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第二十七章

 俺とマインとでゴブリン砦の安全と、有用性の確認と補修をある程度出来たが、そこでマインとセイラの対立となり、話が曲がった方向へ。


 「マイン、話してくれてありがとう。しかしいったんその話は保留にしてくれ。考えさせて欲しい。」

 「はい。」


 「それとセイラ、そちらの話も保留にして欲しい。だけど、ここの活用の話はお願いしたいが、任せられるだろうか。」

 「うむ。それは任されよう。安心するが良い。」

 「助かるよ。それと、悪いんだが、この最終安全確認は2の鐘の前に南門に戻らなきゃならないんだ。そろそろ出ないと間に合わなくなる。」


 もう一度二人には保留という事を認識してもらい、それよりもう時間が無い旨を伝えた。

 「ほう、それには心配は及ばぬ。童が連れて行ってやろうぞ。」

 「連れて行くとは?」

 「そのままの意味じゃ。もうここには用はないのじゃな?」

 「あ、あぁ。」

 「では行くぞよ。」


 俺はその言葉を聞いた瞬間、目の前が全身を覆う程の光に包まれる。すると次の瞬間、目の前の視界が見慣れた門の前になっていた。

 「な、ななっ、なんだこりゃっ!?」

 「え、ええぇ?」

 「驚いたじゃろ?童の光移動じゃ。」


 「お、お、驚いたなんてものじゃない。」

 「ええ。」

 「小娘よ。お主にも童の魔法を見せてやったのは、今まで汚いなどと言うてきた詫びじゃ。お主もひゅうごには幾分役に立っておったようじゃからな。」

 「は、はい。ありがたきお言葉。」

 「良い。」


 突然現れた俺達の姿に、門の外で俺達の帰りを待っててくれたギルマスと、その他数人のおそらく土属性魔法使いが跪く。

 代表してギルマスが、

 「何かございましたでしょうか。ルッセイラティ様。」


 セイラが昨日と同じく豪奢な衣装を着ていて、昨日とは違い今回の作戦本部の様な場所に突然現れたのだ。恐らく領主の代理としてこういう場に現れる事もあったのだろうと思う。

 その位ギルマスの反応が速い。


 「いや、良い、今は光のセイラじゃ。敬礼は不要じゃ。」

 「はっ。」

 そう言ってギルマスが立ち上がると、その他大勢も立ち上がる。

 「童はひゅうごに用があっただけじゃ。そのついでに彼らを送り届けただけじゃ。」

 「そうか。」


 「してひゅうごよ。光移動からは何か掴めそうじゃったか?」

 「んな訳ない!余りにも一瞬で。それも何の言葉も無く始められて。」

 「じゃろうな。これは光魔法の真髄に係わる故、そう簡単に詮索させる筈がなかろう。」


 それもそうだよな。それでも確執のあったマインにも一緒に光魔法を見せて貰えただけでも大層なことだったな。


 「いいや、失礼しました。こんな貴重な体験を、それもマインと共に体験させて貰えて光栄です。」

 「なんじゃ。感謝は良いがお主は童に畏まるでない。これから永く共にする関係じゃからな。」

 「ありがた・・・ありがとう。せいら。」


 「そうじゃ。それで良い。」

 「・・・・・」

 マインが口を挟めず拳を強く握る。それを見た俺は、


 「マインもさっきのは凄かったよな。驚いた。」

 「えぇ、とても驚きました。」

 「しかもセイラとの蟠りも取れてきてる様に思うよ。良かったじゃないか。」

 「はい。本当に。」


 少し落ち着いた様なので、ここでもう一度先程の話にしてみる。

 「しかし先程は驚いたよ。なんで突然、・・んの様な話になるんだ。理解出来ないよ。」

 「求婚」という言葉は濁して聞いてみる。続けて、

 「それなら、もっとそこに至る経緯を説明してくれないと。突然で返答に困る。」


 そこまで言うとマインは、

 「それは、ルッセイラティ様を筆頭に、他の種族の者に聞かせられないからです。」

 そうか、マインは何故か俺がセイラと常に会話出来る、いうなれば俺に話すとセイラに筒抜けな状態を知っていたという事か。


 そこで突然、俺の左肩から声が聞こえる。

 「してどうするよ、ひゅうごよ。あの者の言わんとすることは、童達対立しておった者達には周知の事実じゃ。じゃが、そうじゃろうとも、一族の者が容易く口にしてはならん、そう言う事じゃろう。」


