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第二十二章

 話を聞いていくと、頭が痛くなる。

 あのジゼルはジーゼルシュタック・シュツルタウトと言い、侯爵家の次期党首とのこと。


 みつかいさんモードでジゼルが上級貴族だとまでは判明してたけど、まさかその父親がこの国の現騎士団長で、祖父が前騎士団長でその前騎士団長が引退して道場を領都で開いており、ヴィルテス様がそこに通っていたとは。


 それなら一層、みつかいさんモードで分かったギデルが王族というのも、このまま詳細に辿り着きたい気もあったが、男爵家の話ではそこまで辿り着けなかった。


 俺が会話の中に、冒険者の中に高貴なお貴族様が数々いらっしゃるのですね、と振ってはみたが、誰もがこの言葉に反応することなく、落ち着いた様子。


 ここにいる全員がその話題を広げないようにしているかのよう。


 ギルマスが話題を変える。

 「レソルザット男爵様は伯爵に戻られる頼みの綱が、ひゅうごによって保たれましたな。」

 「全くです。家長として辺境伯に戻れたなら、私個人はひゅうご殿の為ならば何でもすると言ったのは、嘘偽りない想いからのことです。」


 「え?陞爵の可能性っていう話ではなかったのですか?」

 と、俺の問いに答えたのはギデル。」


 「男爵は、元は領都の北東にある領地の辺境伯だったんだ。」

 「それで陞爵ではなく戻ると。」


 「あぁ、男爵はその辺境伯の時には、先代と共にとても領民に慕われていてな、その手腕たるは噂がこの領地に留まることない程にな。」

 「へぇ、それはとても良い事じゃないか。」


 「あぁ、逆にそれがこの国の上級貴族共の鼻についたんだろう。」

 「と、いうのは?」


 「レソルザットの先代と現当主は武功という功を殆どあげてこなかったんだ。そこにつけ入られたんだ。」

 何故かそう言うギデルの表情は、何処か悲しげで、どこか申し訳なさそうな顔をしている。


 そこで疑問に思った俺が、

 「そこにヴィルテス様が複数属性の魔法剣士というのと陞爵との繋がりは?」

 「あぁ、それはな、貶爵されて数年たった頃、そこの領民から不満が上がってきてな、その領土の上役の何人ものが、命を懸けて上申してきたのだ。レソルザット男爵にお治め願いたい。と。」


 「えっ?そこまで?」

 「あぁ、そのことに国王が心を痛め、何か陞爵の糸筋はないかと模索させたところ、その息子に複数属性の魔法剣士の才能が開眼したと。」

 「ほぉ。」


 「それで何とか周りの上級貴族に、その息子の功績を作らせて納得させようと算段してたところ、今回の事件だ。」

 「それは、今回の事件と貶爵には何らかの繋がりが?・・・いやいやいや、俺はお貴族様や領主様、国王様などには絶対に関わりたくないから、ひっそりとしようと決めてたんだ。」


 「あ、あぁ、それだがひゅうごよ。最初にお前に会った際、お前の要望で国王や領主に関わりたくないとのことで、お前を保護し、俺の中で留めると言うたが。」

 「あぁ、そうだったな。」


 「ま、まぁなんだ、実はこの街で冒険者になった時点で、国王にも領主にも話は通じているのだ。」

 「まぁなんとなく、感じてはいました。ギデルを通して国王とは。そして領主とは?」


 「はぁ、わかっておったなら仕方がないが、ギデルの方はあぁいった性格故、国王様まで伝わっているのか、伝わっていたとしてもまだ直ぐにはどうこうする必要はないと思うが。」

