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第二十六章

 マインの初めての祈りによって、全身から金色の光が放たれたというのに、あっけらかんとした顔で祈りのポーズを解いてこちらを向かって言う。

 「それで、次はいつもの魔力切れですね。」


 俺はマインのその何ともなかった様な態度にポカンとする。

 「ま、マイン、今、あの、祈りの光がお前の体から空に向かって飛んで行ったぞ。」

 「そうですか。祈りを終えた時、とても清々しい感じがしたので、それでしょう。」

 えっ? それだけ? それで終わらせて良いこと?


 「ま、マインがそれで良いのなら。」

 「はい。私はそれで構いません。でも、一つお願いがあります。」

 「え、何?」


 「はい。私の魔力切れ訓練はいつもの認識阻害に同調で良いのですよね?」

 「あぁ、それでお願いする。」

 「それなら、ひゅうごさんは、私の認識阻害に同調して貰えませんか?」

 「それは何でだ?」


 「はい。いつも私の方から同調してますが、ひゅうごさんからの同調が余りないので。」

 「それが何か意味があるのか?」

 「はい。同調はお互いに行う事で同調し易くなる事と、お互いの魔力を認識し易くなり、その魔法理解も深まるのです。」


 「そ、そんな事があったのか! それなら良いな。あ、でも、同調し易くなるのなら魔力量の増量訓練には不向きなのでは?」

 「はい。そうなったらここの認識阻害やその他のものと同調するまでです。しかし、そんな簡単にそこまでは成れないですけどね。」


 「そ、そうなのか。それなら、そうしよう。」

 「はい。では、その様に。でもひゅうごさんは先にお祈りを。」

 「あ、あぁ、そうだな。」


 本当に驚くな。マインの成長ぶり、というか変貌ぶりに近いか。まぁマインにとって色々あったからな。変わってもおかしくないと言えばそうかもな。

 そうだ、祈り。


 ホントこんな驚かされる様な出会いを作ってくれた事、それを言えばそもそもガイアモライ様に会わせて貰えた事に尽きる。もっと言えば前世でガイアモライ様の化身様にお会いできる機会を頂けてた事から感謝しかない。この世に転生させてくれた事、俺を気遣って色々チートを付けてくれた事、学ぶ事の楽しさを与えてくれた事、成長していく機会を与えてくれた事、強くなれる機会を与えてくれた事、ヒョウとの出会いを与えてくれた事、ヒョウの祠で魔法の可能性を見せてくれた事、マインとハーデンとの出会いを与えてくれた事、マインを通して魔法の理解を深めさせて貰えた事、ダンやギルド職員や冒険者との出会い、ガイスとの出会い、森の危険を察知できた事、マインを助けられた事、ゴブリンの脅威を排除出来た事、レソルザット家の方々との出会いとその後の関係が出来た事、セイラとの出会いと新たな魔法の可能性を持てた事、これからまだまだ危険だけどやりがいがある目標があり、その解決方法が徐々に見付けられている現状に、今、今日精一杯生きて来て尚、生ある事に感謝して祈りを捧げる。