 そういう事なら、マインの要望に合わせたい。しかしセイラの事も無下には出来ない。

 「なぁセイラ。マインの話を聞く時に、これを聞こえなくしても良いか?」

 「この魔法を消すということか?それはお主の自由と言うたが、お主の判断で童の魔法を消した後、もう一度作る事は絶対に無いがな。」


 「いや、それはそう思うよ。そんなおこがましい事までは考えない。だけど、マインの他には聞かせたくない話を聞く間だけ、この魔法に声を届かない様に施して良いか。というお願いだ。これもかなりおこがましいのは重々承知だけど。」


 「ほほぉぅ。それは面白い。童との小さき絆は消したくは無いが、あの者の声は童に干渉されず聞きたい。と、」

 「・・・・・。」

 俺は何と言って良いか分からず、押し黙る。


 「やってみるが良い。出来るならお主の自由ぞ。もともとこの魔法はお主の自由にして良いと言うたじゃろ。」

 「はっ、はいっ。確かにそうでした。ありがとうございます。頑張ります。」

 「ふっふっふっ。面白い奴じゃ。」


 そう二人だけの会話をしていると、周りの者達がポカンとしている事に気付く。

 俺は咄嗟に、

 「マイン、ごめん、俺の方が気遣いが足りなかった。その話、聞ける様に頑張るよ。」

 更に周りはポカンだ。


 そこにジゼルを先頭に玄武の幹部6人が、それと少し遅れてギデルを先頭にエルネスの翼の4人が戻ってくる。


 「おぉセイラ殿、どうしたのですか、この様な場所へ?」

 とジゼル。

 「よぉっ、セイラ。どうした、こんなとこに?」

 とギデル。


 その反応を見た俺は、ギデルは王族だからあんなだとして、ジゼルの反応からセイラもジゼルと同じ侯爵だろうな。と、公爵では無いな。種族柄当たり前か。

 そう思うと「ピンッ」

 今では当たり前の反応だ。


 そこでセイラが言う。

 「何でも無い。童はひゅうごに用があってここに居るまでじゃ。もうその用も終わった。」

 「なんだぁ、セイラ。そこまでひゅうごが気に入ったか?」

 「新しモノ好きなセイラ殿なら、それも有り得ますかな。」

 と、ギデルとジゼル。


 「何やらこの場に童はお邪魔な様で、この辺りで失礼するぞ。」

 「何と、その様な事はございません。ご無礼をお詫び致します。ひゅ、ひゅうごよ、何とか言え!」

 急に慌てたギルマスが、冒険者の言葉を忘れて敬う言葉になっている。


 俺は落ち着いて答える。

 「まさか、邪魔だなんて、それより気遣いに本当に感謝する。ありがとうなセイラ。」

 「良い。」


 光に包まれ、セイラが消える。


 皆が一瞬唖然としたが、すぐに声を上げたのはギルマスだ。

 「して、最終確認はどうだった?」


 「南は全く問題無かったぞ。」

 と、ギデル。

 「南東も問題ありませんでした。」

 と、ジゼル。


 「砦の中には魔物は1匹たりとも居なかったし、道中も何も問題なかった。」

 と、俺。


 「そうか、それならば予定通りに開門だな。2の鐘までは楽にしていてくれ。」

 「あぁ。」

 「あぁ。」

 「あぁ。」

 「はい。」


 俺はマインを連れ砦の窪みの影に入って人目から隠れる。

 更に身隠しを行い、そこに黒穴を作る。その黒穴には多数のファイアーボールが入っている。


 「マイン、俺は今から新しい魔法訓練を行う。興味があれば見てて欲しいし、何かやりたい事があればやっててくれ。」

 そう聞くとマインは。

 「見てます。」

 「そうか。」


 俺はその場で胡座をかいて瞑想する。

 そのまま黒穴の中にある幾つものファイアーボールを思い描き、純粋な魔力を高めていく、自分の魔力が炎に変わった瞬間、目を開きそれを黒穴に放り出す。


 「良しっ!」

 「えっ!?ひ、ひゅうごさんは火属性もお持ちだったのですか?」

 「いや、今初めてやってみただけだ。」

 「やってみた、なんて、そんな・・・」


 「セイラから聞いただろ?加護のお陰だ。俺の力じゃない。」

 「それも含めてひゅうごさんの力ですよ。」

 「そうか?だがこんなのまだまだだ。」


 俺はそう言うと、ハーデンから借りてきた大剣を取り出す。

 瞑想の姿勢のまま、鞘から剣を抜き、両手に大剣を持ち目を閉じる。


 俺が作り出す炎が、この剣を纏うイメージ。

 そのイメージが剣の芯に使われた魔鋼を通して返ってくる。


 すると、目を開けると俺が持っている大剣が、松明の様に燃えている。

 「んー、こうじゃないんだよな。」


 そういって、もう一度目を閉じ、イメージを強く持つ。

 先程の様にただ燃えている、というのでは無く、もっと高温で、両刃の刃の部分だけに超高温な薄いバーナーで炎が押し出されている様な。


 そこで目を開けると、そこにはまあまあ想い描いた様な薄青い炎を纏う、魔剣があった。

 「良しっ。」

 この位が出来ればハーデンにも教えられる。

 そこで次にやりたい事に移ろうと考えていると、


 「おーい、お前達そこで何してるんだ?」

 と、ギデルの声。

 声の方に顔を向けると、エルネスの翼のメンバーがこちらに向かって来るのが見える。

 (ちっ、まだまだ試したい事があったのに)