 「とすると?」


 「あぁ、領主様に連なる者が、たまたまここ数日この街を空けていただけで、お戻りになられれば確実にお前さんに興味を持たれるであろう。」

 「あ、あぁ、ではその者、いや、その方はいつ頃こちらに戻られるのでしょうか。」

 「恐らく明日か明後日あたりだな。だが早ければ本日の午後にもあり得る。あの者ならばな。」


 「心の準備が間に合いませんね。」

 「ははははっ。それは致し方ない。」


 こちらは笑えない。

 「せめてもの心構えとして、その領主に連なる方というのはどういった方で?」


 「ま、まあ、名前だけでも、そ奴は冒険者としてはそこのギデルと同じA級冒険者で、たった一人でBランクパーティーのリーダーを務める、セイラという冒険者。」

 「へぇ。」


 「実際はここの領主の娘であり、本名はもっと長ったらしい名前を持っておる。」

 「ここまででも大層な名前が多かったので、今聞いても流石に覚えられんぞ。」


 「だろうな。しかしセイラは変わったことにはことさら首を突っ込む者であってな、直ぐにでもひゅうごに絡むと思うぞ。」

 「まぁ、それが聞けただけでもありがたいと思う様にするよ。」


 「あぁ、そうだ。セイラは領都とこの街を自由に行き来できるので、確か今日の予定であるはずの会議はもう終わってるころだから、いつ現れてもおかしくないぞ。」

 「いつ現れてもって、どういう意味・・・」


 と、話している最中、背後から


 「そうか!其方がひゅうごとやらか!?」

 と、突然甲高い女性の声と共に、前の世界ではお人形としか思えぬ様な容姿、髪は豪奢な金髪で、か細い腰に届く程に長くさらさらとまっすぐなストレートで、肌は白く、目がエメラルドグリーンの様に澄んで綺麗な瞳、耳が細く長く反り上がってることで、俺の知るエルフだと認識する。


 驚いて応える。

 「は、はい。俺がひゅうごです。」


 「なんじゃ、その挨拶は。其方は童に次ぐ者と聞いておるが。」

 「なっ、そ、それは。」

 驚き、急いで止めようとするギルマス。


 「わかっておる。皆までは言わん。じゃからギルドで詳しく話そうぞ。ほら、行くぞ。」

 「えっ、あっ、あのっ、セイラさんはエルフなんですか?」


 「あぁそうじゃ、それがなんじゃ?」

 「お、俺、初めてエルフの方と会ったので。」


 「はぁ!?お主はこの街にきて人間にもダークエルフにも初めて会ったばかりじゃろうが。」

 「あ、え?  あぁ、そうかも・・・」

 「おい!それ以上ここで話をするな!要望通りギルドへ行くぞ!」

 とギルマス


 しかし初対面のはずなのに何故ここまで自分の事を知っているのだろう。

 その不安の顔をギルマスに向けると。

 「こ奴はこの街の至る所から情報を集める能力があるのだ。儂にもそれがどこまでおよぶのかは知り得ぬ。」


 「えぇっと、では俺の事をある程度お知りなのとしてお話をすれば?」

 「だーかーらーっ、ここで話を続けるな!ギルドへ行くぞ。」

 そう言って無理矢理俺とセイラを連れて移動をはかるギルマス。


 「男爵様、私達はこれにてお暇します。」

 「後の事はギデルとジゼルに任せて良いか。」

 とギルマス。


 「あぁ、任せな。行って良いぞハルド。」

 とギデル。

 「だから、この場ではギルマスと呼べ。」

 「いつもいつもそう言ってるのに・・・」

 最後の言葉は独り言になってるギルマス。


 三人でギルドに向かい、ギルド長の執務室。

 執務机の前に置かれた応接テーブルの向かい合うソファに、ギルマスに向かい合う様に反対側のソファに俺とセイラが並んで座った。

 ギルマスが机の引き出しからゴルフボール位の石に様な物を取り出し、自分が一つ持ち残り二つを私たちの前に置く。」


 それをセイラは何の了承もなく一つを受け取り、握る。

 「ひゅうごよ、これは盗聴防止の魔術具だ。それを握れ。」

 (おおおおぉっ!魔術具!そんなものまでこの世界にはあるのか。興味がある)


 「それで、どうやってひゅうごがお前に次ぐ者と知った?」

 「それを聞いて童が答えるとでも?」

 「俺があなたに次ぐとはどういう意味ですか?」


 「それはな、ひゅうごよお主、賢者じゃそうじゃな。」

 「そ、そうらしいです。」


 「闇属性の賢者とは祖父からも聞いたことがない故、恐らく建国初の闇属性賢者の誕生ぞ。」

 「はぁ、それが儂も気にしてたとこだったんだぞ。特に領主ご一家に知られまいと。それでセイラは報告するのか。」


 「そんな訳が無かろう。こんな面白いネタ、簡単に教えてやる義理なぞない。せっかくハルドが隠してたんじゃ、これからも全力で隠し通そうぞ。存分に楽しむまでは絶対じゃ。」