 マインを習ったらかなり長くなった。しかもマインの名が何度も出てる。やっぱりそうなのか。

 もっとマインにも感謝の言葉を伝えないとだな。

 そう思った所で、瞑想をしていたマインが、片目だけ開けてこちらを見て言う。


 「ひゅうごさんも体が光って、空に光を放ってましたよ。」

 「そ、そうなのか?」

 「はい、でも今まで見たことは無かったので、あんなに祈ればあの様になるのでは?」

 「そうなのかな。」


 色々考えたいが、今日の所は疲れたのでここまでとし、マインに同調を考える。

 「所でマインはもう同調しているのか?」

 「はい。既に同調してます。」

 「じゃあ、直ぐにでもマインと同調を始めるよ。」

 「ゆっくりでいいですよ。それでも必ずひゅうごさんが落ちる所を見届けて差し上げます。」


 「え? なんで? マインの祠の認識阻害の方が難しいし、先に始めてるなら、普通にマインが落ちたら俺が祠の方に同調するつもりだが。」

 「いいえ、必ず耐えてみせます。」

 「あ、あぁ。頑張ってくれ。それじゃあ始めるぞ。」

 「はい。」


 何でそこまで俺に勝ち(勝ち負けなのか?)に拘るのか分からない。

 そう思いながら同調を始めると、以前マインと同調した時より幾分軽く出来る様になっている。

 「これが同調が深まるということなのか。」

 そう独り言する。


 でもそこで、マインとの同調を通じて、今マインが同調している祠の認識阻害を、俺にも少しずつでも理解出来る。

 「おぉ、これは、マインを通すと認識阻害の理解が深まるということか!助かる!」

 俺は同調の瞑想が崩れない程度に感嘆する。


 「それは良かったです。もしかしたらと思った事が出来た様で、お役に立ちましたか?」

 「勿論だよ。マイン。いつも助かってるよ。感謝しきれない程に。」

 「そう言って貰えて光栄です。」

 「そんな、そこまで謙遜しなくてもいいの・・・」


 俺は同調しながらギリギリ会話していると、いつの間にか落ちてた様だ。



 88日目。


 目を覚ますと既視感。マインが俺を見下ろしている。二日前のマインの膝枕だ!

 俺は慌てて起き上がろうとし、マインは、

 「やっとお目覚めですか・」

 の所で勢いよく額と額がぶつかる。


 「痛っ」

 「わ、悪いっ」

 俺は慌てて聖法を唱える。


 「・・・エリアヒール。」

 額の痛みがすぅっと引いていく。

 「ひゅうごさん!この様な些細な痛みにエリアヒール等、勿体ないですよ。」

 「いや、いいんだ。気にするな。」

 「はい。」


 俺は気を取り直して、改めてマインに向かって言う。

 「マイン。おはよう。」

 「おはようございます。ひゅうごさん。」

 「ヒョウもおはような。」

 「くぅうん。」


 俺はその場で目を閉じ、両手を組んで祈る。

 今日も朝を迎えられた事、今、この状況をもたらしてくれたガイアモライ様に、これまで接してきた全ての方に感謝を込めて祈ります。ありがとうございます。


 すると目を空けた時、俺の体から空に向かった光の残糸の様なものを見た。

 「なぁ、マイン。俺、今体から光が放たれた?」

 「はい。昨晩同様、放たれてましたよ。」

 「そ、そうか。マインは朝の祈りは済ませたのか?」

 「はい。先程。」

 「マインからも光が放たれてるのか?」

 「それは存じません。私は自身の目では認識してませんが、感覚的にはそうなっててもおかしくないと思えるところはあります。」


 「そうなのか。ヒョウはそれを見てないか?」

 「くぅううん。」

 「そうか、ならそれはまた。」


 しかし俺は偶然に発動した聖法で、それが中級程度まであったのだとか、その後の訓練(あれを訓練と言っていいかは別として)で、どの位まで使えるかをある程度把握出来たが、このままマインが祈り続ける事で、いつから初級聖法を発動出来るか、それがどの様な聖法なのか、更にその聖法をどの程度使って良いのか。