 俺は魔剣の炎を解き、黒穴も消し、最後に身隠しをゆっくりと解除した。

 「おぉっ、そこだったか。何をしてるんだっ!?」

 「二人で魔法の鍛錬だ。闇魔法は独特だからな、余り他人に知られたくなくてな。」

 「おおぉ、それは悪い事したな。あからさまに魔力が感じられたからな。」


 「それは、何か問題でも?」

 「問題?そこまではならないが、砦に何か細工をしてるとか、何か仕掛けをしていないとか。隠れて魔力を発動していれば疑われても仕方がないだろ?」

 「そうだったのか。それは申し訳ない。俺達はただ、時間を無駄にすることなく鍛錬をしたかっただけで、それを人目に付かない様にと考えただけだった。」


 「そう言われればそう聞こえなくも無いが、お前が言う闇魔法の訓練とは違い、他の属性が大きく感じられた。嘘を言っているのは明らかだ。」

 「そうか、それが原因なら仕方ない。俺は闇属性以外の魔法の訓練を行ったからな。」

 「んん?」


 「しかし、俺が闇属性以外の属性の訓練をしたと認識出来たのであれば、お前にはやはり魔法の素質があるのでは?」

 「い、いや、俺は、ブリューに言われて・・・」

 「あ、でも、」

 とブリュー


 「そうか、そのブリューに魔力探知させたのは、俺が違和感を感じてからか。」

 俺の言葉に自分で納得したかの様にギデルが言葉を続ける。

 「俺に魔力の適正があるかどうか、お前には判るのか?」


 俺は悩む。ハーデンの魔力適正を見付けられたのは偶然だ。あの時と同じ状況でもそれを見出せるかは未知の領域だ。

 「俺はただ偶然その境遇の者に、魔法適性を見付けられただけで、ギルドに報告出来る程、確立した方法を得ている訳では無いんだ。」


 と、その時突然ギルマスの声がする。

 「聞こえたぞ。ギデルにひゅうごよ。ギルド報告事項を勝手に聞き出そうとしたり勝手に話したりしてはならぬ。」

 いつの間にかギルマスが近くまで来ていた。


 「いや、違うんだ、これは。俺が魔法訓練を隠れて行っていたら、それをギデル達に怪しまれ、説明をしていた所だ。」

 「そうだ。その説明の延長上にギルド報告事項の話になっただけだ。」

 「ギデルよ。そのまま方法が聞けたら聞こうとしておっただろ?」


 「はははっ、まさか。ギルマスよ。」

 「ほら、こんな時だけギルマス呼びするなど、そのままだと言うておるではないか。」

 そうか、ギデルは何か誤魔化そうとしたりすると言葉が変わるのか。

 知った所で何の役にもたちそうにないが。


 「ギルマスよ。提案なんだが。」

 「なんだ、ひゅうご。」


 「ここでギデルに魔力感知と魔法の初期訓練を教える事で、ギルドへの報告にしたいと思う。」

 「なんだと、それでは、」

 「待ってくれギルマス。何もギデルを特別扱いして欲しいという事では無く、ギデルの昨日の働きへの報酬の一部としたらどうだろうか。と相談したいんだ。」


 「ゴブリン討伐作戦の報酬の一部か。何故その様に思ったんだ?」

 「俺がこの砦防衛戦に合流した際、ギデルの働きが群を抜いて際立っていて、とても助かったんだ。俺個人からも礼をしたいと思ったんだ。」


 「そうか、その様に個別に礼を伝えたい程だったと。」

 「そうだ。それに出来るならここでギルドへの報告とテストを兼ねたいと思っている。」