 隠してくれるのは助かる。が、最後の言葉が引っ掛かる。


 「それでひゅうごよ。お主加護も持っておるな。」

 「ど、どうしてそれを?」

 「これはなんとなくじゃ。じゃが解るのじゃ。」

 「そうなんですね。」


 「お主に加護を与えた神はなんて神じゃ?」

 「えと、それは神様ではなく、神様の御使い様のような方からです。」

 「ふむ、そうか、ならその御使いが仕える神の名はなんという神じゃ?」

 「それも名前までは知らないのですが、全知全能の神、とか、創造神と呼ばれる神だそうです。」


 「全知全能の創造神じゃと!創造神の御使いじゃと!それならば眷属神よりも高貴か。いや、眷属神のことやもしれるな。」

 「そんな偉い方だったんですね。」

 「あぁ、そうじゃな。ひゅうごよ、後ほど神々のことを教えてやる故、どの眷属神、若しくはどういった御使いか調べていこうぞ。」

 「それはお願い致します。」


 「突然現れ、バルカの迷子で、高貴な神からの加護、お主、転生者か?」

 「ど、どうしてそれを? た、確かに俺は別の世界で死んで、そこで御使い様に生き返らせて貰い、更には若くして貰い、加護を付けてこの世界に送って頂いたんだ。」

 「なんだってひゅうご!お前はバルカの迷子でなくて、転生者だったのか!?」

 「あぁ、悪い、そこまで言うと不審がられると思って。」


 「ま、まぁ賢明な判断だな。」

 「しかも転生者ではなくて、転移・・者?」

 「いや、ひゅうごは一度死に、生き返らせて若くして、恐らく成長の加護もあるとなると、限りなく転生と思って良いじゃろう。」

 「そ、そうなんですね。」


 「ところでひゅうごよ、その生き返らせて貰った際に、その御使いとやらには会わなかったのか?」

 「会いました、でも時間が無かったみたいで、大事な説明だけで直ぐにこの世界に飛ばされたので、お名前を聞くことも出来なかったんです。」


 「そうか、しかもお主の言い分からじゃと、お告げがあった訳では無さそうじゃの。してどうやって創造神の御使いとまでは判明できたのじゃ?」

 「えーっと、私がお聞きする事に、合ってるか間違ってるかだけは教えて頂けるのです。」


 「ほぉ、それは珍しい、というかそもそも転生自体も神からの加護も珍しいのじゃけれども、お告げも無く質問に合否のみの回答を与えるとは、生き返りに成長促進から生命の神やと思ったんじゃがな。そんな回りくどいことをするとも思えぬ。」

 「そ、その神様はなんという名ですか?」


 「生命を司るガイアモライじゃ。」

 「そ、その方です。ガイアモライ様で合ってます。」

 「なんじゃと、ではどうして神の御使いなどと言うたのじゃ。」

 「んーっと、ガイアモライ様にとって神様とは創造神様だけで、御自身は神の御使いの様な者だ。とのことです。」


 「なんじゃとっ! 今お告げがあったのか?」

 「いえ、これは先程説明した、ガイアモライ様が合否でお教え下さったのです。」

 「なんじゃとっっ!今しがた聞いておるのか?まさかいつでも聞けるのか!?」

 「あ、、、はい。こ、これは大変貴重なことなんですよね。ここだけの秘密にして貰えますか。」


 「それは勿論じゃ。しかしここまで神の寵愛を受けているとはな。いったいお主は前世で何を成してきたのじゃ?」

 「な、何って?」

 「ここまでの寵愛振りじゃ、さぞかし神に認められることを成し得たのじゃろ?再高貴な聖職者となって大往生でもしたのじゃろう?」


 「えーっと、」

 そう言葉にしながらも、全く思い当たることがない。

 「えーっと確か、猫を助けた事だけかと。」

 「ねことは何じゃ?神の下部か?それも神にとって大事な特別な下部か?」


 「いや、猫は人間にとっては愛玩動物として飼われるのですが、俺が助けた猫は野良猫と言って、人間からはぐれたか、逃げたか、捨てられたか、それらのものとの子かどれかです。決して神の使いや下部では無いです。」