 まだまだ闇雲な所が多い。

 今にもセイラに聞いて方向性を考えたい所だが、あいにくこの二人は深い因縁があるからな。そういう訳にもいかない。


 「ひゅうごさん、何かありましたか?」

 「いや、ちょっとした考え事だ。気にしなくていい。」

 「そうですか。」

 「あぁ、それで梨花亭に戻ろうと思うが、準備はいいか?」

 「はい。もう出来ております。」


 「そうか、ヒョウはどおする? そろそろ一緒に街に行ってみるか?」

 「くぅううん。」

 「そうか。なら仕方ない。また暫く空けるぞ。」

 「くぅうん。」


 「あぁ、そうだ。忘れる所だった。」

 そう言ってこの前捕まえてたワイルドボアを黒穴の中で解体する。

 複数の操影で肉と骨と皮とに別けていき、血と食べられない内臓を森の奥まで運び埋める。その場で静かに祈る。

 「ヒョウ、約束してたボアの肉、補充しておいたからな。」

 「くぅうん。」


 「じゃあなヒョウ、行ってくる。」

 「ヒョウ様、行って参ります。」

 「くぅうんっ」


 俺とマインは黒穴出で、梨花亭のマインの部屋に着く。

 まだ梨花亭の開店時間の1の鐘前だが、アギレンなら対応してくれるだろう。

 今日は2の鐘で石壁の引き上げ、その前に1と半にシルバーと俺とマインで安全確認だ。早めに食事を済ませたい。


 「おはようアギレン。」

 「あぁ、おはよう、ひゅうごにマイン。」

 「いつも早くからご苦労さんな。」

 「いやいや、いつもの事だよ。それより二人はいつもより早いけど大丈夫か?」

 「あぁ、今日は石壁の引き上げで、その前に砦向こうの最終安全確認に狩り出されててな。」


 「だろうな。そう思って仕込んでおいたぞ。この前お前が言ってたクラブサンドだ。」

 「ま、マジか!? もう用意してくれたのか? 食べたい!」

 「はい、はい。じゃあ直ぐに仕上げるよ。」

 「ありがとう。」


 「あーー、俺の分も用意してくれるか。アギレンのおっさん。」

 そう言うのは階段から降りてくるハーデンだった。

 「お、早いな、ハーデン。おはよう。」

 「おはようございます。ハーデン。」

 「おぉっ、早いなハーデン。」


 「あぁ、おはよう師匠、マインにアギレンのおっさん。」

 「随分早いなハーデン。お前は2の鐘からだから、まだ寝てても十分間に合うぞ。」

 「いや、師匠。俺は昨日たいして働いてないから早く目覚めてまってよ。そんで今日は力仕事だけだっていうから、起きた直ぐ、魔法訓練して寝落ちして、起きたら魔力回復に瞑想してたんだ。」


