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魔法使いの俺、日本に転生  作者: アウストラロピテクノロジー
12/13

会食とこれから

 今日は久しぶりに小林さんと食事をする。

 小林さんは父さんの親友で俺が東京で生活できるように色々とお世話をしてくれた恩人だ。なのでちょっと緊張する。

 待ち合わせの場所に時間より少し早く来て待っていると小林さんがやってきた。


「やぁ創介君!」


「こんにちは小林さん」


「携帯で連絡は取っていたけど会うのは久しぶりだねえ。元気にしていたかい?」


「はい。おかげさまでなんとか」


「そうかそうか。じゃあ早速お店に行こっか。今日は美味しい肉を食うぞ〜」


 そういうと小林さんは嬉しそうに歩き始めた。

 ついた場所は高級そうな焼肉店だ。個室に案内されて小林さんは高い肉をバンバン頼む。


「遠慮せずに食べてね。僕お金持ちだからさ!」


「はい。ありがとうございます」


「それより東京の生活には慣れたかい?」


「まあまあ慣れましたけど、まだ馴染めそうにはないです」


「まあ今までど田舎で育ってきたんだからすぐ馴染めるはずなんてないよねえ」


小林さんはハハハハと笑う。


「ずっと気になっていたんですが小林さんてどんな仕事をしてるんですか?」


「僕の仕事かい?僕は自営業でね。売れそうなものを輸入したりして日本で売ってるんだ。あとは株とか投資を少々ってところかな」


「ずっとその仕事を?」


「今の仕事をする前はサラリーマンをしていたよ。でも上司や会社の考えと自分の考えが合わなくなってきてね。独立したってわけさ」


「考えが合わないとは?」


「若い君にはちょっとヘビーな話になるけど、その会社はいわゆるブラック企業ってやつでさ、給料はそこそこよかったんだけど社員を奴隷か家畜のように扱ってたんだ。それで僕に良くしてくれていた先輩が仕事を抱えすぎちゃって自殺しちゃったんだ」


「自殺ですか・・・」


「そうそう。しかも今で言うと過労死扱いになるんだけど、会社があの手この手で揉み消しちゃってね。当時の上司とか人事部にも抗議してみたんだけど相手にされなくってさ。呆れて辞めて自営業を始めたんだよ」


「なるほど・・・。生きるために働くのに、働いた結果自ら死んでしまうなんて、なんだか虚しいですね・・・」


「本当にそうだよねえ。でもこの国では年間に約2万人も自殺してるんだってさ。死ぬ理由は人それぞれあるかもしれないけど、自ら命を絶つほど追い込まれる人がそんなにいることが悲しいし、それを見て見ぬふりをしている社会も悲しいよね」


「俺も東京でしばらく過ごしてみて感じたんですが、自殺する人がいる理由はなんとなくわかる気がします。多くの人が自分の利益を最優先していて、冷たい感じがしました」


「そうだねえ。僕もそのうちの1人だけど、やっぱりみんなお金に縛られているような気がするよ」


「お金ですか・・・」


「うん。今、この時代で一般的な生活をするには必ずお金が必要になるでしょ?衣食住を満たすのにだってお金が必要だし、スマホを維持するのだってお金がかかる。地方に行けば交通機関が少ないから車を買わなくちゃいけないし、車を持てば維持費もかかる。今の時代お金がないと普通の生活ができないから、みんなお金に縛られてしまっているんじゃないかと思うんだ」


「でもお金がなくなって困った人のために生活保護っていう制度があるんじゃないですか?」


「もちろんそうなんだけど、生活保護を貰っている人が一般の人の生活をしているかっていうとそうじゃないと思うんだよね。お金は支給されて暮らせるけど、その人が生活保護ってわかると、自分でお金も稼げない人間っていう目で見る人が多いと思うんだ。だから生活保護を貰えば生きてはいけるけど、自分で働いて稼いでる人との付き合い方が難しくなっちゃったりするよね」


「難しい問題ですね。自分が一生懸命働いて生活費を稼いでいる一方で、何もしないでお金を貰っている人がいたら確かに良い印象はないです」


「そこがやっぱりお金に縛られてしまっているからなんじゃないかって思うんだよね」


「なるほど・・・」


「まあまあ。暗くて難しい話はここまでにしてさ、何か楽しい話をしようよ!東京に来て何か楽しいことはなかったのかい?友達ができたとかさ」


「うーん。友達というわけではないんですが、ひょんなことから一緒にご飯を食べることになった女性はいました」


「なんだって!?男友達を作るより先に女性と親しくなるなんて君は一体どんな手を使ったんだ!」


 その女性とは勿論如月真琴さんのことである。小林さんは少し興奮気味に食いついてきた。


「まあ簡単にいうと痴漢から助けたと言いますか・・・」


「痴漢から助けた!?昭和じゃないんだし今時そんなこと・・・・・。羨ましい・・・」


「う、羨ましいだなんて、そんな何もないですよ」


「女性と食事をしている時点で羨ましいに決まっているじゃないか!くぅ〜〜〜」


 小林さんは今までのしんみりした雰囲気はどこへ行ったのか、悔し涙を流しながらビールを一気に飲み干して鋭い表情で質問をしてきた。


「それで、その女性とはどこまでいったんだい・・・?」


「い、いや、本当に食事をしただけなんですが・・・」


「本当に?」


「はい。ちょっと酔っ払ってしまって家に泊めて貰っちゃいましたけど・・・」


「いいいい、家に泊まったぁ!?しかも酔っ払って!?」


「はい。まぁ・・・」


 話してしまってから気がついたが俺は生い立ちが特殊と言えども未成年だった。これは怒られても仕方ないだろう。


「なんて羨ましいんだ!全然食事とかのレベルじゃないじゃないか!も、もちろん手は出したんだろう?」


 小林さんは鼻息を荒くしてさらに興奮しながら話を聞いてくる。


「いえいえ、手なんて出しませんよ。そこまで親しくもなってないのに」


「なんてこった・・・」


 小林さんは俺の発言にひどくショックを受けたようでしばらく固まってしまった。

 小林さんが固まっている間にお肉を焼いて食べていると、落ち着きを取り戻したようで会話が再開する。


「い、今の若い子はなかなか奥手なんだね。おじさんの時代だったらすぐに手を出していたところだよ!いやぁ時代だなあ。ハハハハ・・・。いや、ごめん、僕はヘタレだからそもそも家にすらいけないや・・・だから独身なんだ・・・」


 小林さんは1人で盛り上がって1人で落ち込んでしまった。この人も色々悩みがあるらしい。

 そんなこんなで小林さんとの食事会を楽しんだ後、次は高級寿司屋に行こうだなんて話をしながら解散した。



 家に帰った俺はこれからの計画を考える。


「タバコ違反狩りにポイ捨て狩りの次は何をしようかな〜。もう少し大きいことがしたいな」


 今日の小林さんの話を聞いてやってみたいことが一つあった。


「よし決めた!ブラック企業を見つけて狩ろう」


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