 「なんじゃと?ではそのねこというのやら自身が神の仮の姿だったとかか?」

 「はい、そういう事だったそうです。」

 「それでその神の仮の姿のものを助けたことで、そこまでの優遇を頂けたというのじゃな。」


 「んーーっと、それだけでなく、んーー、その様な神様の姿とは掛け離れているにも関わらず、俺が毎日の様に神に祈る様に感謝の念を祈ってたことが大きかったようです。」

 「お主はその様なものに、毎日祈っておったのか?」

 「祈るという程では無かったですが、私の毎日の中で、あの仮の姿の猫には大変癒されており、会うたびに感謝していたのは本当のことです。」


 「ん、何やら仮の姿でいるものに祈ることは、神の威厳を発している姿に祈ることより、数倍から数十倍の祈りの効果があるそうです。」

 「あぁっ、祈りの効果が数倍から数十倍じゃとっ!?」

 「そんなに凄い事なんです?」


 「これで合点した。前世で通常の数倍から数十倍の祈りを捧げ、今世でははっきりと認識している神、その時は御使いじゃが、その姿を明確に毎日祈っておったのじゃ、それも加護を持った状態で。それでこの短期間に中級聖法まで使えたことに納得したわ。」

 「そ、その中級聖法とは?」


 「お主が使ったハイヒールもピュアポイズンも、中級聖法に属するものじゃ。一度も聖法を使ったことが無い者が初めて使ったのが中級のハイヒールと聞いて、不思議に思っておったのじゃが納得したぞ。」

 「そ、そうなんですね。」


 「しかしじゃ、ひゅうごよ。聖法はその取扱いが難しい故、先人より使い方を知りたいじゃろ?」

 「それは勿論。」

 「じゃろ? それじゃあお主はすぐここでA級冒険者になって、童とAランクパーティーを組もうぞ。」


 「えぇぇっ! た、確かA級だと国王か領主に了承とかあるのでは?」

 「領主じゃ。 それは童が承認取っておくから安心して良いぞ。」

 「い、いや、今、俺、パーティー組んでて・・・」


 「あの汚い小娘のことじゃな。あれは数回一緒になっただけじゃろうて、正式に組んではなかろう?」

 「き、汚い?マインのことか? それと正式に?」


 「マイン? マインか、そうか、マインじゃと。くっくっくっ あの小娘、長く地下に篭っておったのが突如表に顔を出したと思うたが、もう男をたぶらかすとは。」

 「な、なあ、マインの事を悪く言う奴と、俺は組む気はないぞ。」


 「まぁ待つのじゃ、そう早まるな。あ奴とはお主には知り得ぬ程、永く深い因縁があるのじゃ。」

 「そうなのですか。」


 「それと、正式にというのは、お主は小娘やあの小僧とは正式なパーティーは組めん。」

 「マインやハーデンとパーティーを組めない?」

 「なんじゃ?ハルドよ説明せなんだのか?」


 「あぁ、悪いひゅうご、お前が現れてからバタバタの連日でな、細かい事を説明してなかったわ。」

 細かいどころか、大事な事何一つ、といった感があるがな。


 「それで、その正式にはパーティーが組めないとは?」

 「あぁ、それはな、正式にパーティーというのは、ギルドにパーティー登録をする、ということだ。」


 「パーティー登録?」

 「あぁ、それはギルドにパーティー登録することで、パーティーでしか受けられない依頼であったり、指名依頼が入ったりとするのだ。」


 前世の個人事業主から株式会社を設立して信用を得るみたいなもんか。

 「それだけか?」


 「いや、それとそのパーティー登録にはいくつか条件があってな、細かい所はまた職員に聞いて欲しいが、基本的には二つ、一つは3ランク以上離れた者とでは登録出来ない事と、同じランクの者同士のパーティーならそのランクのパーティーとなるが、一つ下のランクの冒険者や二つ下の冒険者が入ればパーティーのランクが下がる。」

 「ふむふむ。」


 「当然パーティーランクが下がれば受けられる依頼も下がるし、指名依頼も下がる。といった具合だ。そのパーティーのランク付けの条件はまた職員から聞いてくれ。」

 「A級冒険者の童が一人パーティーなのにパーティーはBランクという具合じゃ。」

 「そうか良く分かった。今の俺ではマインやハーデンとはパーティー登録は出来ないということか。全く余計なことをしてくれたな、ギルマス。」

 

 軽くギルマスを睨む

 「い、いや、もともとFランクだけではパーティー登録は出来んし、マインはゴブリン討伐作戦の参加でE級昇格は確定しておるし、ハーデンもギルド指定の依頼をあと一つ受ければ昇級するはずだ。」