 「え?そんな朝から?」

 「あぁ、そんで瞑想してると感覚が敏感になるだろ?」

 「あぁそうだな。」

 「そしてら師匠とマインが部屋から出て降りてくのを感じたんで今、って感じ。」

 「そうなのか。そんな早朝から寝落ちする程の魔法訓練を一人で。」


 俺はそう言って黒穴を作って、ハーデンに使わせている黒穴引と繋げてみる。

 「えっ!? こんなに?」

 黒穴の中には以前のとは比べ物にならない程の数のファイアーボールがあった。

 しかもそれらはソフトボール大の大きさで、実践で使えるレベルだった。


 「け、今朝はいったい何発この魔法を撃って寝落ちした?」

 「いや、悪い師匠。それが余り覚えてないんだ。」

 「え?」

 「い、いや、ちゃんと数えてはいたんだぞ。十五位まではちゃんと覚えてた。で、でも寝落ちするとその直前の記憶が曖昧になって・・・でも二十にはいってなかったな。」


 「そ、そうなのか。それは凄いな。」

 「お、俺、凄いのか? そうなのか?」

 「あぁ、凄いぞハーデン。よくここまで成長したな。しかも言われなくても自身で出来る訓練をして成長しているのが凄い。お前は成就するぞ。」

 「じょうじゅ?」

 「あぁ、自身が思った様に成長するって意味だ。」

 「おぉっ、そうか、俺は成長してるのか!」

 「そうだ。」

 「ふふふっ。」


 この大きさのファイアーボールを15発打てるのであれば、初心者の魔法使いとしても通用するレベルだ。

 でもハーデンはあくまでも剣士だ。魔法剣の使い方を教えなければ。でも魔法剣なんて俺も知らない。まさかこんなに早く魔法使いとしての所要を掴むなんて思っても無かった。

 作戦中にでも訓練方法を考えるとしよう。


 「ハーデン。今日、お前の剣を借りていって良いか?」

 「え? あ、あぁ、勿論、俺はまだ眺めるだけしか出来ないからな。」

 「悪いな。お前の成長の速さに、俺が成長しなくてはならなくてな。」

 「そうなのか?」

 「そうだ。」


 「おーい、クラブハウスサンド、3人前だぞ。」

 「おぉ。」

 「おぉ。」

 「わぁ。」


 俺達は目の前に並べられた料理に舌鼓を打った。

 「なぁ、ハーデン。今日から食前のお祈りを皆で行いたいが良いか?」

 「お、なんだ、それ、師匠がやるというならやるぞ。どんなんだ?」

 「あぁ、これを頂く前に、俺に合わせて復唱してくれ。」

 「お、おお。」


 「天土の恵みと、」

 「天土の恵みと、」

 「これまで支えてくれた人達、」

 「これまで支えてくれた人達、」

 「これに携わった見知らぬ人達、」

 「これに携わった見知らぬ人達、」

 「この機会をお与え下さった神々に、」

 「この機会をお与え下さった神々に、」

 「感謝を込めて、命の元を謹んで頂きます。」

 「感謝を込めて、命の元を謹んで頂きます。」

 「いただきます。」

 「いただきます。」


 3人で復唱すると、真っ先にハーデンがクラブサンドにがっつく。

 「こ、これが師匠がアギレンのおっさんに頼んで作らせたやつか?」

 「あぁ、そうだ。」

 「めちゃくちゃ美味いぜ!」

 「気に入って貰えて良かったよ。」

 「本当に美味しいです。初めて食べる味です。」

 「そうか。それなら良かった。」


 「師匠はこの料理を教えたんだからちゃんとアギレンのおっさんから金貰ったのか?」

 「いや、貰ってない。これは俺への投資だからな。」

 「と、とうし? それは何だ? 2階の部屋の時にも聞いたぞ。」

 「良く覚えてたな。投資はな、今回の例で言うと、俺には売りたい商品を持っているが、それを買える者が見付からない。」


 「ふむふむ。」

 「しかし、マギーなら俺の持っている商品を欲しいと思っている。しかしそれを買えるお金を持っていない。そこで、俺が情報を与えた事でアギレンが儲けてお金が入ると、その金でマギーが俺から商品を買ってくれ、俺が儲かる。という流れだ。」


 「うぅ、なんか良くわかんないや。」

 「簡単に言うと、俺がアギレンにレシピを教えてアギレンが儲かれば、俺に金が入る。ということだ。」

 「あ?あぁ?じゃ、じゃあ、やっぱり師匠がおっさんにレシピを売ったのと同じ、という事になるな!」

 「そういうことだ。」


 「私は理解したと思います。 が、一つ理解出来ない部分があります。」

 「え、あ、何だろう?それって。」

 「はい。今のお話からすると、前提として、ひゅうごさんがマギーさんにとって有益で、しかも高額な商品を持っている事が必要なのでは、と。」


 「流石だな。それで正しいよ。俺はマギーさんが欲しているモノを手元に持っているし、それと同じように、俺にとってマインやハーデンが、俺に必要なモノ、モノと言ってるが物ではないものを持っているのは明らかで、それで俺がお前達に投資しているのだと気付けたか?」


