
「えぇ、確かに。でもその前にひゅうごさんを祖父に引き合わせないと。」
「いいや、こ奴はそこの所の話は知らん。童にとっても、この童の時代にこの様な者が現れる等と思ってもみなんだ。」
「え、あ、えと、俺が何でしょうか? そもそも何でここにセイラが?」