 「報告は解るが、テストとは?」


 「あぁ、ハーデンに効いた方法が、他の者に通用するかが定かでは無いんだ。」

 「そうなのか。」

 「あぁ、見せる事でギルドへの報告とし、上手くいけばギデルの適性を見付けられるといった具合だ。だから何の確証も無いからテストなんだ。」


 少しの間考えたギルマスが、

 「そういうことなら、ここでやってみると良い。」

 と言った。


 「良かった。そこでもう一つ条件なのだが、これを見せるのはギルマスと当人であるギデルだけにして、残りの翼のメンバーは後ろを向いていて貰えないか。」

 「な、何でそんな事を。」

 「いや、駄目だろ。」


 「悪いが、報告は仕方がないにせよ、まだ誰にも知られたくは無いんだ。これは外せない条件だ。」

 「皆、この場から外された訳じゃ無いし、ギルマスも見てる。納得してくれ。」

 「ギデルがそう言うのなら。」


 「良し、これで条件は揃ったな。初めてくれ。」

 俺は指で先程の砦の窪みを差し、皆から影になる所へ案内する。

 ギデルとギルマスはそれに無言で了承し着いて来る。


 その窪みに着くとまた、認識阻害の闇影を生成する。

 「これで多少の音も消せる。二人共聞いてくれ、今回のテスト兼報告に翼のメンバーを外した理由は、魔力適正の有無を行うのはマインが行える魔法があるからなんだ。」

 「ほほぅ。」

 「マインの行える魔法とは?」


 「あぁ、マインには、他人に更に他人から魔力を奪う魔法が仕えるんだ。」

 「他の者に、他の者から魔力を奪うだと?」

 「そうだ。この事を知られるとマインの身柄が心配でな。二人だけに秘密にして貰いたい。そしてこれに関して報酬がある場合も、俺を通すことでマインの事を伏せて欲しい。」


 「そういうことなら儂は了解だ。」

 「俺は誰にも話す事は無い。」

 「それなら安心した。早速始めるぞ。」

 「うむ。」

 「おお。」


 俺はマインに目配せをするとギデルに説明する。

 「この後ギデルにマインからMPドレインを掛けて貰う。すると他人から魔力を奪えるようになる。その状態でこの剣を使って俺が作る闇影の盾を攻撃して欲しい。」

 「その剣を使う理由は?」


 「あぁ、この剣はレソルザット男爵がヴィルテス様に作らせた魔剣。魔力を籠めるのも、魔力を奪うにも力が働きます。」

 「そうか、魔剣か。」

 「はい。」


 ギデルの大剣を使われたら、俺の影盾が保つか心配っていうのもあるが。

 俺はハーデンの大剣をギデルに渡す。すると、

 「おぉっ!これが魔剣か?子供用の大剣にこの様な特性を持たせるとは。」


 ギデルが嬉しそうにハーデンの大剣を振り回しているのを見て、

 「何か気になる所があるのか?」

 と、尋ねる。すると、

 「あぁ、もっと若い時にこの剣があればな、と思っただけだ。とても扱いやすい。今の俺ではただただ物足りないとしか言えないがな。」


 「流石に一番の大剣使いだな。もっただけでこの剣の特性を感じ取れるなんてな。」

 「魔剣の部分は解らんがな。この大剣を使える様になった子供は、手足が伸びて体が成長したら、苦も無く大剣使いとなるだろうな。」

 「そうなんだ。レソルザット男爵と鍛冶師がその様な狙いで作ったんだ。」