 「私が持っているモノ?」

 「俺が持っているモノ?」

 「そうだ。それを思い出してくれ。俺がお前達に感謝している事がそれに充たる。」

 「・・・・・・・・」

 「それは、私が闇魔法においてはひゅうごさんより慣れていて、ひゅうごさんの使う魔法より少し上のものを発動出来るからですか?」

 「そう。まさしくそうだよ。今の言葉では謙遜しまくりだけど、俺が教えた筈なのに、俺が教えた魔法の真髄をお前から教えて貰ってるんだ。」

 「そんな、そんな大層な事はしておりませんが。」

 「いや、そんなことはない。本当に助かってる。」

 「は、はい。」


 「そうかっ! 分かったぞ。 そういうことか。 俺はいつも自分なりに出来る事を前向きに考えてやってた事を、師匠には驚かれた様に褒めて貰えてた。」

 「あぁ。」

 「俺はがむしゃらに俺の強くなりたい想いを、そのまま続けて良いってことじゃあ?」

 「間違いない。それで良い。」

 「だよな!俺はもっともっと強くなるぞ!」


 「いやぁしかし、この子達が頑張ることが、投資に値するお金の価値に釣り合うなんてなぁ。商売人の俺達にも目から鱗だ。」

 「本当にそうなんだ。そこを理解出来る者達を育てていきたいんだ。」

 「そうか。そうなるだろうな。しかしこれからどうするんだ?」

 「あぁ、そうだな。ここでは直ぐには解決策は出ないと思う、それでもそれを考えながら、これからの努めに奮闘していきたい。」

 皆がそれぞれの想いに肯定を唱える。


 食事を食べ終え、食前のお祈りの言葉を、「謹んで頂きます。」を「謹んで頂きました。」に。

 「いただきます。」を「いただきました。」に変更して三人で復唱した。

 食前もそうだったが、この食事前後のお祈りでは光の柱は飛ばなかったようだ。

 飛ばない様に祈ってた所もあるが。


 その後南門に三人で向かうと、既に最終安全確認班の全員が門に集合していた。

 「随分余裕であるな、ひゅうご。」

 「え?1と半と聞いたから、それにはまだ大分早いと思うが。」

 「あぁ、そう言う事だな。お前はここの常識は知らぬからな。しかし今はそれを説明する時間すら無い。詳細は道すがらギデルかジゼルから聞いてくれ!」

 「あ、あぁ。」


 「それでは! かいもーーーっん!」

 ギルマスの合図に南門の直ぐ横にある、人一人通るのに屈んでしか進めない扉を、翼、玄武、白虎のメンバーが通っていく、それに続き俺とマインがそこを通る。


 「そ、それで、俺達は何をすれば?」

 「そうだな。ここからなるべく広い範囲を探索して、ゴブリンの脅威が無い事を確認していくんだ。」

 「そうか。では俺達にゴブリン砦の探索を任せて貰えないか?」

 「と、砦?あそこまで行けるのか?」

 「我々は周囲の安全の確認を行い、2の鐘には砦に戻らねばならないのですよ?」


 「あぁ、それなら問題ない。当然間に合う様にするよ。」

 「あぁ、そうだったな。お前達は速いんだったな。」

 「そう言う事ですか。」

 「砦が確認出来るとならば、街の者も安心する。頼んだぞ。」

 「あぁ、任せてくれ。」


 俺は影移動にマインを乗せ、砦へと一直線に向かった。当然「索敵」は既に行っている。

 「マイン、聞いてくれ、俺はこの移動と共に、闇影による索敵を行っている。それに同調して欲しい。」

 「存じてます。それに、既に同調してますよ。気付きませんでしたか?」

 「え?あ、気付かなかった。本当か?」


 「はい。気付かれない様にわざと干渉しましたから。」

 「そんなことが出来るのか。」

 「はい。これも闇魔法の極意みたいなものですね。」

 「そ、そうなのか?やはり相手に気付かれない様な?」

 「はい。勿論今までひゅうごさんの魔力に同調してきたから。というのは否めませんが。」


 末恐ろしい。

 「そ、それでどうだ?出来そうか?」

 「えぇ、それで言うと、これは、何と申したら良いのか。」

 「な、何か問題でも?」


 「問題とまではいかないですが、ひゅうごさんのはエリア内視覚情報取得魔法に近しいです。魔力を使いし過ぎます。」

 俺の中では「索敵」は「探索」の劣化版でしか無かったが、そうではないのか。


 「魔物を見付けるだけでしたら、私ならこうします。・・・サーチ!」

 俺は咄嗟にマインの魔法に同調し、マインが放つサーチの魔法を解析すると、魔物にだけ反応する闇魔粒子を、出来るだけ小さくした状態で、自身を中心として球状に放つのを確認した。

 「サーチと言うのか。」


 俺はマインに同調した「サーチ」が、俺自身の索敵が把握した、2匹の泥兎と1匹の黒狸を捉えた事を理解した。


 「凄いな。こんな方法があるのか。」

 「いいえ、あんな方法でずっとやってこられたひゅうごさんの方が凄いのですよ。」

 「そうか。それでも俺にはこんな方法を知ることが出来なかった。マインにはいつも助けられてるよ。感謝する。」

 「そこまで感謝して貰えるとは。ありがとうございます。でも、この関係。とても良いものですよね?」


 勿論そうなのだが、何故今ここでそんな言葉を発するのか。かなり戸惑った。

 「今ここで、昨晩伝えたかった話をしても宜しいでしょうか?」

 ん? 昨晩? 良く分からないが、闘技場で話した方が良い。という話では?


 「ま、待ってくれ!マインが初めての覚悟した様な話だよな?闘技場での方が良いかどうかと。」

 「そうです。」

 「い、いや、それなら今はまずいだろ。今、正にゴブリン砦に向かってる最中だぞ。」


 「はい、確かにそうですが、恐らくお暴れになるのはルッセイラティ様ですので、私にとっては祠や梨花亭でなければ何処でも良かったのです。」


 そうか。そう考えているのならば、ゴブリン砦を今後どう使うのか領主様に直接係わる方に、直接見て貰った方が良い。

 そこまで理解し、ゴブリン砦に入って、危険が無いかを確認した上でそれを実行しようということになった。


 俺達は森を抜けて、ゴブリン砦の南門に着き、索敵やサーチにより魔物による危険は無いと判断するが、お偉方を迎える以上、この後魔物や賊に入られない様、砦に綻びや決壊が無いか見て回る。


 「マイン、砦の中に入るぞ。」

 「はい。」


 俺とマインはゴブリン砦に入ると、その場で南門の砦の綻びを直す。

 砦の跳ね上げ橋の扉に穴が幾つも有り、人や小さめの魔物なら通れる。

 近くにある木材を操影で運び、内側から補強する。

 そしてそのまま二人で時計回りに砦を調べていく。


 砦を回って行くと、木製なので所々傷んでいる所があり、人や魔物が入れない様に修復していくと、西門と北門の木製の扉部分は他より動かしている分か傷みが多く、時間を掛けて修復していく。

 その都度マインに操影に同調して貰っている。

 そして東門を修復した所で、この門の近くにある闘技場の様な場所で、ゴブリンキングを含む多数を討伐したが、キングとジェネラル以外を回収する時間が無かった為、今回収したいと伝える。