 「ちっ、余計なことを。」


 「それはどういうことだ?」

 「あぁ、ギルドは昇級条件に滞りやすい依頼の引き受け・達成を入れている。そのランクや依頼内容によって達成回数に上下はあるがな。そこでハーデンは今まで稼ぎの良い討伐依頼しか受けたことが無いようでな。」

 「ありそうだな。」


 「あぁ、ハーデンもゴブリン討伐作戦では後方支援で奔走してくれてたので、あと一つ軽い指定依頼を受ければ昇級出来る。」

 「それは確実なのか。」

 「あぁ、ギルド指定依頼はEランク昇級には2つと決まっておる。一つとしては先日の討伐戦の後方支援は最大のものだからな、後はどんな軽いものでも昇級は確実というものだ。」

 「そうか、それでギルド指定依頼とはどんなものがあるんだ?」


 「それはな、お手伝い系といったら分かり易いか。家の掃除や下水の清掃や隣町へ荷車を一緒に押すというのもあるな。あくまでこれらはFランクの指定依頼な、Cランクとなると露店商の一日護衛とかが良く見られるな。そういった感じだ。」


 「良く分かった。感謝する。それで、もし俺がマイン達とパーティー登録をしたとしたら、セイラとは依頼を受ける事は出来なくなるのか?」

 「いや、個人で手伝うとかをギルドが監視や拒否することはない、しかも臨時パーティー登録をすることでパーティー依頼も受けられる。」


 「そうか、それならその方向でいこうと思う。」

 「なんじゃ、童とは登録して貰えんのかの。」

 「いや、あなたにも色々教わったし興味もある、困ったことがあれば手伝うし、二人を最速でCランクまで育て、皆でパーティー登録しても良いとあなたに思われることを目標とします。」


 「童が小娘と、それは無い。と確実に言えるが、ひゅうごが言うのであればもしかしてそんな未来があるのかもな。想像も出来んがな。」

 「そうですか、そう言って貰えて光栄です。」


 「なんと、光栄じゃと、それならば先程は正式な挨拶も無かったな。」

 そう言うとセイラはその場で立ち上がり、俺の方を向いて一歩後ろに下がり、その姿勢から両手を腰の前で結び、シュッと両の踵をカチッと鳴らしてビシッと直立したかと思ったら、そこから左足を後ろにスゥっと引き、まるでそこにスカートがあるかの様に両手でそのスカートを摘んで少し裾を引き上げ、軽くお辞儀をする。


 カーテシーだ。本物のカーテシーを初めて見た。

 その驚きと共に慌ててその場で俺も立ち上がり、気を付け、の姿勢で続きを待つ。


 セイラはその姿勢から頭をゆっくりと上げ、

 「私はエルネストラド領、領主レスティノーラ・ケデル・エルネストラドの娘、A級冒険者でBランクパーティー、エルネストラドの光のパーティーリーダを務める、ルッセイラティ・アドル・エルネストラドと申します。以後良しなに。」


 俺はその精錬された動作・仕草に神々しさを感じ、体中から熱を帯びてくるのを感じる。

 きっと顔は真っ赤になってる筈。

 そんな緊張を押し殺してなんとか口を開く。


 「お、俺はひゅうご・うちひら、異世界から転生し、この世界では87日のC級冒険者です。」

 「ほほぉう。」

 あたかも俺が跪かなかったことへの驚きと興味と関心を含めたような言葉だ。


 「やはり家名持ちじゃったか。転生者故この世界での身分が曖昧じゃろうが、この街、いや領土、ギデルも認めておるようじゃったから、この国においては中級か上級貴族の立場とし、その様に振舞うと良い。」


 「あ、はい、ではそのうに。」


 と丁度そこにギルマスへ何かの合図があった様で、ギルマスが扉の方を見る。

 「ギデル達が戻って来たようだ。ちょっと指示を出してくるから二人共そのまま待っててくれ。」

 そう言ってギルマスが席を外す。

 だが外からの音は全く聞こえなかったが。何かギルマスの魔道具だけ特殊なのだろう。


 「丁度良い、ひゅうごよ、お近付きの礼に先程の質問に答えてやろう。」

 「先程の質問?」


 「あぁ、どうやって童が遠方の話を聞いておったのか。」

 「えっ、それを教えて貰えるのですか?」


 「詳細までは教えられん。詳細どころか私の行っている方法もじゃ。お主には遠方の音声を聞く方法を教えてやる。」

 「そうなんですね。ありがとうございます。」


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