 「面白い作り手だな。どこの鍛冶屋だ?」

 「ギデルよ。お前には専属がおるだろうが。」

 「いや、1、2本別の者に作らせたからって、文句は言わせないぞ。」

 「そりゃあ言えんだろうがな。」


 専属って、王家の専属鍛冶師とか居るんだろうな。

 「この剣を鍛えたのはエルネスの北にある鍛冶屋のガイスっていう鍛冶師だ。」

 「ほほぉ、それなら一度顔を除いてみるか。」

 「俺は今日の開門が終わったら向かう所だ。一緒に行くか?」

 「おぉ、それじゃあ一緒に向かうぞ。」

 「分かった。」


 「おい、それより早く始めるのだ。そろそろ2の鐘になるぞ。」

 「確かにな。分かった。」

 「わかったよ。」


 「それでこれからどうするんだ?」

 「先程言ったように、マイン。掛けてやってくれ。」

 「・・・・・・MPドレイン!」

 「ほぉおお。」


 「なんだ、ギデル。もう何か感じるか?」

 「まだ何も感じない。」

 「だろうな。」


 「それじゃあギルマスとマインは少し離れててくれ。ギデル、俺の作る影の盾にそれで攻撃してくれ。」

 俺はギルマスとマインが離れたのを確認すると、

 「いいぞ!ギデル!来いっ!」


 「はぁぁぁっ!」

 「ガシャンッ!!」

 物凄く重たい一撃が俺の影盾を喰らい、影盾の半分近くが消滅する。

 「ここまでとは!」


 俺は更に魔力を高め、影盾を先程より強く高め、次の攻撃に備える。

 「とうっ!」

 「ガガガガガッッシャーーンッ!!!」


 先程の攻撃で俺の影盾が半分近く消されたのに、次の攻撃を先程と比べ物にならない程の攻撃にするとは。

 「おいおいおいおいっ、俺の魔力が持たないだろっ!そこまでする必要あるのかっ!?」

 「剣が違うといっても、そう軽々防がれるんだ、この位は出さないとなっ!」


 強化した影盾があっけなくほぼ全損したのを慌てて魔力を注いで直す。しかし、今のギデルの言葉から、先程のモノでは耐えられないと判断し、最高強度の影盾を即座に5枚生成する。


 「ガガガガッ!ガガガガッ!ガガガガガッ!ガガガガガッ!!!」

 「ほぉぅ、これも止めるか。」

 何を感心しているんだっ!?


 「待て待て待て待て! お前主旨を忘れてないかっ!? これまでの攻撃で、何か変化を感じてないか? もしあれば、それが俺から奪った魔力だ。その魔力の流れを感じて欲しいんだ!」

 もう一度更に上回る攻撃を考えていそうなギデルが一瞬立ち止まる。

 「ん? 魔力を感じたか? だと?」


 「そうだ。どこからか湧いて来る力とか、湧き出て来た力の塊とか、なんか集まってくるエナジーとか、その様な感覚は無いか?」

 「ほう、それなら先程から随分と感じてるぞ。その力を使ってお前の盾を一撃で無くせないか試してるだろ?」


 あぁ、解った。ギデルは自然と体内の魔力を身体強化に使ってしまっているんだ。と。

 「なぁ、ギデル。お前が今感じているその力、恐らく魔力だから、その魔力を、火、水、土、風に変換されないか想像してみてくれ。」

 「んぁあっ? 魔力だと? 変換って?なんだ??」


 更に解った。ギデルは脳筋なのだ。想像力が乏しいのだ。魔力適正があったにも係わらず、想像力の乏しさから、魔力を具現化させるような魔法との相性が最悪に悪かったんだ。と。