 「では、丁度良いので、ここで昨晩の話をします。」

 俺はこの闘技場の様な場所のあちらこちらにある、ホブゴブリンやその他の死体を全て収納しながら聞いた。

 「あ、あぁ、このままでも良いのか?終わるまで待つか?」


 「そのままで結構です。私がひゅうごさんに相談、というかお願いしたい事は、私の父と会って頂きたいのです。」

 俺はゴブリンの回収の手が止まり、

 「マインのお父様に会う、というのは?」

 「はい。そういう意味です。ひゅうごさんを紹介したいのです。」


 突然目の前が光ったかと思えば、それが収束した所にセイラが居る。

 「小汚い娘の分際で、童のひゅうごを娶ろうとするなぞ、甚だしい事この上ないぞよ。」

 「いいえ。その様には思いません。私には相応のお言葉とお約束をひゅうごさんから頂いております。必ずや添い遂げる覚悟がございます。」


 えっ!? 今、添い遂げるって?? ま、マイン?

 「ちょ、ちょっと落ち着いてくれ!二人共。そ、その、ま、マイン?添い遂げるって?結婚っていう事?」

 「はい。その結婚を前提に父上にひゅうごさんを紹介したいと、そいういうお願いです。」

 「待て小娘。童はひゅうごとついこの間知り合い、今後も深く付き合おうとしておった所じゃ。行く末には童と添い遂げる可能性もあるのじゃ。小娘は控えよ。」


 「いいえ。その様な申し立てに従うつもりはございません。」

 「何?」

 「私は既にひゅうごさんと魔力同調を深く進めております。ルッセイラティ様の魔力では既に追い付けない程にです。」

 「それは童が光で、ひゅうごの闇と同調はほぼ皆無、ということからじゃろうが、ひゅうごはそこにも興味を持って進めてくるじゃろうて。」


 「そ、それでもその前に私の方が最後まで進めます。あなたには入る余地を与えません!」

 「そうはならぬぞ。ひゅうごは探求心が強い故な。童の方が求められる筈じゃ。」

 「そんな・・・」


 「あ、えと、ちょっと、その辺にしてくれないか。」

 「なんじゃ?」

 「あ、はい。」


 「俺自身が二人の言い争いの、先の展望に、全く理解が追い付いて無いんだ。」

 「むむっ」

 「あ、えぇ。」


 「今の俺の現状、今ある想いを全て話すと、俺はこの世界に送ってくれた方に最上級の感謝をしているが、その後に出逢った者達への感謝は深い。」

 「ふむ。」

 「その中でも特に同じ闇魔法の使い手で、種族の特性も持っているマインには、今後人生を掛けて魔法の研鑽をしていきたい旨の言葉を送った事実がある。」


 「そうなのじゃな。じゃが、儂にも童の光魔法との共通部分に感嘆し、童と今後も探求したいと申したではないか。」

 「何と、その様なことが?」

 「あぁ、確かにそう思って、そう伝えた。けど、それが一緒になる。とか、どちらか一人に決める。というものでは無かったんだ。」


 「それは確かにそうじゃったな。」

 「そうですね。」


 「それで申し訳ないんだが、その話は一旦保留にして貰って、この砦の扱いを領主様にどうするかの判断基準を、セイラに伝えて欲しいんだ。」

 「ほう。その意図は?」

 「あぁ、折角ここまで作られた砦を、活かすも捨てるも領主様次第と思って。」

 「そうじゃな。」


 「俺ならここまで出来ている砦を、活かす他無いと思えるんだが、他からすればゴブリンの砦だったのだと煙たがれるんじゃないかと。」

 「確かにそうなるじゃろうて。」

 「でも、ここまで作ってあれば、この魔の森の管理にはかなり好都合な砦になると思うんだ。」

 「じゃろうて。」


 「そこで領主様が適任者を派遣して貰えないなか、と。」

 「そういうことじゃな。その様に申し伝えようぞ。」

 「あ、なんか悪いな。俺はちゃんとギルマスを通して正式にその旨の報告と依頼を出すつもりだが、この現状を見て貰った親族からの言い添えが有ったら助かるなと思ったまでだ。」


 「それじゃから童からお主の存在価値を父上に証明しようと思ったのじゃが。」

 「待って下さい。そうなると思ったから、私が先に私の父上に紹介したいと願ったのです。」


 あぁ、これがこの話の時に争いに発展する可能性を考慮して、闘技場を選んだ理由か。


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