 「なぁギデル。お前は先程の俺達の訓練に魔法探知が働いた可能性がある事から、先程の火属性の適正がある可能性が高い。」

 「そうなのか?」

 「あぁ、かなり不確定な情報ではあるが、こと魔法に関しては、適正が有る。可能性が高い。と、そう思い込むことで発動しやすくなるんだ。」


 「思い込む?」

 「いいや、言い方が悪かった。ギデル。お前には火属性の魔法適性が考えられる。」

 「おぉ。」

 「それでお前にはこれを作って貰いたい。」


 俺はハーデンが魔法訓練に使う黒穴を作り、ギデルに見せる。

 「お前にはこの中にある、ファイアーボールを作ってこの中に放ってみて欲しいんだ。出来るか?」

 「あぁ、やってみる。いや、やってやろうぞ。」


 ギデルはまるで自身の力を試す様に、目を閉じて思い耽ってみたり、目を開け、黒穴の中のファイアーボールを見ながら想像したりを繰り返している。

 俺はやり方が間違ってたかなと心配しながら、ギデルの行動を見落とす事ない様注視する。


 何度もギデルが目を閉じて集中したり、目を開け黒穴の中を覗いて集中したりを繰り返したのを見続けていた所、突然「スンッ」と冷静になり、勝ち誇った様な笑みを浮かべ、黒穴に右手をかざす。


 「ファイアーボール!」

 ギデルがそう唱えると、ファイアーボールでは無く、火炎放射器の様な炎が黒穴に向けて放射される。

 「ええええっ!?」


 俺が慌てて声が漏れると、少ししてギデルの放つ炎が「プツッ」と止まり、その場で倒れる。

 何故かギデルが倒れた瞬間、少し離れていて、向こうを見ていた筈の翼のメンバーが、慌ててギデルの介抱に走り寄ってくる。


 皆、何かしらの方法で、視界や、聴覚では無い方法でこちらを探っていたという事だろう。

 しかし、俺の身隠しの中の出来事にこれ程瞬時に反応出来るとは、俺には想像出来ない、何かまだ知らない力があるのであろう。


 「ギデルっ! どうしたの? 何があったのですかっ?」

 「おいっギデル! 目を覚ませ! 何があった!?」

 「ギデルに何をしたのですか!? 許しませんよっ!」


 俺は3人の勢いに押されて言葉が出てこないのを、ゆっくり落ち着かせて言葉を発する。

 「恐らく初めての魔力欠乏による意識喪失だ。魔力を与えれば直ぐにでも目覚める。」

 「ま、魔力喪失?」

 「ま、魔力だと!?」

 「直ぐに目覚めるとは?」


 「少し離れててくれ、魔力を与えて意識を取り戻す。「魔力譲渡!」」

 俺はマインの方が魔力譲渡の効率は高いけど、マインの存在を隠すため、自身で行った。


 「どうだ?」

 ブリューとヘレンに抱えられたギデルが目を覚ます。

 「ギデルっ」

 「ギデル様っ}


 「お前達! 俺は火の属性を得られたぞ! 魔法適性は俺にもあったのだ! これで王都に凱旋だ!」

 「はっ、おうせのままにっ! ギデリユンハルト様!」

 「これまでの試練が報われますね、ギデリユンハルト様。」

 「信じておりました。ギデリユンハルト様。」


 何が何やら戸惑っている俺に、ギデルが感極まった顔で近づいてくる。

 「お前のお陰で、諦めかけていた野望に何とか届いた!これからは忙しくなるぞっ!」

 そう言いながらギデルがその両腕を俺の両肩に、がっしりと掴みながら言った。


 俺が呆然としている中、ギルマスが静かに俺を諭す様に言う。

 「お前はこの国の未来展望をひっくり返す事を行ったのだ。」

 「えぇっ?」

 「この後自身で噛み知れば良いっ!」


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